【腐：T&B】自作倉庫【#同題ssTB】

伽哉 @muon_kaya

空腹を覚えれば、腹が減ったと喚いて騒いで。彼ほど欲求表現な露骨な人間に会ったことがない。聞きもしないのに、どこのテイクアウトが美味いだの、今度どこに新しいカフェがオープンするだの。そう、食事に誘うということに関しては、彼の方が得意だった。「バニー…なぁ、」<うえ> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「貴方は貴方の人生を歩んでね」娘の遺灰を抱いた彼にそう声をかけてしまった私は、間違っていたのだろうか。孫娘の結婚式を終えた次の命日、墓参り帰りの彼と擦違った。「ご報告したいことが、あります」そう友恵は、こんな照れた子供っぽい笑みが好きだと言っていた。<灰> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「雨やまねーかなー。桜散っちまう」どこからか桃色の花弁がフロントガラスへ舞い降り、雨と相成って流れ落ちていく。助手席でそう零した虎徹は、曇天を睨んだ。「あっ、おい、今の交差点は直進だろ」「少し、時間がありますから」たまには遠回りをして、桜並木を。<やむ> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「バニーちゃん、これどんな顔で買ってきたの」「この顔ですが？」満足そうな笑みで差し出された紙袋から出てきたスキン1箱に、虎徹は頭を抱えた。「コンビニ店員ビビってただろ」「ちゃんと口止めしましたよ」今twitterを覗けば、トレンドは間違いなく。<コンビニ> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

深夜シフトは至って退屈。差し出されるままレジへ通し、何食わぬ顔で紙袋へ納めたのはこの時間の必需品。「ありがとうござっ…！！」初めて顔を上げ、そこで漸く気付いた場違いな客。ウィンクひとつで唇へ人差し指を立てたバーナビーは、ゴムを片手に颯爽と店を後にした。<コンビニ> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「虎徹さん、見る目ありますよね」自分でそんなことを言えてしまうハンサムさが恨めしくて、でもバニーだから許せてしまうかなと思う自分は中々の重傷だ。「俺から贈っても良かったんだけどさ」けれど心許無げに揺れる瞳。「どっちが贈るとかじゃなくて、一緒に選びに行くか」<贈る> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「いつか贈っても良いですか」触れた左手の薬指に、虎徹さんは怯えた様に身体を震わせた。「外して欲しくなんてない。僕を、ここへ加えてくれるだけでいいんです」これは意地だ。強く握り合った指先へ口付けた虎徹さんが、泣きそうな顔で笑う。「バニーちゃん、見る目ねーな」<贈る> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「じゃ、僕がプレゼントで」バディ復活祝いに何かを贈り合おうなんて話をしていたら、バニーがそう言って笑った。抱えていた雑誌が、バサバサと音を立てて床へと落ちる。「何照れてるんですか。あなたが僕の誕生日に言ったことですよ」自分の発言の迂闊さに、今頃気付くとは。<贈る> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「感情にカタチがないことを悔やむ日がくるなんて」「カタチがないから、プレゼントに代弁してもらうんだって」ハンチングを退かせれば、言葉に窮して拗ねた顔。触れ合った箇所から、いつも何度でも贈ってやるのに。「カタチがないから、何度でも贈る理由が出来んだろ？」<贈る> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「バニーちゃんて、意外に我儘だよな」プレゼントを贈る気持ちがわからないという僕に、虎徹さんは溜息混じりにそう言った。何も欲しくはないと言っているのに。心外だと眉を寄せれば、ハンチングで視界を遮られた。「なあ、何が欲しいんだ？」そんな答え、解っているクセに。<贈る> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「どうして物を贈りたがるんですかね」ファンからのプレゼントを前に、バニーが小首を傾げてみせる。「いや、好きな人に何かしてあげたい結果がプレゼントなんだろ」「僕は望んでいないのに？」俺が贈った気持ちは受け取ってもらえてるのか、なんて不安を覚えた自分は莫迦だ。<贈る> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「夢みたいです」何度も繰り返していると、虎徹さんはついに声を上げて笑い出した。ナカを占領した僕に苛められたのか、低く唸って顔を歪ませる。その酷く艶のある表情に煽られて、自身が更に熱を持った気がした。「尻は痛ぇし腰は怠いし、これで忘れたらもう承知しねぇから」<夢> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

夢かと思ったという相棒と、朝っぱらからベッドの上で全裸の話し合い。昨晩何度も「虎徹さん」と「好きです」を必死に繰り返したバニーちゃんはどこへやら、正座でしゅんと項垂れる姿は中々の見物だった。「じゃ、今からもう一回するか」あれが酒の勢いだったとは言わせねぇ！<夢> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

夢を見た。密かに邪な想いを寄せていた相棒を組み敷き、喘がせ、熱を押し込むなんていう、浅ましい夢。しかも、虎徹さんが妙に好意的だったなんていう都合の良い設定付き。「頭を冷やそう…わっ！」不意に腰を掻き抱かれ、驚きに声があがる。「ばにー？今日は休みだろ…」え…<夢>？ #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「ちょっと、暴れないで下さい！」「ムリムリムリムリ！！そんなん入んねーって、裂ける！」「力抜いて！」「ならお前が下になれよ！それか縮めて来い！！」渾身の力で蹴り飛ばされ、同時にベッドの上へ出現したシーツの塊。付き合い初めて3ヶ月、僕等の隘路はまだ開かない。<隘路> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

莫迦みたいに下半身を擦り付け合って、熱を貪り合う。将来有望な優良物件を、この自分が独占しているという事実。ふとした瞬間我に返る度に、繰り返し腰を打ちつけるバニーの顔を見やった。「なぁ、バニー…もっとっ」手放す覚悟など、動物染みた欲の前では一瞬で消え失せる。<動物> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「バニーのが、舌、長いのな」肩で息をするほどの深い口付けの後、どちらともなく額を合せた。扉を閉めたばかりの玄関口。必要最低限の照明の中、ぬらりと差し出された舌の赤さに、生唾を飲み込む。「肉厚っての？俺の口ン中で余る」ああ、だから酔った虎徹さんは性質が悪い！<舌> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

暗く長い夜にはミルクを飲んで布団を被ってしまえばいい、そう思っていた。「バニーちゃん、これから飲まねぇ？」「もう日付変わりましたけど」「だってよー、何気なく見上げたら月が吃驚するくらい綺麗で！次のオフまでには桜も散っちまうし！」夜の長さを喜ぶ日が来るとは。<長> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「雷の音って、なんだか落ち着きませんか」ここ数日は酷い雨で、出動続きだった。隣で寝息を立て始めてしまったバニーを起こさぬよう、そっと息を吐く。「落ち着かねーよ」自分の右肩へ預けられた体温。腹の底、どこか遠くで疼く雷鳴に、まだ今暫く気付きたくなかった。<遠雷> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「バーナビーさん、この間の写真持ってきたよ！」パオリンの勢いに押され受け取った封筒の中には、頬を昂揚させた素顔のヒーロー達。「また来年も皆で行こうね」「ええ、勿論」満開の夜桜を背に撮られた写真の中で、同じくらいだらしない笑みを浮かべた自分が酷く愛おしかった。<桜> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「僕、からっぽなんです」芽吹きだした桜を前に、バニーはそんなことを言って笑う。春の日差し降り注ぐ昼下がりの公園は、酷く不釣り合いだ。「ならさ、これから埋め放題じゃねーか」抱き寄せた肩は震え、確かに頷いた相棒にそっと胸を撫で下す。なあ、まだ隣にいても良いか？<空白> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

駄目だ、何も思い浮かばない。ヒーロー直筆メッセージ企画だと、アニエスから真っ新な色紙を押し付けられて早十分。なんとかサインに一言添えたはいいが、隣でペンを走らせ続ける虎徹のように、個性的な装飾など描けなかった。「おっ、シンプルでいいな。バニーちゃんらしい」<空白> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

僕の女装が大そう気に入ったらしい虎徹さんは、目尻を下げ頬を緩ませ、軽い戯れを繰り返す。「バニーちゃん、ロングも似合うのな」金髪のウィッグが、彼の手によって落とされる。深い口付けをひとつ。普段は鳶色の瞳が黄金へと煌めくこの瞬間は、きっと本人も気付いていない。<金> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

「虎徹さん、あの、もういいですか」「だめー」困り顔にも構わず、正面から膝へ乗り上げて金糸を梳く。「可愛いバニー」とあるCM企画で身長185cmのスレンダー美女へと変身したバーナビーへ、キスとハグを繰り返し続ける虎徹に、バーナビーは大きな溜息を吐いた。<金> #同題ssTB

伽哉 @muon_kaya

真夜中に飛び起きた。早鐘を打つ心臓に、額に滲む嫌な汗。「どうしました？」隣で寝ていたバニーが身を起こし、取り乱した様子に眉を寄せる。蛇蝎のごとくとは、あの時こそ相応しい言葉だったに違いない。夢で蘇った嫌悪の瞳を掻き消すように、目前の暖かい身体を抱きしめた。<蛇蝎> #同題ssTB