リブート、レイヴン #6
「イヤーッ!」「イヤーッ!」激しく交錯するビストルカラテ!いかなニンジャとて、49口径弾を喰らえばただでは済まない!ゆえにキヨシはガンドーの射撃タイミングを完全に読み、機先を制して手を弾く……キヨシにはそれができる。そしてこの狂人は、ガンドーとの力の差を楽しんでいるのだ! 25
2012-02-26 17:02:30惜しみなく射撃するガンドーに対し、スズキ・キヨシは一発も銃を撃っていない。ガンドーの射撃や反動カラテを弾くのみ。銃口を頭や首筋に押し付けて、いつでも殺せることをアッピールすると、またすぐに間合いを取ってガンドーを挑発するのだ。「畜生が……!」ガンドーは最後の一発を発射する! 26
2012-02-26 17:07:39ガンドーの怒りを乗せた49口径弾が、顔面めがけ迫る!だがガンスリンガーは両腕を真っ直ぐ伸ばすと、手首を内側に向けて倒し、49口径弾を両横から押し潰すように自らの38口径弾を早撃ちした!スゴスギル!3種類の螺旋回転がぶつかり合い空中消滅!「ウォーヒヒィー!」涎を垂らすキヨシ! 27
2012-02-26 17:17:01「マジかよ……?!」全弾を撃ちつくしたガンドーは、殆ど無意識のうちに排出動作を行う。Killin、Killinと金属質の音を立てて空薬莢が床に零れ落ちてゆくその2秒間に、スズキ・キヨシの黒いロングコートと蹴りが急接近し、視界いっぱいに広がった。そして、何も見えなくなった。 28
2012-02-26 17:24:26「ッ!ハァーッ!ハァーッ!」これで何度目だろう。ガンドーは再び悪夢から目覚めた。冷たい夜風が頬を撫でる。今回はベッドやフートンの上ですらない。彼はスマキにされ、クローンヤクザに支えられたまま、琵琶湖クルーズ船グランド・オモシロイ船尾の巨大電波トリイの端に立たされていたのだ! 30
2012-02-26 17:42:21「……おい、何だこりゃ?ブッダ、見てるか?」ガンドーは頭痛を堪えながら、何が起こっているのか把握しようとした。体はスマキで固く縛られ、身動きが取れない。横にはシキベ似の少女が同じく直立スマキ状態。真下は湖面。どこかで覚えのある状況……海賊カトゥーンでよく見る処刑シーンだ。 31
2012-02-26 17:51:57後方に頭突きすればクローンヤクザくらいは倒せるか、と考えた所で、ガンドーは自分の足に巻かれた鎖に気付く。隣の少女の足と繋がっているらしい。ナムサン!ガンドーが落下すれば、道連れというわけだ!「ヘェーヘェーヘェー……こっちだぜ、探偵=サン」拳銃とカメラを構えたキヨシが笑う。 32
2012-02-26 20:04:07「オイオイ、何をしようってんだ?」ガンドーが対話を試みる。それしか手段は残されていない「この娘は見逃してやってくれよ」「駄目だ」キヨシはビデオカメラの調整を行いながら、ガンドーを支えるクローンヤクザに自分の側に来るよう促した「その助手はお前のせいで死ぬ。俺は時間を巻き戻す」 33
2012-02-26 20:14:19ガンドーは歯噛みした。こいつはシリアスだ。「なあ、待てよ。俺が誰の依頼で動いてたか、知りたくねえのか?」本来なら、依頼人の事を明かすのはタブーだが、この際は仕方ねえ。何しろ、あの依頼人こそが、俺たちに一杯食わせたのかも知れねえんだからな……ガンドーにとって苦渋の選択だった。 34
2012-02-26 20:19:45「俺たちは両方ともハメられた可能性が……」ガンドーは、依頼人の正体について確証など持っていない。あくまでブラフだ。こういった狂人は、何かの弾みで、パチンとスイッチが入ることがある。あくまで、そのチャンスを引き出すための……足掻きだ。しかしキヨシはいとも容易くそれを看破した。 35
2012-02-26 20:29:31「ヘェーヘヘヘヘ、無駄話は付き合わないぞ。俺は知能指数が高いからな。依頼人は多分……俺の親父だよ」キヨシは涙を流し始めた「……俺を体よくダシにしてッ、会社を救いやがったッ!次期社長は従兄弟か誰かだろう!あのクソ親父がッ!」そして空に向かって数発発砲!笑いながら肩で息をする。 36
2012-02-26 20:35:51「待てよ、他にも可能性が」「黙れッ!もう時間だッ!」キヨシは銃を構えて威嚇する。そして興奮のあまり涎を垂らす。「……ヘェーヘェー、それじゃあ……練習した通り、やれッ!」「……ガンドー=サン、助けてェ……」少女が嗚咽と共に叫ぶ。「……!この外道ッ!」我を忘れ激昂するガンドー! 37
2012-02-26 20:45:41「ウォーヒヒィー!もっと大きな声でッ!名探偵タカギ・ガンドー=サンに!助けを求めろッ!」キヨシはファインダーを覗きながら、一人悦に入っていた「ドーモ!怪盗スズキキヨシです!コンバンワー!」「……コンバンワー……私の名前はシキベ・タカコです……ガンドー=サン、助けてェ……!」 38
2012-02-26 20:54:16ガンドーはスマキ状態も忘れ、叫び声をあげてスズキ・キヨシに突進してゆこうと試みる。BLAM!38口径が火を吹く!弾丸はガンドーの額に命中!白目を剥いて、ゆっくりと傾き、暗い湖面に落下してゆくガンドー!鎖に引きずられ、少女も琵琶湖に向かって落下する!キヨシの哄笑が遠ざかる! 39
2012-02-26 21:00:17私立探偵タカギ・ガンドーは悪夢を見ていた。冷たい水のフートンにかき抱かれ、静かに沈降しながら、リプル模様に歪むガイオンの月を見上げていた。冗談を飛ばす気にもならなかった。……オイオイ、ブッダ、こいつは笑えねえジョークだぜ。サムライ探偵サイゴなら、こんな時、なんて言うだろな? 41
2012-02-26 21:03:43海馬が痒い。闇と月光だけのモノクローム的世界。いけすかん場所だ、と彼は思った。色彩も、音楽も、暖かな灯もない。落ち着かぬ鴉のように、左右を見る。右上にスマキの人影。少女を助けないと。…だが横殴りのガウス的ノイズが視界に混じる。奥歯で白砂を噛んだような感触がガンドーを襲った。 42
2012-02-26 21:07:06俺は歓迎されているのか、その逆か?なあ、帰っていいか。今日はリキシ・リーグの中継日なんだぜ。…彼の体は沈降を続ける。冷たい水の底に向かって、ゆっくりと。ガンドーの網膜ディスプレイ内で、LEDミンチョ体の「REBOOT」がめいっぱいに映し出され、左右に揺れながら赤く明滅した。 43
2012-02-26 21:08:25「…ッ!ハァーッ!ハァーッ!」彼は使い古した医療用ベッドの上で悪夢から覚め、上半身を起こす。数年前に拾ってきたその武骨なパイプベッドは、クリーム色の塗装が所々剥がれ、錆びた鉄を晒している。微かな軋み。拍子抜けするほど穏やかなレトロテクノのレコード音が、事務所内に流れていた。 45
2012-02-26 21:12:36ガンドー探偵事務所には、まるでカラスの巣のように、ガラクタ同然のジャンク品が並んでいる。リキシの手形色紙。書類の上に乗ったワータヌキの置物。色褪せたカトゥーンのリーフ。古いUNIX基盤や筐体の山。2ヶ月前までは、事務所全体がそんな有様だった。今はエントロピーが減少している。 46
2012-02-26 21:15:55本棚の向こうに女の気配がする。オスモウTVの音も。助手のシキベ・タカコがいるのだろう。コーヒーを淹れる音と、バタートーストを焼く香ばしい臭い。ガンドーはズバリ切れの頭痛と格闘しながらベッドを下り、ワイシャツの一枚に袖を通すと、くたびれた濃紺スラックスをサスペンダーで吊った。 47
2012-02-26 21:18:40