第5話 「 金の鍵と、心に咲く花？ 」

光野 水栄（Yukue_Hikarino） @Hika_Rarala

自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の1】　朝がきた。「きのうは、何も起きませんでしたね」と、ささのみことは言いました。小鳥は、「そうですね」とだけ言うと、ペコリと飛び去りました。ささのみことは手を振り、早朝の空を眺めていましたが、 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の2】　窓のさんから未咲の机へジャンプ。日めくりカレンダーをひっぱりました‥が、小さな手なので上手くちぎれません。ぺり‥「どうしたのー？」眠そうな顔の未咲が起きてきて、ベリッ。無事、今日になりました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の3】　2007年1月19日。「花金ですね」「はなきん？」「だいたい金曜日は、たのしそうな感じがしませんか？」「なんか‥たしかに♪」未咲は、自分まで機嫌がよくなって、着がえて窓の外を見ました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の4】　すると、ほうきとちりとりを持った人が、家へ駆け込むのが見えました。「だれだろ？」階段へ見に行ってみると、パパでした。「おかえりー」「ただいま。最近、早起きだね♪」未咲は、部屋にもどりました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の5】　そして、マンガを読みながら、ふたたび窓の外を見ました。「あれ？ 着物の女の人？」「そうみたいですね」未咲は、ピンクのダッフル・コートを着て、見に行きました。ささのみことは、肩に座りました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の6】　その女の人は、後ろ姿でした。その人は、淡水色（うすみずいろ）の着物の上に桃色の無地の道行（みちゆき）を着て、ふんわりした ゆるめのシニヨンの髪に、べっ甲のかんざしをさりげなく挿していました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の7】　そこへ、10人ほどの人がやってきました。皆、1人か2人で歩いてきては、その女の人と挨拶を交わし、会社や朝のアルバイトに向かうのでした。「どうしましたか？」ささのみことが、キョトンと尋ねます。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の8】　「えっと、なんか‥見覚えが？」未咲が答えているうちに、最後の1人が向こうの角を曲がりました。「あれ？」（この感じ。あの後ろ姿。どっかで見たような？）その声に女の人がふり返り、こちらを向きました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の9】　「な～んだ、ママか」着物の女の人は、未咲のママでした。「あら未咲？ 7時まで寝なくて大丈夫なの？」「それより、柄杓（ひしゃく）持って、何してんの？」「打ち水よ」「うちみず？？」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の10】　「なんで？」ママは、思い出しながら答えました。「パパと結婚する前から‥習慣だったから」未咲は、好奇心の瞳で尋ねます。「『京都の老舗から嫁いだ』から？」「そうねぇ。埼玉では、珍しいのかしらね」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の11】　心地よい風が、過ぎてゆきました。おっとりしつつ遅くないママの受け答えには、周囲を和ませる力があるようでした。未咲は、急に思い出して言いました。「朝ごはん、まだだ！」「作っておいたわ」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の12】　ささのみことは、まだ未咲の肩の上に腰かけていました。3人が食卓に着くと、パパも座りました。「いただきます♪」4人は同時に言ってから、同時に食べ始めました。「あなたも一緒に食事をするのですか？」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の13】　声の主は、水色の小鳥でした。ささのみことは、温和な笑みで言いました。「ああ、今朝の小鳥さんですね。大丈夫ですよ。わたくしは霞を食べているだけですので」「かすみとは？」「どうぞ、さしあげます♪」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の14】　「不思議な味ですね。ごちそうさまでした。では、出勤いたします！」水色の小鳥は、くちばしをハンカチで拭いてキリリとそう言うと、窓ガラスを透りぬけ、木の枝に降り立ち、さっそく虫を捕まえました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の15】　やがて、朝ごはんを食べ終えると、未咲は、スポーツ・バッグを肩に掛け、玄関に立って言いました。「きょう花金でしょ？ どうして、いい日なのか分かった！ いってきま～す♪」「いってらっしゃ～い」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の16】　パパとママは不思議そうな顔で手を振りましたが、未咲は、あまり細かいことには気がつかないタチでした。ささのみことが言いました。「余計なことを行って、すみません。未成年でしたね」 未咲は、小走りに #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の17】　横断歩道を渡り、言いました。「金曜日は、たのしい日だって言ったでしょ♪」「はい。何の日でしたか？」「ドラえもんの日ー！！」まだ寒い空は、だんだん晴れてきました。（訂正は、しないでおきましょう） #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の18】　「もう学校だ！ あれれ～？」マンガのように首をかしげる、未咲。確かに、あと2分ほどで着きそうな感じです。「歩くのが早くなったのでは？」ささのみことの声は、冷静さよりも、ぬくもりに満ちています。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の19】　「6:55 ですね」ささのみことは、時計の時刻を読み上げました。―それは、チェーンの一部が破損した、真鍮（しんちゅう）の懐中時計でした。未咲が、ふと右手を見ますと、見覚えのある喫茶店のドア。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の20】　「よ！」と肩に手が置かれ、未咲はバッとふり返りました。「なんだ、大ちゃんか～。びっくりした」「ゴメンな」「ま、いっか♪」未咲は、ささのみことを肩に乗せたまま、大助と喫茶店に入ってゆきました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の21】　カラ～ン‥ベルの音。「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ」未咲は、着席しかけた瞬間、「きゃ//」ドキン。頬がピンクになりました。「秋本くん！ どうして、ここにっ！？」「お友達？」「はい」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の22】　「今知ったのか？ あれ？」先に着席した大助は、腕組みしています。――秋本くんの説明を聞いて、なるほど、という表情になった上司は、小走りにレジへ行き、スーツの人がお金を払って出て行きました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の23】　それから、7:15に喫茶店を出るまでの間、ゆったりとした時間が流れました。未咲はカフェ・オ・レを、大助は炭火コーヒーを飲みました。‥やがて、未咲は、正門の前で言いました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の24】　「大ちゃん、ごめん！ お財布わすれちゃって」「いいって。コーヒーおいしかったしな。それより、毎週金曜‥朝、さっきの喫茶でバイトしてるの、知らなかったのか？」未咲は、てきぱきとメモを取りました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第5話の25】　（未咲ちゃんが、自ら進んでメモを取るなんて、幼稚園以来ではないでしょうか？）ささのみことは、目頭が熱くなりかけましたが、こらえました。大助も、少し驚いた表情ですが、未咲は気づきませんでした。 #HQ_hikarino_youko