牧眞司の文学あれこれ

調子こいてTLから拾っているうちに、長大なまとめになってしまいました。もっとコンパクトにしたいのですが、まとめからさらに切り分ける方法ってないのかな?
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

幼いころから、高い天守閣と黒い壁のある城のイメージにとらわれている螢子。彼女はその城の在処を特定しようと、全国の古城をめぐっている。城廻りがきっかけで知りあった眉彦(彼が視点人物)は、その城は実在せず、彼女の架空の記憶だと断じる。 (続く

2011-04-09 19:38:43
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

しかし、思わぬところから、幻の城の手がかりが舞いこむ。はたしてその城の正体とは? そして、なぜ螢子は城のイメージに取り憑かれていたのか? (続く

2011-04-09 19:39:31
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

はかない夢幻の雰囲気からはじまり、やがて物語は、歴史の裏面へと迫っていく。つまり、この作品は、幻想小説とも伝奇小説とも呼べる。しかし、全体の底流となっているのは、千街さんが鋭く指摘したように青春小説のトーンだ。眉彦が抱えた不安定な心の揺れゆえに、幻想も伝奇も際立つ。

2011-04-09 19:40:27
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ソウヤー『見上げてごらん。』読了。SFのイヴェント「はるこん」にあわせて作られたファン出版物。ソウヤーの宇宙SF短篇を3作収録している。科学技術的なディテールを別にすれば、黄金期のSFみたいな味わい。良いですね、こういうのも。 (続く

2011-04-10 11:01:33
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

アイデアの新鮮味、物語のヒネリ具合という点で、いちばん面白いのは、ダイソン球の“外側”に住む人々を扱った「星の光、星の輝き」。地球のことはとうに忘れされていて、ぎっしりと固体が詰まった小天体が人類の故郷であるはずはないと推論される。 (続く

2011-04-10 11:02:15
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その根拠というのが、人類が古くから家畜としてきたニワトリの能力。ダイソン球の表面で軽やかに羽ばたいているニワトリだが、重力が大きい惑星上では飛ぶことができない。羽根がある生物が飛べない環境に棲息するのはおかしい――と。 (続く

2011-04-10 11:02:42
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

この理屈そのものが愉快だが、たんなるくすぐりに終わらず、物語のクライマックスにつながっていくのがミソ。 (続く

2011-04-10 11:03:07
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「巨人の肩に乗って」は、恒星間移民を扱った作品で、設定だけとりあげるとA・E・ヴァン・ヴォクトの有名作と同じ。しかし、フロンティアを目ざす主人公たちの気持ちが清々しく、ほとんどジュヴナイルSFの味わい。 (続く

2011-04-10 11:03:28
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『見上げてごらん。』で嬉しいのは、加藤直之さんが表紙絵とイラストを担当していること。ファン出版なのに、なんて贅沢な。 (続く

2011-04-10 11:03:43
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

それ以上に素晴らしいのが、日本におけるソウヤー翻訳の第一人者である内田昌之さんの「解説」。そこまで正直に言っていいのかというくらいの激白です。ソウヤーのファン、内田ファンは必見。

2011-04-10 11:04:55
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『幻視者のリアル』に触発されて、もう一冊。井沢元彦『猿丸幻視行』は、折口信夫が探偵役となって、謎の歌人・猿丸太夫にまつわる暗号を解読する。暗号システムがきわめて凝っているうえに、解読の過程で日本史の裏面が炙りだされていくのが、なんともスリリング。 (続く

2011-04-10 11:47:21
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

こういう作品を、パズル的興味や伝奇小説の面白さだけで読んでしまうのが、ぼくの限界だ。そういう読書はページを閉じれば終わってしまう。おそらく、この作品の価値は、暗号が解かれ、物語の謎が明かされたあとに、読者に委ねられる何かがあることだろう。 (続く

2011-04-10 11:47:48
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その何かというのは、日本の歴史・社会・文化――その中核にあるのが天皇制かもしれない――に潜む“澱”や“呪”だ。 (続く

2011-04-10 11:48:27
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

おそらく、そうした思想的視座を含むのが現代のミステリ評論(さらにはミステリ受容)の水準だろう。千街さんの評論集もそれが主軸ではないものの、しっかり弁えたうえで書かれているように思える。 (続く

2011-04-10 11:48:53
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

はずかしいことだけど、ぼくはそういう教養や興味がほとんどない。あるいは、現代のミステリにあまり食指が動かないのも、そのせいかもしれない。

2011-04-10 11:51:56
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

今年初頭からぽつぽつ進めていた《世界幻想文学大系》の未読分消化。オカルト・ノンフィクションの『神秘のカバラー』を除いて終了。しかい、むかし読んだ巻はほとんど内容を覚えていないものも多いなあ。

2011-04-12 12:31:50
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

この全集、全体を通して見ると、やはり第一期(第1~15巻)に取っつきやすい作品が多い。たとえば『マンク』や『放浪者メルモス』は幻想文学史の里程標となる作品というだけでなく、物語にメリハリがあって面白い。

2011-04-12 12:37:05
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

しかし、この全集の特長というか快挙は、『カシオペアのプサイ』や『アルクトゥルスへの旅』など、ふつうの幻想文学史からこぼれていた作品を紹介したことだと思う。邦訳された当時は「孤立した傑作」というかんじでした。

2011-04-12 12:44:45
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『カシオペアのプサイ』『アルクトゥルスへの旅』『秘密の武器』は、いずれも第二期。

2011-04-12 12:47:12
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

さまざまなアンソロジーを含んでいるのも、この全集の嬉しいところ。圧巻なのは『現代イタリア幻想短篇集』、有名作家が多いので意外性なあまりないのだけど、まさに粒選り。逆に「おお、こんな作家がいたのか! こんな作品が書かれていたのか!」という驚きがあったのは、『ロシア神秘小説集』。

2011-04-12 12:58:20
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

《世界幻想文学大系》は古書価もまだそれほど高くないので、面白そうな作品だけでも手に入れておくと良いと思う。全巻揃えるのはちょっとキツいかもですが。読むだけなら、はそれなりの規模の図書館なら備えていると思う。

2011-04-12 13:01:59
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

先に言及した以外では、『エジプトのイサベラ』『ペルシーレスとシヒスムンダの苦難』 『侏儒ペーター』『サラゴサ手稿』『アルラウネ』『不思議な物語』『西の窓の天使』あたりが、ぼくは面白かった。

2011-04-12 13:04:46
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ジョン・ハーシー『歩くには遠すぎる』を読んでみた。半世紀ほど前の米小説。原著1966年、邦訳68年。コシマキの惹句〔青春の不安と恐怖の幻覚世界を鋭く描いた幻想のロマン! 日本で始めて紹介されるサイケデリック文学!〕[表記は原文のママ]にけしかけられて、古書展で購入した。 (続く

2011-04-13 21:54:12
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

もしかしてウイリアム・バロウズみたいのかしらん、と思ったのだが、まったく方向違いでした。主人公とその友人たちは名門大学の新入生。ビートニクス以降、フラワーチルドレン以前の退嬰的な気分をとらえており、ドラッグによる幻覚も生々しく描かれているが、  (続く

2011-04-13 21:54:59
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