2012年3月3日

「ムシカミサマ」と「オシラサマ」

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用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

さて、昨日のリクエストで色々ともらったのだが、ひな祭りと言うことでそれに関連した不思議な話をしていきたいと思う。

2012-03-02 22:23:28
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

ひな祭りといえば「子ども」だな。オレ達、つまり鬼の大好物な訳だが子ども達は様々なものに守られている。まずは今は岩手ではすっかり知る人のいない「ムシカミサマ」の話をしよう。

2012-03-02 22:25:41
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

この話は宮守から遠野にかけての旧家。昔に厩屋祈祷(マヤギトウ=民間の祈祷師)を行っていた家系のお婆さんから聞いた話だ。

2012-03-02 22:28:07
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

これも昭和の始めのお話だ。あるときに農家の五歳になる子どもが夜泣きするようになった。しかも飯椀を投げつけたり、ぶつぶつと呟いたり、意味不明に大声を張り上げるような奇行が続いた。家のものがその度に押さえつけたり、叱りつけるが全く効果がない。

2012-03-02 22:31:17
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

医者に見せても全く原因がわからずじまい。家の者は「これは憑きものに違いなし」と言う事で噂に聞いていた厩屋祈祷(マヤギトウ)の家の者に見てもらうべしとなった。しかし、親戚縁者は「マヤギトウなど怪しい者に見てもらうよりは神社に連れて行ったほうがよい」と進言するので、神社に連れて行った

2012-03-02 22:35:39
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

子どもを連れて神社の鳥居まで差し掛かると突然に子どもが「嫌じゃ、嫌じゃ」と泣き喚き、暴れ手がつけられなくなった。宮司方もこれでは子どもも怪我をしてしまうということで、神社行きは行わないことになった。

2012-03-02 22:38:31
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

それからも子どもの暴行は止まらない。ついには立ちながら笑って失禁などをするようになり、家の者はこれまでだと宮司に頼み込んだが、宮司は「マヤギトウの家の婆様に頼んだらどうか?」と丁寧に勧めてきた。その話もマヤギトウの家の婆様に話してあると言う

2012-03-02 22:42:29
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

家の者は藁にもすがりたい気持ちだったので、早速にマヤギトウの家に使いを走らせた。しかし、マヤギトウの婆様は「来るでなし。こちらから参ります」というあっさりとした返事を出した。そして夕刻過ぎにその婆様が家に訪ねてきた

2012-03-02 22:44:37
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

家の者は丁寧にマヤギトウの婆様を向かえた。腰の曲がった婆様はよそ行きの着物と小さな箱を携えてきた。家の者はあまりに普通の婆様なので、これは大丈夫か?といぶかしんでしまったそうだ

2012-03-02 22:46:56
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

家の者は早速に婆様に今までの経緯を話した。婆様はニコニコしながらウンウンと聞く。そして、家の者達は何とか出来ないかと婆様に懇願した。婆様は「あい、んではやっつけるべか」と笑顔で支度を始めた

2012-03-02 22:49:38
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

婆様は持ってきた着物をはおり、小箱の引き出しを開けていく。そして家の者に「一番北の陽の当たらねえ部屋さ子どもば連れでいぐんだ。そして母親と父親と子どもだけ入んなさい」と穏やかな口調で指示をした

2012-03-02 22:52:13
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

家の者は言われたとおりに子どもを連れて部屋に入る。その間も子どもはへらへらと笑い、ぶつぶつと何かを呟いている。そして部屋に婆様が入ってきた

2012-03-02 22:53:36
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

婆様は子どもの指と母親の指を赤い絹糸で結ぶように父親に指示した。そして静かに微笑みながら「焦らなくでもいいんだ。これは悪いムシが入り込んだがら、こったになってるんだ。子どもにはもともと疳の虫や泣き虫が住んどるが、それは七五三を過ぎれば消えるもの。でもこのムシは悪さが過ぎるなや」

2012-03-02 22:57:03
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

婆様は更に続ける「悪いムシが強すぎれば、抑えられんようになって馬鹿みたいに呟いたり、泣き出したりするもんだ。悪さが過ぎるムシは常世さ送りがえすのが一番なんだ」といって、独特の匂いのする香を焚き出し、手に持った鈴のようなものをチリン、チリンと鳴らし始めた

2012-03-02 23:00:34
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

母親も父親も始めてみるまじないに興味津々ながら婆様を凝視した。すると子どもが突然に歌い始めたのだ。驚いてとめようとする父親を婆様は諌めた「乱暴にしてはなんね。このムシは仲間のいるところさ歌って呼ばってるんだがら」父親は驚きながらも歌う我が子を見据えた。

2012-03-02 23:04:16
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

呟くように歌う子どもを尻目に婆様は持ってきた小箱から小さな桐の箱を取り出し、それを上まで持ち上げ一礼し開く。母親がそれを見てギョッとした。それは蚕の幼虫のミイラだった。しかし、普通の蚕の幼虫よりは二倍の大きさはあるだろうかと言うものだった。

2012-03-02 23:07:57
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

婆様が言う「驚がなくていいんだ。これはムシカミサマだ。でもオシラサマとは違うもんだ、ムシカミサマが迷ったムシ共さ常世への道を教えるんだ。黙ってみてればいいんだ」という。婆様は箱を子d者前において念仏のようなものを唱えだした。

2012-03-02 23:10:22
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

怪しい雰囲気に少し疑いを持った父親が婆様に言う「おい、婆様。こだなごとをいづまで続ける。何にも起らぬでねが」すると婆様は胸元で小箱を持ち、ゆるゆると回し始めた。父親は婆様が返事をしないので苛立った

2012-03-02 23:12:48
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

すると母親が父親に問いかけた「あんた、あれ・・あれはなんだべか」。父親が言われる方を見てギョッとした。ふらふらと呟いて歌う子どもの指の先から何かが出ているのだ。それはまるで糸ミミズの長いようなものであった。婆様は「騒ぐなよ、そら出てきたぞ。そら出ておいで」と念仏のように語る

2012-03-02 23:16:18
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

婆様が優しく語り掛ける「おめえさん、悪さしたな。でもカミサマは責めでねえ。安心しろな。ムシカミサマがおめば常世さ連れていぐから。そのまま出てこい」すると子どもの人差し指や中指からうねうねと三本のミミズのようなものが出てきたのだ。そして婆様が念仏を唱えて鈴をならす。

2012-03-02 23:19:33
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

そして婆様は白い半紙を子どもの指の先に差し出した。指から出たミミズのようなものはその半紙の上にぽとぽとと落ちてすぐに動きを止めた。婆様が深く一例をして言う「うん、これで終わりだ。もう泣き叫んだりはしねえべ」

2012-03-02 23:22:04
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

両親はキョトンとして子どもを見ると子どもは泣いた跡はあるがすやすやと寝ている。何が起きたかわからない両親を尻目において婆様はお茶も馳走も頂かず一礼して帰って言ったそうだ。

2012-03-02 23:23:43
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

その後、驚くほど子どもは普通に戻った。両親は改めて御礼を渡しに婆様の元を訪ねた。だが婆様は「本業じゃねえがら。親の見よう見まねだがら」といって一切、お礼を受け取らなかった。両親は深く感謝し、あれはなんだったのかと再度聞いた

2012-03-02 23:26:19
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

婆様が言う「おらいの家は昔からマヤギトウだったども、ああいうことはよぐあったんだ」と笑顔で語ってくれた。子どもに憑いたのはいわゆる「感情のムシ」であったが、子どもの体躯にあわず、出て行きたいと暴れだした。そこで常世から落ちてきた「ムシカミサマ」のお姿を見せた

2012-03-02 23:28:55
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

暴れたムシも成長前の子どもだから、ムシカミサマを母と思い。呼び寄せ、それに従って再び常世へと舞い戻ったというのだ。両親はなぜに退治しなかったのかとも聞いたが、婆様はそれをたしなめた

2012-03-02 23:31:18
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