岸本佐知子編訳『居心地の悪い部屋』感想まとめ
来週発売、『居心地の悪い部屋』(角川書店)の書影確認(http://t.co/ppNZ4xVB)。やはりバドニッツ短篇集ではなく、岸本さん編訳のアンソロジーだった。アンナ・カヴァン「あざ」も収録される模様。(この秋刊行予定『アサイラム・ピース』の収録作)早速予約。
2012-03-24 09:33:21岸本佐知子・編訳『居心地の悪い部屋』(角川書店)読了。奇妙、異色、不可解、異常、ふしぎ等の形容に惹かれる読者を、強力に誘引するアンソロジー。個人的ベスト3(順不同)はジュディ・バドニッツ「来訪者」、レイ・ヴクサヴィッチ「ささやき」、ルイス・アルベルト・ウレア「チャメトラ」です。
2012-03-30 02:00:37(続)結果として、特にホラー色が濃厚なものを選んでしまった。前二篇は恐怖小説仕立て。不穏さ(別名:死亡フラグ)の充満した気配に、雑誌連載で読んだときも震え上がったものです。「チャメトラ」(ちなみに訳し下ろし)を選んだのは、ちっちゃいものの描写に弱いので。マジカルでドリーミー。
2012-03-30 02:16:30岸本佐知子編訳「居心地の悪い部屋」(角川書店)を落手。すばらしい! 編者の基本姿勢。「うっすら不安な気持ちになる」あるいは「居心地の悪い気分にさせられる」、そんな海外の短編ばかりを収録。モラルや癒しを説き、人生の断片を切り取ったお話より数倍の読書の愉悦を堪能させてくれそうだね。
2012-03-30 12:56:52【居心地の悪い部屋】結論はおろか、原因も展開すらも判然とせず、言葉にできない薄気味悪さだけが残る作品や不安になる作品が多い。しかし、このモヤモヤ感こそを楽しむ一冊であり、題名に偽りなし!相変わらず編者... →http://t.co/mf9R5OAO #bookmeter
2012-03-31 02:25:42岸本佐知子さん編訳の『居心地の悪い部屋』読了。いずれ劣らぬ居心地の悪さだけど、やっぱりジュディ・バドニッツの妄想力はぶっ飛んでるわw。転がって笑いました。Brian EvensonのFugue Stateが柴田元幸さん訳で出るというニュースも嬉しい。
2012-03-31 12:06:22岸本佐知子編『居心地の悪い部屋』(角川書店)読了。いやあ、面白いおもしろい。これほど粒選りのアンソロジーを読んだのは久しぶり、というより、ぼくがこれまで読んだアンソロジーのなかでも最高級。 (続く
2012-03-31 22:50:40まあ、アンソロジーの楽しみは、編者の趣味・主張・偏向、企画や編集意図、内容のヴァラエティや組み合わせ、資料性、編者のコメントなど作品以外の価値……など、いろいろあって、いちがいに「これが最高!」と決められないのですが。 (続く
2012-03-31 22:51:07しかし、とりあえず収録作品の質で計れば、『居心地の悪い部屋』はオールタイムベスト1。これほど高水準のアンソロジーがかつてあっただろうか。ちょっと思いつかない。 (続く
2012-03-31 22:51:23以下、一篇ずつコメントします。評点つき【10点満点】。ひとつとして凡作がないので、心おきなく評点を記せる。
2012-03-31 22:51:37ブライアン・エヴンソン「ヘベはジャリを殺す」【7.5】。タイトルどおりのストーリーだが、ふたりは親友で、お互い納得ずくの殺人である。穏やかな会話と猟奇的情景のミスマッチがすばらしい。それにしても、会話中に出てくる“彼ら”とは何者?
2012-03-31 22:52:01ルイス・アルベルト・ウレア「チャメトラ」【8.5】。これも親友同士のはなし。戦場で狙撃されたゲレロを手当てするガルシア。ゲレロの傷口から記憶が溢れでて実体化する。そこまでは奇想小説の標準級だが、その実体化したものの運命が……。切ない儚いオカしい。
2012-03-31 22:52:42アンナ・カヴァン「あざ」【8.5】。前半は寄宿学校時代の追想、後半は旅先の城で戦慄と出遭うゴシックホラー。前半と後半とが、通常の展開ではなく歪んだ因果で結びついているところが、いちばん怖いところ。幾様にも受けとれる。
2012-03-31 22:53:11ジュディ・バドニッツ「来訪者」【9.5】。独り暮らしの娘を訪ねるべく、両親が自動車を走らせている。道に迷ったようで何度も電話をかけてくるのだが、その内容がだんだんと不吉になっていく。恐怖小説の段取りだが、電話の向こうで平然と話しているお母さんのトボけっぷりが絶妙。
2012-03-31 22:53:36ポール・グレノン「どう眠った?」【7.5】。ふたりの人物の会話だけで成りたっている小説。電話越し? 並んで話している? どちらともとれるが、えんえんとお互いの「眠りの感覚」を建築物になぞらえていく。安穏な調子だが、結末近くに凶事を匂わせる言葉が。
2012-03-31 22:54:01ブライアン・エヴンソン「父、まばたきもせず」【8.0】。死んだ娘を埋める父親。サイコホラーを思わせる場面だが、周囲に人たちに内緒で死体を埋めようとする行為のほかは、凪のごとく日常がすぎていく。
2012-03-31 22:54:48リッキー・デュコーネイ「分身」【8.0】。就寝中に両足が取れてしまった人妻。夫はあっさりと家を出ていき、彼女も引きとめない。そのうち両足から脚が伸びてきて、もうひとりの彼女ができていく。淡いファンタジイだが、最後に漂う蠱惑が独特。うっとり。
2012-03-31 22:55:14ルイス・ロビンソン「潜水夫」【8.0】。自家用ヨットを修理させるため雇ったダイバーの図々しさに悩まされる主人公。不快感が徐々に恐怖へと移行していく展開は、ホラーの常套だが、そんなありきたりの結末にはならない。
2012-03-31 22:55:31ジョイス・キャロル・オーツ「やあ!やってるかい!」【10.0】。小説全体がひとつの長い文章で綴られた実験小説。しかし、奇抜な技法を見せつけるだけの作品ではなく、その技法がおそろしい作用で読者の気持ちを掻きたてていく。 (続く
2012-03-31 22:55:50この長い文章全体の主語は「あなた」であり、しかも、その二人称が出てくるのはクライマックスに差しかかってからなのだ。読むうちに漸増する〈掻痒感〉、結末の一瞬に訪れる〈カタルシス〉、その直後に襲ってくる〈気持ち悪さ〉――凄いすごい!
2012-03-31 22:56:10レイ・ヴクサヴィッチ「ささやき」【9.0】。強烈なパンチラインのホラー。しかし、そこに至る紆余曲折のつくりかたが尋常ではない。ブッツァーティを思わせる不可解な恐怖。
2012-03-31 22:56:25ステイシー・レヴィーン「ケーキ」【9.5】。狂気を内側から描いた小説はこれまでもいくつも書かれてきたが、この作品は表現が独特。繰り返し表現などオブセッションが濃厚だが、文章の流れは円滑でむしろリズミカル。気持ち悪いんだけど気持ち良い。
2012-03-31 22:56:47