第3回 novel10 「そんなの知ってたよ」
場面を切り取る小説遊び。 第3回目のお題は桜歌(@ouka0002)さん提供 「そんなの知ってたよ」 お題のセリフを必ず含む、10文(または10行)以内の小説に #novel10 をつけて投稿してください。ツイート数、文字数に制限はありません。期間は3日0:00〜23:59まで
2012-03-02 19:00:31やっぱり君は来てくれない。そんなの知ってたよ。だけど期待という奴は、なかなか僕の心から離れてくれないんだ。 時計塔の鐘が午後4時を告げた。 あと1時間だけ待たせて。それでも駄目なら今度こそ諦めるから。 会いたい。伝えたい言葉があるんだ。どうかここへ来て。 #novel10
2012-03-03 00:00:32もう限界だった。愛する人に嘘を吐き続けたくない。本当の俺を知ってもらいたい。…愛が消えても、偽り続けるよりは。纏った服を取り、着慣れた皮を脱いだ。「俺、本当は人間じゃないんだ」悲鳴か、罵声か。覚悟した俺に、彼女は優しく笑んだ。「そんなの知ってたよ」「だって、私も #novel10
2012-03-03 00:00:51「そんなの知ってたよ」と彼は答えた。別れ話を切り出したのは私の方なのに、諦めたようなその笑い方にぎゅっと胸が痛くなった。夕陽に染まった教室はほんのりと橙色で、彼の横顔も夕陽に染まっていた。絞り出した「ごめん」という謝罪の言葉は、何に対する謝罪だったのだろう。 #novel10
2012-03-03 00:13:49「先輩……好きです」「……すまん。実は、もう好きな人がいるんだ」「そんなの知ってます。でも……ほんのちょっとの可能性に、賭けてみたかったんです……」「本当に、ごめんな……」っていう会話を屋上にある貯水タンクの陰で聞いてしまったわけだが。ちなみにここ、男子校な。:#novel10
2012-03-03 00:22:04あなたは何も知らないのにね。小さくなる背中に呟いた。あなたの優しさはわたしの嫉妬を呼び起こして、また一歩、深みにはまる。そんなの知ってたよ。聞こえた声が心の中渦巻いて居座る。くすり笑みをこぼすわたしは、愚か者。ねえ、好きよ。 #novel10
2012-03-03 00:54:11諦められると思ったんだ。否、諦めるつもりだったんだ。あなたに大切な人ができたなら、この気持ちへ終止符を。だというのに、早すぎたんだ、なんて言い訳をして。溢れんばかりの気持ちも涙もおさまりはしない。そんなの知ってたよ。こんなにも、好きになってしまった。 #novel10
2012-03-03 23:28:03カミングアウト。この一言に、どれだけの勇気を要しただろうか。声が、足が震えて視点もあちらへこちらへと。なんて格好悪い。「そんなの知ってたよ」君の笑顔がまともに見れやしない。ああ本当に、格好悪い。―――君のプリンを、食べてしまったんだ。 #novel10
2012-03-03 23:34:37「好きなひとが、いるんだ」「…へぇ」いちばん聞きたくないはなし。「誰?」「…二組の、佐々木さん。笑顔が可愛いよね」そんな真っ赤な顔して、嬉しそうにしちゃって。「そんなの知ってるよ」「え」ずっと見てたんだもん。 #novel10
2012-03-03 00:56:26ショーウィンドー越しに見える世界は完璧だった。なぜ、あのひだまりの中に留まることができなかったのだろう。足りないものなど、何もなかったはずだ。沈黙に耐えきれず瞼を閉じた瞬間、僕を愛した女は言った。「そんなの知ってたよ」 #novel10
2012-03-03 01:14:42