四の舟×おろし丸によるスケッチブックリレー小説 青い鳥~温泉編~

青くんと鳥飼さんの温泉旅行。少しだけ大胆なシーンがありますが、18禁ではございませんのでご安心を。
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焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 月を隠すように薄い雲が空にかかっている。雪こそ降っていないが夜にもなるとさすがに冷えて仕方がない。だけど今の僕は寒さを感じてなんかいなかった。というのも僕は今、温泉――それも露天風呂に浸かっているのだ。

2012-02-21 22:02:15
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko いま、僕は鳥飼さんと温泉旅行に来ている。たいして大きな温泉でもないためか、この宿屋に来ているお客さんは僕らくらいしかいないようだ。だからこうして、露天風呂を一人で優雅に使っている。

2012-02-21 22:05:54
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 普段、こうして脚を伸ばしてお風呂に入る事もないので何となくうれしい気分になる。それに薄い雲がかかっているとはいえ今夜は満月だ。まるで神秘的な雰囲気が漂う中、僕は温泉を満喫していた。

2012-02-21 22:08:38
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko まったりとした気分でいると、少し離れたところに人の気配がする。僕と鳥飼さんくらいしかお客がいないはずだが、誰なのだろう。立ち上がると寒いので、湯の中に浸かったまま移動してみる。「どなたですか?」 尋ねてみると、人影がびくっと動いた気がした。「青くん?」

2012-02-21 22:13:50
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 一体これはどういう事だろう。確かこの温泉はちゃんと男湯と女湯に分かれていたし、ちゃんと僕と鳥飼さんは別の方に入って行った――そう、そのはずだったのに。なんで僕の目の前に鳥飼さんがいるんだろうか。

2012-02-21 22:16:21
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「えっ…鳥飼さんですか?」 人影に尋ねると、少し僕に近付いくるのがわかる。「そうだよ。でも、なんで青くんが露天風呂にいるの…?」 恐る恐る、といった具合の鳥飼さんの声が聞こえてくる。「きっと、男湯と女湯の露天はつながっているんじゃないんでしょうか…?」

2012-02-21 22:22:45
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「えっと……うん、多分、そうなんだろう、ね……」なんて変わった構造なんだろう。と、溜息を吐くより早く僕はある事に気づいてしまった。ここは温泉で、僕は今文字通り一糸まとわぬ姿でいるわけで――まずい、これはさすがにまずい。

2012-02-21 22:25:50
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「と、とりあえず、ぼくは少し離れますよ…」 「そ、そうだね…」 少しだけ、僕と鳥飼さんは距離を置いて湯船に浸かる。僕からは、湯気の中に肩から上の鳥飼さんのシルエットがうすぼんやりと浮かんで見える。ああ、すぐそこに、鳥飼さんが裸で座っているんだ…。

2012-02-21 22:29:32
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE いや、これは本当にまずい。嬉しいけれどもまずい。だって僕はまだ中学一年生で鳥飼さんは高校一年生。まだ付き合って一年もたっていないのにこんな事になるなんて。本当はすぐに上がりたいところだけど、こんな時に限って意地悪な冷たい風が吹く。

2012-02-21 22:34:24
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko これほど寒くては上がるに上がれない。仕方がない、少しだけ温まってから出ることにしよう。そう決め込んで座っていると、鳥飼さんとおしゃべりする気が起きた。「あの、鳥飼さん」 「は、はいっ!?」 どうやら、鳥飼さんも状況に戸惑っているようだ。声に緊張を感じる。

2012-02-21 22:39:29
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE その緊張が、僕に伝わって僕自身の緊張となる。それなら話しかけなければよかったかもしれない。でももう踏み出したからには戻る事なんかできない。必死で言葉を紡ぎ出し、差しさわりのない言葉を選ぶ。ふと空を見上げると、雲が離れていた。「……月、綺麗ですね。」

2012-02-21 22:42:50
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「そうだね…」 「…ありがとうございます。鳥飼さん」 「えっ。なにが?」 「温泉へ行こうって、誘ってくれたことです。こういう風に、誰かと旅行に行くことなんて、考えた事もなかったので…」 「そうだよね…」 「なんで、旅行に行こうって誘ってくれたんですか?」

2012-02-21 22:48:16
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「え、えっと、ね……」僕以上に緊張しているのだろうか、言葉がなかなか来ない。「…一緒に、いたかったから……なんて理由じゃ、だめだった?」

2012-02-21 22:51:12
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「…」 「ダメ、かな…? 私と青くんって、できることも限られているから、二人っきりでいるのって、神社とか、櫓のところとかだけだったから…。どこかでご飯を食べるって言っても、コンビニとかハンバーガー屋だったから、こうして二人っきりでのんびりしたかったの…」

2012-02-21 22:54:49
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 鳥飼さんは、そこまで僕の事を考えてくれていたのか。心までもが温かくなっていくような感覚を僕は覚えていた。「…ありがとうございます、鳥飼さん。」「ううん、いいの…」「…鳥飼さん。」僕は、ありったけの勇気を振り絞ると口を開いた。「そっち、向いても良いですか」

2012-02-21 22:58:12
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「…いいよ。でも…」 「でも、なんですか…?」 「私、あんまり発育がよくないから、少しだけ見られるのは恥ずかしいかな…」 「そんなこと」 関係ない。憧れている女性の体型に、不満などあるはずない。僕は勇気を出して、鳥飼さんの方を向いた。

2012-02-21 23:01:40
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 美しかった。丁度向いた瞬間に、月にかかっていた薄い雲が取り払われて穏やかな月光が鳥飼さんを映し出していた。頬を薄ピンク色に染めたその表情も、恥じらうその仕草も、何もかもが美しかった。僕はただしばし、言葉もなかった。

2012-02-21 23:05:04
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 鳥飼さんの髪の先から、湯の雫が滴り落ち、湯船に小さな円が広がっている。月光に照らされて光る白い肌。タオルで前を隠しながら恥じらう姿。タオルから少しだけ見える胸と、足が、とても美しく輝いていた。女性の体型がこんなに丸い形をしているなんて、知らなかった。

2012-02-21 23:10:45
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 彼女に、触れたい。彼女に、もっと近づきたい。そんな衝動が心の奥底からマグマのようにわき上がる。だがそれはまだしちゃいけない事なんだ。それでもマグマは冷める事を知らない。「……青君、大丈夫?」「え?」「なんだか、苦しそうだよ。」

2012-02-21 23:13:27
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko そう言って近付いてくる鳥飼さんの姿を見て、僕はますますどうしていいかわからなくなる。鳥飼さんの事が好きだ。それは恋愛感情から、容姿からすべてを含んでの好き、だ。ここで彼女の裸体に欲情しない方が、逆に失礼な気がするが……。僕は一体どうすればいいんだ!!

2012-02-21 23:16:48
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE と、その時僕の手を誰かがそっと握った。それは誰でもない、鳥飼さんだった。「鳥飼、さ」「青君。」僕が何かを言う前に、鳥飼さんは優しい声を僕にかけていた。「青君も男の子…なんだよね。ごめんね。辛かったよね?」「え、いや、その」

2012-02-21 23:19:18
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko ああ、やっぱり、僕はこの人の魅力に敵いそうにない…。それならと、僕はお願いをしてみることにした。「鳥飼さん…」 「なに?」 「その、非常に頼み辛いことなんですが、お願い聴いてもらってもいいですか?」 「…いいよ」 「うしろから、抱きしめたいんですが…」

2012-02-21 23:24:27
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…うん。」小さく、彼女は頷いた。そして恥じらうようにそっと後ろを向く。とその時、薄い雲がまた月を隠して辺りが薄暗くなった。「…鳥飼、さん。」 ああどうして こんなに女の人は柔らかいのだろう。

2012-02-21 23:28:03
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 僕の体の前面に、鳥飼さんの背が密着する。僕は前に腕を回し、彼女の体を包み込む。お湯に浸かり続け、ふやけた僕の指先に、鳥飼さんの柔らかくスベスベとした肌の感触が伝わってくる。目の前には艶かしくも月光に照らされたうなじ光る。

2012-02-21 23:32:29
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 温かい。泣きたくなるぐらいに、彼女は温かい。もっと強く抱きしめたい。本当は、真正面から抱きしめたい。でもそれをするべき時は今じゃないってことも僕は分かっていた。その距離がただ、ただもどかしかった。

2012-02-21 23:34:17