原子力安全の文化と情報公開 Flying Zebra さんのつぶやき

世間には、原子力村は安全神話を盲信していたからダメなんだとか、東電は昔もいろいろ隠しごとしてたから今も全く信用ならんてなかんじの意見をよく目にするよね。 でも、原子力を推進してきた人だって、東電だって、オレたちと同じ人間で、自分がやりそうなのと同等の欠点もあるだろうけど、同じように善意も理想もあって、向上のための努力もしてきたはず。彼らを、過度に愚かだとか邪悪だと決めつけるのは、まあちょっと溜飲を下げる効果はあるのかも知れないけど、日本のこれからをきちんと考えていく上では、あんまり適切じゃないと思うんだなあ。 というわけで、Flying Zebra さんのしごく真っ当なつぶやきをまとめました。
17
Flying Zebra @f_zebra

原子力分野でも、現代の技術は過去の手痛い失敗からの教訓の積み重ねです。どう頑張っても(他のあらゆる技術同様)一定の不確実性は残りますが、不確実性をmanage(controlではなく)する手段は進歩しています。1960年代から何も変わっていないなんてことはありません。

2012-02-16 12:26:50
Flying Zebra @f_zebra

ただ、原子力の安全性については技術的には進歩している一方、安全に対する文化のようなものはアメリカと比べると見劣りするのも事実です。ヨーロッパは日本と似たような文化だと思います。一番の違いは、リスクをどう捉えるかというところです。

2012-02-16 12:27:15
Flying Zebra @f_zebra

これは事業者の問題だけではなく、規制側あるいは社会がリスクをどう捉えているかの問題です。アメリカでは徹底したリスク分析によってリスクを管理(manage)し、社会がそれを受容しているのに対し、日本や欧州ではリスクと対峙することを避ける傾向があります。

2012-02-16 12:27:51
Flying Zebra @f_zebra

リスクは否応なく身の回りに存在するものですが、その現実から目を逸らし続けた結果がゼロリスク幻想であり、原子力の安全神話なのだと思います。電力会社の経営者がどう考えているのかは知りませんが、原子力の安全に携わる技術者であればリスクがゼロではあり得ないことは必ず認識しています。

2012-02-16 12:28:23
Flying Zebra @f_zebra

規制側にしても、日頃から「この機器が壊れたら安全性にどんな影響があるか、事故の際にどれだけの機器、系統が使えてどれくらいで収束できるのか」といった観点で検査、監督しているので、リスクについては熟知しているはずです。

2012-02-16 12:28:54
Flying Zebra @f_zebra

ところが、地元の議会や住民への説明ではリスクの具体的な話は嫌われます。議会や住民が嫌がるという面と、それが分かっているので電力や規制官庁も二の足を踏む面の両方があり、誰かが一方的に悪いというものではなく、社会全体としてリスクと真面目に向き合う姿勢が醸成されていないのです。

2012-02-16 12:30:09
Flying Zebra @f_zebra

リスクの大小は直感的な実感とは一致しないことが多く、ある程度努力して考えないとなかなか理解できないものです。そしてリスクの「程度」を正しく評価しないまま行動を起こすと、結果的にリスクを高めてしまうことがあるのはこれまでも色んな人が繰り返し警告している通りです。

2012-02-16 12:30:29
Flying Zebra @f_zebra

原子力安全の「文化」に触れたついでに、情報開示についての「文化」についても触れておきましょう。特に原子力分野においては、過去に組織ぐるみでデータ改竄や隠蔽を行っていた事件があり、その反省から様々な改善が試みられてきました。

2012-02-16 12:51:00
Flying Zebra @f_zebra

10年前のいわゆる「東電問題」は電力やプラントメーカーのみならず、日本の産業全体に大きな影響を与えました。コンプライアンスに関する企業向けの研修等では現在も好んで取り上げられるテーマとなっています。

2012-02-16 12:51:23
Flying Zebra @f_zebra

産業分野によって温度差はありますが、どの業界でもコンプライアンスの重要性が増しているのは共通で、何らかの対策が講じられています。基本的な思想として、企業や業界の自浄作用に期待する性善説ではなく、性悪説に基づいて隠蔽を許さない対策です。

2012-02-16 12:52:04
Flying Zebra @f_zebra

つまり、何かトラブルが発生した際、それを正直に公表することで発生し得るコストに対し、隠蔽することで発生するコストの期待値が遙かに高くなるような仕組みが工夫されてきました。具体的には、隠蔽を難しくする、つまりどこかで必ずバレるような仕組みです。

2012-02-16 12:52:38
Flying Zebra @f_zebra

原子力については、現場のトラブルが上層部の判断を待たずに通報される仕組みが構築され、直接安全に影響しないような事象もまずは通報されるようになりました。また、内部告発についても告発者が不利益を被ることなく告発しやすいよう(未だ不十分ながら)工夫されてきました。

2012-02-16 12:53:06
Flying Zebra @f_zebra

原子力施設のトラブル情報についてはニューシアhttp://t.co/ObAUG7Ohで一般にも公表されています。どんなレベルの情報がどんなタイミングで公開され、どんな対策が取られたか分かりますので、興味があればぜひ一度眺めてみることをお勧めします。

2012-02-16 12:53:55
Flying Zebra @f_zebra

現在、電力会社による隠蔽や記録改竄があり得ないかといえばもちろん可能性はゼロではありませんが、東電問題以前に比べて隠蔽することのリスクが格段に上がっているのは間違いありません。福島第一の事故に対しても、東電の「まずは公表」という態度は徹底しています。

2012-02-16 12:56:03
Flying Zebra @f_zebra

普通の人には理解できないデータをただ公開するだけでは意味がないのですが、その意味をわかりやすく解説して伝えるというのは大きな課題です。マスコミ理解していないし、専門家は信用されていないし…

2012-02-16 12:56:45