一色登希彦版 漫画「日本沈没」連載時の回顧2。

小松左京さん原作、一色登希彦版の漫画「日本沈没」の電子書籍版全巻が3月2日にリリースされました。 ↓ http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/24774.html 2005年から『ビッグコミックスピリッツ』誌で連載した当時のことを回顧します。 ふたつ目のまとめは、単行本第1巻・第2巻発売〜映画版「日本沈没」公開の、2006年夏頃までの回顧です。 続きを読む
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一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】連載の序章を描き始め、載り始めた頃は、おそろしく不安だった。よせばいいのに安全な道を捨てて原作にも映画にも無い「平穏な大都会で、ビルが1棟だけ崩落して跡形も無く沈む」という突っ込み所丸出しの描き出しをでっち上げたので。でも自分としては奇をてらったつもりはなかった。

2012-03-07 14:24:19
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】小松左京さんの原作も「平和そうな日常」と「ふと主人公がみつけた駅地下の壁の何でもないひび割れ」の描写から始まる。今ならわかる。小松さんはその1文を書いたところから、「本当に日本が沈み切る」世界に没入してしまったのだと。自分もそうだった。

2012-03-07 14:31:09
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】序章のネームの出だしを決め切らず追い込まれて、夜の吉祥寺、井の頭公園を歩いた。公園の池にかかる橋から、街灯りが映る水面をみながらふと「今ここは平和だけれど、数キロ離れた新宿では1棟のビルが崩落を始めている。しかし目の前で見ている人さえその事実を受け入れない」…と妄想。

2012-03-07 15:03:21
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】たぶん数十分、井の頭公園の橋に佇んで水面を見つめながら、そのビジョンにひたって固まっていた。周囲から見たら要注意人物だったろうが、吉祥寺だからいいだろう。そのビジョンで行こうと思った。樋口監督たちを、驚かすか、怒らすか、笑わせる。そのハードルにこれで臨もうと思った。

2012-03-07 15:14:07
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】ところで独自展開の不安と同時に、原稿制作の楽しさはあった。こうした「物が壊れる」シーン http://t.co/3wiC6xxN http://t.co/PYq5wmYG は作画仕上げをスタッフに任すのだけれど、思い通りの「動き」を出してもらうよう伝えるのが難しい。

2012-03-07 15:26:23
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一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】「破片」の形や向きの置き方で、静止画でも動きの出方が違う。口では伝え難い。「もののけ姫」のメイキングで宮崎駿さんが「動き」の原画修正をして行くシーンを思い出す。キャラ以外の「見た事無い物」「物が動いているシーン」は1枚のアニメ原画を描くつもりで下描きを描いて指定した。

2012-03-07 15:37:53
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】そういう「なりきり作業」は勝手に楽しかった。アニメスタジオで総監督になったつもりで制作していた。コミスタで液タブで作画まで…みたいな作り方は、まだ数年早すぎてお手本もなく、自分たちで手法を開発してノウハウの共有をして…という模索にずいぶんと手間がかかった時だった。

2012-03-07 15:51:53
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】デジタルデータで原稿を納品…というのもまだ珍しがられた。記憶ではスピリッツがデジタル入稿を始めたばかり。その直前のヤングサンデー連載時はわざわざデジタルデータをプリントアウトして紙の原稿として納品するよう求められていた。隔世の感があります。

2012-03-07 16:06:20
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】スタッフに関しては「等しく同じ能力」を身に付けてもらう事は、早い段階でやめにした。教えるのが上手い、綺麗な線を引く、目に止まる線を引く、ネットに強い。作画が速い、作画が丁寧…もう個々の持ち味を発揮してもらい、適材適所と考えた。

2012-03-07 16:26:52
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】漫画の制作現場はスタッフ3人程までだと「個対個」だけど4人以上になると「総監督とスタジオ」…のようになるというのが、個人的意見。その中で、スタッフへの方針だった「自分のネームを月に2本以上描いて見せる事」など課していたのだから楽で楽しいばかりではなかったろう。すまぬ。

2012-03-07 16:34:21
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】息を止めるように描き上げた、序章にあたる「地下の竜巻」5話分。その先は決めていなかった。序章の出来次第でその後は自ずと決まるだろうと。小野寺、玲子、結城、田所博士ら主要人物はしっかりと動いてくれた。そこから先は庵野秀明さん言う所の「ダメージコントロール」だ。つまり…

2012-03-07 16:51:25
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】ダメージコントロール。「アニメのTVシリーズは、始まってしまえば毎週の締め切りのスケジュールとの戦いで、質が落ちるばかり。質の低下を最大限に抑えて、泥舟に乗って向こう岸にたどり着けるかどうか。」…というようなことを庵野秀明さんがインタビューで語っていたと記憶する。

2012-03-07 17:43:28
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】に関しては、自覚的にその方法(泥舟航法)をとった。前作「ダービージョッキー」に関しては作品の進展と作者(わたくし)の進展の二人三脚だった。「沈没」は、その瞬間持てる武器を全弾発射し続け、物語を描き終われれば佳し、無事でいれたら更に佳し、という方法でしか描けなかった。

2012-03-07 17:53:43
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】「泥舟航法」は井の頭公園に佇みながら「新宿のビル崩落」を想像してしまった時から始まった。小松左京さんの原作の精神に付き従ったつもり。自分の想像の中では日本が崩壊し始めてしまった。日本を沈み切らせて、そして描き終えた物語を提示しきるしか無いのだと思った。←キチガイである

2012-03-07 18:09:49
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】新宿などに、資料写真を撮りにロケハンに出た。視点はすでに、「この街に地震を起こせばどのように壊滅するか?」「今この山手線のホームで震度7に見舞われたら?」「このビルを倒すとどのように崩れるか…」←もはやテロリストの実行前下見である

2012-03-07 18:15:31
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】そうした「テロリスト目線」で改めて東京を見た時にその無防備さと無邪気さと茫漠っぷりに慄然とするばかりだった。もうとにかく物語の中でこの国を揺らしきって沈めきったろと思った。お話でやり尽すから現実には起こらないでね・・・と、 自分にとっての祈祷だったんです。

2012-03-07 18:24:15
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】序章以降は、これもなかなか信じてもらえないけど自分としてはとても忠実に原作のエッセンスを再提示して描き込んでいきました。連載開始の2006年夏までの半年はそれを淡々と行おうと決めていた。つまり樋口監督の映画の公開と小松さんの「日本沈没 第二部」の発売を待った。

2012-03-07 18:33:57

2006年夏、映画の公開を前に、ようやく単行本の第1巻と第2巻が発売になる・・・その時!!!アレが!!!

一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】「映画」と「第二部」の内容を受けて、後出しジャンケン最後発になる一色版「沈没」の方向を定めようと思っていた。樋口版映画公開が06年7月15日。第二部の発売が7月7日。…に備え、拙版は第1巻第2巻がその直前6月30日に発売。ところが!…「コミック発売日一覧」など見ると…

2012-03-07 18:44:32
一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本沈没】「コミック発売日一覧」の06年6月30日を見ると、拙版「日本沈没」第1巻と第2巻の同時発売に並んで、同じ日に発売される漫画単行本に、似たようなしかし違うような名前のタイトルがある・・・。おい・・・ちょっと待て何だこれ・・・??!!

2012-03-07 18:49:38

↓これが!!!

一色登希彦 @ishikitokihiko

【日本ふるさと沈没】 http://t.co/AmGc9ile ちょw・・・おまw・・・徳間書・・・w!!同時発売て・・・!!!

2012-03-07 18:54:41
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↓これ

一色登希彦 @ishikitokihiko

しかも新本が今も配本されているという… RT @tyoshiza: これは酷い。しかし興味がある。くそう、マーケティングに嵌められている! RT @俺 【日本ふるさと沈没】 http://t.co/AmGc9ile ちょw・・・おまw・・・徳間書・・・w!!同時発売て・・・!!!

2012-03-07 18:59:17
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