ハートネットTV「シリーズ貧困拡大社会(2)孤立する生活保護受給者」書き起こし・ほぼ完全版
- toshihiro36
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男性:仕事が決まらなくて、悪いな悪いなという気持ちが先走っちゃって。自分の本当の気持ちを出すのが怖かったからかな。だから自分からは行きたくても、行ける気持ちにもっていけなかった。
2012-04-18 16:12:28<ナレーション> 何度挑戦しても就職できない自分に対するふがいなさを一人で抱え込むうち、人と接することすら嫌になってきたといいます。男性は幼いころから虐待を受けていたため、20年以上前に親元を離れ家族を頼ることもできません。
2012-04-18 16:17:28<ナレーション> 自宅に閉じこもる生活が続く中、男性にとって唯一の楽しみはインターネットの無料ゲームだといいます。社会とのつながりを失う受給者が増える中、ある危機が進行しています。このケースワーカーは1年前、悲劇的な出来事を経験しました。
2012-04-18 16:23:24<ナレーション> アパートの大家から家賃が振り込まれていないと連絡があったため、ケースワーカーは急いで受給者のもとを訪れました。いくら扉を叩いても返事がないため、警察立会いの下部屋に入ったところ、布団にくるまったまま亡くなっていたのです。死後2週間が経過していました。
2012-04-18 16:27:06ケースワーカー:本当に一度も会わないまま亡くなってしまう事もよくあることなので。関わっていた人で亡くなってしまうのは、やっぱり悲しいし。あんまり関わらなかったのに、亡くなっちゃう人とかもいるので。人が死んじゃうって、そんな簡単なことじゃないはずなんですけど…考えちゃうというか。
2012-04-18 16:31:36<ナレーション> ケースワーカーの誰もが経験するという、生活保護受給者の孤立死。さらに調べてみると板橋区の受給者の中で、1年間で自殺した人は9人に上ることがわかりました。
2012-04-18 16:34:51岡部教授:孤立死とかって書いてるのは、実は「緩慢な自殺」かもしれないですよ。社会の中で自分が生きられないと。社会の中でSOSもだせないと。出しているんだけど、なかなか受けてもらえないと。結局そうすると自死に近い形ですよ。
2012-04-18 16:38:52<ナレーション> 孤立する受給者を救い出すためにはどうすればいいのか。板橋区の担当者とともに首都大学東京の岡部教授は議論を重ねてきました。
2012-04-18 16:41:23<ナレーション> 岡部教授が重視するのは、受給者が社会とのつながりを取り戻すことです。そのために就労前の段階として、ボランティア活動など気楽に参加できる居場所を作ろうというのです。岡部教授と板橋区が作成した支援プログラムは、5月から本格的な運用が始まる予定です。
2012-04-18 16:47:45岡部教授:心の悩みを抱えてたりとか、社会との関わり方がなかなか見い出せなかったりという人がいるわけですので。まず社会との接点を作っていくということが大事なのではないかと。
2012-04-18 16:52:23岡部教授:一足飛びに稼働年齢層だから働けと言うのは、ある意味では個々の置かれている状況を全く見ないで言うことになってしまいますので、きめ細かく丁寧にその人の生き方を肯定していく。後押ししていくというのが大事だと思いますけどね。
2012-04-18 16:55:57スタジオに戻ります
茂木:辛いことですよね。もともと憲法には「健康で文化的な最低限度の生活を送る権利を持つ」と書かれていて、それを実現したものが生活保護なんですけど。お金があって物質的には生きていけても、何かが足りないから自ら死を選ぶ人までいらっしゃるという。ここにものすごく大事な問題があると思う。
2012-04-18 17:03:58湯浅:生活保護を受けたからって友達ができるわけじゃないので、それは生活保護とは別のもので補わなきゃいけない。それを補うことが必要な人っていうのは、生活保護を受けている人だけじゃなくて、世の中にものすごい数増えちゃってるんですね。
2012-04-18 17:08:12山田:先ほどのVTRでケースワーカーも非常に忙しいという現状がある中で、これから求めれる支援…どういったところが大事になってくるでしょうか?
2012-04-18 17:10:48湯浅:ケースワーカーさんもとても忙しいわけですが、それは行政の仕事であると同時に民間の仕事でもある…もうちょっと言うと、社会全体の仕事なんですね。例えば私たちは民間のNPOですが、そういう場作りをやっているわけです。
2012-04-18 17:14:19湯浅:そういうところでお茶を飲みながら、たあいのない話をしながら、でもそういう中で「なかなか仕事が決まらないんだよな」と愚痴が言える相手がいるってことは、本人が「また明日から頑張ってみるかな」と思うためには必要なんですね。
2012-04-18 17:17:47湯浅:そういう場所って、実は日本社会には今まで足りなかったんですよね。そういう所がある中で…私たちのところで今相談を受けているスタッフは3分の1くらいはもともと相談に来た人たちです。そういう風に支えを求めに来た人が、支え手にまわる回路を社会の中にたくさん作ることが必要ですね。
2012-04-18 17:24:17茂木:僕はやっぱり“貧困”って、実はお金がないことじゃないんじゃないかという気がするんで。だからお金以外の支援って何なのかっていうことを真剣に考える時が来てると思いますよね。でも、やっぱりカギは人と人がつながるということだと思うんで。
2012-04-18 17:29:03茂木:そのためにはやっぱりきっかけが難しいとか、どうしたらいいのかわからないとか、いろいろな問題があるんで。人と人とのつながりを作っていくということを真剣に考えた時に、何をしなければいけないか考えれば、おのずからやらなければいけない支援の形は見えてくるんじゃないかと思うんですね。
2012-04-18 17:33:12山田:それはもう待ったなしの状態だと思います。では支援について窓口を一つご紹介します。仕事や心の悩みなど暮らしの悩み全般について、無料で電話相談に乗ってくれる窓口があります。「よりそいホットライン」です。電話番号は0120-279-338です。24時間対応しているということです。
2012-04-18 17:37:28