千伊武でDQ風パロ～王宮の顧問僧侶～

煌＠妄想専用【ベカ☆ひと300】 @kou_humo

その背中を追いかけるキヨスミには、到底見えませんでした。イヴの口が小さく「ありがとう」と呟いたことなんて。ふたりは先に進み、とうとう怪しげな魔法陣の描かれた広間にたどり着きます。そこには腰を抜かした子供と目玉の魔物、そしてやたらと偉そうな魔物がいました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「たすけてー！おうちにかえしてー！」「ならぬ。勇者に成り得る子供はすべて始末せよとの命だ。やれ！」「ギギィ！」「バギマ！」目玉の魔物が爪を振りかざすと同時に、竜巻が魔物を吹き飛ばしました。「何者だ！」「魔物に名乗る名前はない。子供たちは返してもらうよ」 #千伊武ＤＱ風パロ

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「ふん、人間か。勇者になる可能性のない人間には興味ないわ！しかしここを見られたからには生きては返せぬ」「どうせそうなるんだろうと思った」「行けぃ、おおめだま！」「ギィー！！」「バギマ！」イヴが再び呪文を唱えますが、おおめだまは竜巻の中から突進してきました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「くっ」防御はしたものの鋭い痛みに顔をしかめます。「ホイミ！」すかさずキヨスミが叫び、傷が癒えていきますがイヴの顔はしかめっ面のままです。「こいつ…強い…！」おおめだまはギョロリとした目玉でイヴを見つめます。「なら…これはどうだ、ザキ！」死の言葉が響きました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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しかしおおめだまは平然としています。ザキは強い相手ほど効果が弱まるのです。「くそっ…」「どうやら打つ手なしだな！」偉そうな魔物がカラカラ笑うのでイヴはムッとしました。打つ手はないわけではありませんが至難の技でした。もっと上級の術には複雑な手順と時間がいります。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「イヴ君イヴ君」いつの間にか傍にやってきたキヨスミがこそこそと耳打ちをします。「ぇ、でも…」「大丈夫！俺ラッキーだから！それに他に方法はないよ」「…わかりました。信じます」「まかせて！」キヨスミはそう言うとおおめだまの前に立ち塞がります。「やい！俺が相手だ！」 #千伊武ＤＱ風パロ

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「なんだ貴様、魔物のくせに人間に手を貸すとはけしからん」「俺はいつか人間になるんだ！そのためにも、お前たち悪い魔物をやっつける！」「ホイミスライムに何ができる！」「やってみなくちゃわからない！えーい！」「ザキ」「うっ」聞こえた呪文にキヨスミが呻きました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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ぼとりと地面に落ちたキヨスミは動かなくなりました。呪文を唱えたイヴは驚いた表情をしています。それ以上に驚いた顔をしていた偉そうな魔物は、事態を把握すると大きな声で笑いだしました。「わっははは！仲間の呪文にやられるとは情けないホイミスライムだ！」 #千伊武ＤＱ風パロ

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おかしくてたまらないと高笑いを続ける偉そうな魔物。おおめだまもそれにつられてひとつきりの目玉をにっこりさせて跳び跳ねます。しゅるりと足元で何かが動いたのにも気づかずに。気づいた時にはおおめだまはキヨスミの職種で羽交い締めされていました。「ギィ！？」 #千伊武ＤＱ風パロ

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「引っ掛かったね、おばかさん！」「なんだと！？」「俺ね、即死呪文が効かないの！さあイヴ君！」「…バギクロス！」魔物たちが気をとられているうちに呪文を練り上げていたイヴが両手を振りかざします。とんでもない竜巻が部屋いっぱいに巻き起こりました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「ギー！！」おおめだまは逃げる間もなく竜巻に飲み込まれます。するりと逃げ出していたキヨスミがイヴの隣に戻る頃、おおめだまは跡形もなくなっていました。「…勝った」「やったね、イヴ君！」流石に大魔法を使い疲弊しているイヴにホイミを唱えようとキヨスミが口を開きます。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「！イヴ君！」その直後、何かに気付いたキヨスミが触手でイヴを押します。力の入らないイヴはあっさりと横に倒れました。そしてイヴの立っていた場所に飛び込んだキヨスミを火球が襲いました。「ぎゃんっ！」「キヨスミ！？」キヨスミが煙をあげながら地面に叩きつけられました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「おのれ外したか」「お前…！」「次は外れぬようとっときのを食らわせてやろう」火球を放ったのは偉そうな魔物でした。もう一度攻撃しようと杖を振り上げると炎が集まっていきます。「い、イヴ君。大丈夫？」「キヨスミっ！はやく自分にホイミをっ…」「ご、めんね。無理みたい」 #千伊武ＤＱ風パロ

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力なく伸ばされた触手をイヴが咄嗟に握りしめます。いつもへらへら笑っているキヨスミの顔が、なんだか泣きそうに見えました。「あのね、イヴ君。人間にはなれなかったけど、俺、イヴ君に会えてよかった」「何を…！」「大好き…だよ」イヴの手から触手がするりと抜け落ちました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「キヨスミ…？キヨスミ…」何度揺すって声をかけてもキヨスミはもう動きません。イヴは震えながらその柔らかい体を抱き締めました。「そんな…そんな…」「さあ、人間！これで最後だ！」魔物の杖から炎が放たれました。「うわあああ！！！」 #千伊武ＤＱ風パロ

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イヴの叫び声と同時に、炎は一瞬で掻き消えてしまいました。魔物は仰天します。「なんだと！？魔力だけで掻き消した！？」「っ…お前だけは、許さない…！この世で最強にして最後の禁忌の呪文。俺の魔力、全部くれてやる！くたばれ、マ ダ ン テ！」 #千伊武ＤＱ風パロ

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強烈な閃光が収まったときには、すでに魔物は影も形もありませんでした。そこには牢屋の隅で震える子供と、部屋の真ん中にいるイヴと、その腕に抱かれたもう動かないキヨスミだけがいました。「…終わったよ、アンタのおかげで」イヴがオレンジの体を撫でます。 #千伊武ＤＱ風パロ

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その姿がうっすらと透けだしました。死んだ魔物は時間が経つと消えてなくなる。だけど今さら教会に駆け込む時間も魔力もイヴには残されていません。ただ力強く消えそうな体を抱き締めました。その時。カラン。小さな音が部屋に響き渡りました。床に落ちていたのは小さな指輪。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「これ…！」それはキヨスミが『お嫁さんにあげる』のだと大事にしまっていた指輪でした。その時は受けとる気がなかったのでしっかり見ていませんでしたが、よく見てみれば。「祈りの、指輪…！」それは指にはめて念じたものの魔力を少しだけ回復する魔法の指輪だったのです。 #千伊武ＤＱ風パロ

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イヴはとっさに指輪をはめ、強く念じます。指輪が青白く光り、イヴの体に少しだけ魔力が戻ったのを感じました。イヴはキヨスミの触手を握り、天を仰ぎます。「神様、お願いします。これが最後でもいい。もう一度だけ俺にアナタの奇跡を見せてください。……、ザオリク…！」 #千伊武ＤＱ風パロ

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「よくぞ子供たちを助けだし、無事に戻ってきたな、イヴよ！」「…はい」謁見の間で満面の笑みを浮かべる王様にイヴは頷きました。「こたびのそなたの働き、まっこと見事だった！約束の報酬だけでは足りぬな、なんでもよい、欲しい褒美を申してみよ！」「ならお願いが」「ふむ」 #千伊武ＤＱ風パロ

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「俺がこのまま旅立つことをお許しください」「なんと！」「魔物たちが子供を拐った目的はまだ幼い勇者を子供のうちに殺すためでした。そんなことは断固阻止しなければなりません」「うむ、確かに」「ですから俺自身で勇者を探し出して守りたいんです。世界の希望を」 #千伊武ＤＱ風パロ

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王様は膝を打ちました。「あいわかった！素晴らしい心がけじゃ！教会はワシが責任をもって守る！お前は世界のため旅立つがいい！」「…ありがとうございます、陛下」イヴは深く一礼すると、敬礼する兵士たちに見送られながら城を後にしました。 #千伊武ＤＱ風パロ

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「いいの、イヴ君」人目がなくなった頃合いにカバンから顔を出したのはキヨスミでした。「いいんだ。勇者は神に選ばれた存在。それを守るのが、あの時に奇跡を与えてもらった俺の使命だから」「イヴ君…」「それに旅をしてたほうがキヨスミを人間にする方法が見つけやすいだろ」 #千伊武ＤＱ風パロ

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「…うん！イヴ君大好き！これからもずっと一緒にいようね」「はいはい」カバンから飛び出してしがみつくキヨスミにイヴが笑顔を浮かべました。これからふたりの新しい冒険が始まるのです。「て、どこ触ってんだスケベ！ザキ！」【しかしホイミスライムには効かなかった】 #千伊武ＤＱ風パロ 【完】