第一書房『セルパン』昭和12年7月号を鑑賞する

“伝説の出版社”第一書房が発行していた総合(文化的・教養的)雑誌『セルパン』をご紹介、と思いつつ、ついつい昔の広告を楽しんだ記録です。
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かなり久々に、『実用 本の辞典』(植原路郎、出版ニュース社、1964年)より。「【キャッチ・ワード】(キャッチ・フレーズ)〔例〕「タバコはけむり、知識は残る、バット買おうか、セルパンか(つづく)

2012-03-17 15:55:15
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(つづき)これはゴールデンバット(両切煙草)が10銭の時代に、第一書房(社主長谷川巳之吉)が出したPR誌を兼ねた教養雑誌「セルパン」が10銭であったときの惹句。」この第一書房と長谷川巳之吉については、日本エディタースクール出版部より『第一書房 長谷川巳之吉』という本が(つづく)

2012-03-17 15:55:30
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(つづき)出ておりましたが、残念ながら品切れ。ですが一応宣伝までに、「大正12年から昭和19年まで、独特の美装本で精力的にヨーロッパ文化を紹介し、全国の知識人層を魅了した第一書房の歴史と、社主・長谷川巳之吉の生涯。伝記、回想、遺文、目録、年譜、口絵・カラー8ページ。」(つづく)

2012-03-17 15:55:48
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(つづき)で、実は只今手元に「セルパン」が1冊あります。昭和12年7月号。恐る恐る広げて見ておりますが、いろいろ面白い... いくつか大きなテーマが掲げてあり、それぞれにいろいろな角度からの関連記事・文章を集めている、というのがひとつの編集方針のようです。(つづく)

2012-03-17 15:56:00
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(つづき)(当時の編集担当・春山行夫の文章による。『第一書房 長谷川巳之吉』より) 例えばこの号では「スペイン」というくくりで、当時内戦のまっただ中であったスペインについて、アアネスト・ヘミングウェイ「伊軍敗戰の現地報告」(ルポルタージュ)、(つづく)

2012-03-17 15:56:12
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(つづき)『ニュー・リパブリック』紙「英國はスペインに何を求めるか」(論考)、マックス・プローマン「靑年よスペインに行くな」(思想家・作家の意見表明)、ベン・リイダア「スペインからの最後の手紙」(内乱で死亡した義勇兵の、家族・友人に宛てた手紙)などの記事が並んでいます。

2012-03-17 15:56:25
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また、この頃はアンドレ・ジッドが非常に“旬”だったのでしょうか、「最近のジイド」としてこの年度発表の4編がまとめて掲載されているほか、1936年の『ソヴエト旅行記』を導入として、ソヴィエトに関する記事がまとめられてあったりもします。

2012-03-17 15:56:34
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そのほか、文学・芸術・思想等の、国を問わず様々な記事が載っています。執筆者で私が聞いたことのある名前としては、林芙美子、丹羽文雄、青野季吉、新居格、瀧口修造、トーマス・マン、バーナード・ショー、バートランド・ラッセルなど... 教養のある人には、うむ、というラインナップなのかな。

2012-03-17 15:56:46
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残念ながら私にはそのような教養はないので、単に面白い、珍しい、といった観点から気になるところに注目しますと、一つには、「雄鷄通信」なるコーナー。6ページにわたって、世界各国の時事ネタ、事件、また海外の文学関係の情報などが集められています。

2012-03-17 15:56:57
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例えば短いものでは、「ニユウ・ヨオクのある酒場では猫のボキシングが呼物となつてゐる」とか。「アメリカに輸入される日本製婦人用長靴下は一年百五十萬ダースに制限される旨、日米当局の紳士協定が成立した」とか。長いものだと、例えば次のような話は一種ミステリーじみて興味深い。

2012-03-17 15:57:12
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「ハアトフイルド・スクエア(イイストボオン)の大きな邸宅で中年の婦人がピジヤマ一枚で居室の床の上に死んでゐた。警察が調べてみると室内には一打以上のラヂオセツトと二十個の時計があった。時計は大部分動いてゐた。別の部屋にはラヂオセツトに連結した電線が山のやうに散乱してゐた。(つづく)

2012-03-17 15:57:29
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(つづき)顔見知りの銀行員がミス・ベツシイ・ノラ・マデレイン・ホオンビイであることを証明した。この女が数年前、まへの持主の遺言でその邸宅を貰ひ受けひとりで住んでゐたことだけは判つたが、詳しい身許は不明である。自然の死であると警察は見てゐる。」

2012-03-17 15:57:44
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あとは、こんな大岡裁き?とか。「衣装店の店先で二着のツウピイスの衣服を盗んだ十七歳の娘ノオア・シヤアウインに対し、サウスエンドの法廷が向ふ十二ヶ月間、夜十時半以後外出せざること、ダンス・ホオルに行つてはならぬこと、並びにサウスエンドに出てはならぬことの三ヶ条の刑罰を申渡した。」

2012-03-17 15:57:55
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また時代を感じるのは、「リオ・デ・ジヤネイロに着いた汽船からShorts(パンツ)にワイシヤツといふ軽装で上陸した先端娘の一隊を見て市民が激昂、危険に瀕したので警官が護衛して船へ送り届けた」これに付いた写真を見ると、腿の真ん中くらい丈のキュロットスカートといったくらいのもので。

2012-03-19 15:43:47
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また、記事以外に大変興味深いものは広告です。特に昔、天野祐吉さんの「嘘八百」シリーズに大変はまっていたもので、こういうの大好物...。で、さすがにその風味は見て味わっていただかないと伝わりにくいので、携帯ですが写真を撮ってみました。

2012-03-17 15:58:28
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煽りがすごいのがコレ。「お早く……お早く……直にお買ひ下さい!!! 唯今!!!」 http://t.co/YHN2WImv

2012-03-17 15:59:09
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インパクトありすぎなのはコレでしょうか。1冊通してここだけ多色刷です。「精鋭なるものは傷み易し!眼もまた然りとせば、近代人よ、苟もスマイルを活用するに吝かなる勿れ!」 http://t.co/aY5j7fPo

2012-03-17 15:59:37
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これはすごくかわいくて、ステキです。それにしても、ほんとうに息の長い商品ですね。 http://t.co/L1c0f2a1

2012-03-17 16:01:00
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「ビジネスマンに新高ドロップ」「良い菓子は闘志と元気の出所!」昔からビジネスマンは戦っていたんですねぇ... http://t.co/XBvY6riT

2012-03-17 16:01:35
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「読本」です。なんだかすごく説得されます。いきなり「けしからん」と全否定。最後の「その泡ダメ。」だけなんかカワイイ。 http://t.co/BPcaZPv7

2012-03-17 16:02:02
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このへんは、イラストも文章もなんていうか味がある。「ボサボサ頭ヂヤ感心シマセンナ!! オ手ガ汚レズ、ノーブルナ芳香トソノ整髪効果ハ近代人ノ好ミニピツタリ合致!」 http://t.co/m38hlNtP

2012-03-17 16:02:26
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今もおなじみトンボ鉛筆ですよね。でもなんだかどことなくホラーと思ってしまうのは私だけでしょうか...。「各地にあり」もなんだか効いてます。 http://t.co/EtDJPWpj

2012-03-17 16:03:32
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病気がちな坊ちゃんをお持ちのお母さまに、肝油を薦めるの図。このポージングがじわじわきます。 http://t.co/LO9Mos4k

2012-03-17 16:03:54
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これは、なんといっても「GO・STOP」がわかりやすくていいなあと思って。胃腸の交通整理。 http://t.co/b1xcwnM2

2012-03-17 16:04:20
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こちら、一見コラムか記事のように見せかけておいて、よくある効き目証言モノです。証言するは谷崎精二(谷崎潤一郎の弟)、その消化不良を癒したのは「錠剤わかもと」。ブレードランナー... http://t.co/jg7WVcRI

2012-03-17 16:04:46
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