サツバツ・ナイト・バイ・ナイト #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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2012-04-22 22:19:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トレンチコートにハンチング帽のこの男……暗黒非合法探偵フジキド・ケンジは、つい先程、アマザケ・ストリートの暗い路地裏で難事件をひとつ解決したばかりであった。それは取りも直さず、アマクダリ・セクトの邪悪なニンジャを無慈悲なカラテで追い詰め、爆発四散させてきたことを意味する。 26

2012-04-22 22:27:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コートに隠れた彼の背中には、生々しいスリケン痕がふたつ、新たに刻み付けられているのだ。事件解決後、フジキドはインタビューから得た情報を反芻するために、この屋台に入った。プレーン・モージョーを頼み、鉄ゴテで焼き立てを口に運ぼうとした時……彼は新たなニンジャの気配を感じ取る。 27

2012-04-22 22:34:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カウンターに独り座したまま、フジキドはニンジャ聴力を集中させた。ラジオの周波数を合わせるように、雑踏からニンジャの息遣いだけを探る。……ニンジャソウルを放つ少女の、独りごちる声が聞こえた。その中には、ザクロの名。知った名だ。彼は最低限の防御姿勢を取り、モージョーを口に運ぶ。 28

2012-04-22 22:41:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしてヤモト・コキ……恐るべきシ・ニンジャのソウルを憑依させた少女が、それと知らぬまま同じ屋台に入ってきたのだ。フジキドの緊張感が静かに高まる。ニチョームのニンジャ達とは、知らぬ仲ではない。共闘した事もある。だがそれでも、彼がニンジャスレイヤーであることに変わりはないのだ。 29

2012-04-22 22:45:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは狩猟者である。全てのニンジャを屠ると誓った復讐者である。彼に憑依したナラク・ニンジャのアティチュードは、今も全く変わらない。だが、フジキドは違う。人間性を保ったまま、狂気にも屈さぬニンジャソウル憑依者が稀にいることを、ザイバツとの戦いの中で知ったからだ。 30

2012-04-22 22:51:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトとフジキドは、視線を交錯させた。二者の間に、ある種の緊張感が走る。屋台内の空気が、ピンと張り詰める。その関係は、サバンナで一定距離を取って不意に遭遇した、狩猟帰りの猛獣ハンターと戦闘意志の無い雌ライオンのそれに近い。平穏とサツバツが入り混じった難解なアトモスフィアだ。 31

2012-04-22 22:56:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザクロ=サンは元気か?」フジキドが少し柔らかい表情で聞いた。「ハイ、元気です」ヤモトは無意識のうちに安堵の息をつき、鉄板に広げられた旨そうなイカ・モージョーに目を落としながら答える。それから、要らぬお節介で付け加えた「またいつでも、来て下さいって」「いや……迷惑が掛かる」 32

2012-04-22 23:13:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「迷惑……」ヤモトが呟いた。シ・ニンジャのソウルが、胸の奥底で、ナラク・ニンジャに対する警戒信号を発していることを、微かに感じ取りながら。心内で呟く(((大丈夫……敵じゃないから……)))。屋台の主は、裏に並ぶモージョー・エキス・ドラム缶のところへ、エキスを掻き混ぜに出た。 33

2012-04-22 23:20:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

店主の一瞬の不在を見ると、フジキドはヤモトの横に少しだけ体を寄せ、声を殺してこう囁いた。「……アマクダリ・セクトは得体の知れぬ組織だ。ソウカイヤよりも、ザイバツよりも狡猾で容赦が無い。奴らの狙いは、この私だ。そして、この私と関係のある者や協力者を、全て排除しようとしている」 34

2012-04-22 23:25:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「じゃあ、フジキド=サンが長らく絵馴染に来ないのは……!」ヤモトはザクロが照れ笑う姿を思い浮かべながら、嬉しそうな表情で右手を見た。直後!ヤモトの顔がイクサの表情に変わる!フジキドの右眼に灯るジゴクめいた炎……ナラクの眼を見たがゆえ!吹き出る冷汗!右手が袋のカタナに伸びる! 35

2012-04-22 23:37:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」機先を制し、フジキドが鉄ゴテをヤモトの喉元めがけ投擲!サツバツ!「イヤーッ!」椅子に座ったままブリッジ回避するヤモト!そのまま驚くべきニンジャ敏捷性でウバステを抜き放ち、カウンターに飛び乗る!ポケットに隠していたオリガミがひとりでに宙に浮き、折り畳まれ始める! 36

2012-04-22 23:41:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」フジキドも椅子から飛び離れチコートを脱ぎ捨てる!傷跡から滴る血によって一瞬にして生成される赤黒のニンジャ装束!口元には「忍」「殺」の鋼鉄メンポ!間髪入れず五枚のスリケンをシ・ニンジャめがけ、投げ放った!「行け!」浮遊機雷めいたオリガミ・ミサイルがこれを相殺! 37

2012-04-22 23:45:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!ニンジャナンデ!?」失禁するモージョー店主!「待って、戦いたくない!」ヤモトがカタナを構えて叫ぶ。「サツバツ!」ニンジャスレイヤーはメンポから硫黄の息を吐き出し、近接カラテを挑むべく飛びかかった!ナムサン!ワン・インチ距離ではオリガミの爆風は使用者にも危険! 38

2012-04-22 23:48:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ショッギョ・ムッジョ!激突するカラテ!「イヤーッ!」強烈なジャンプ・ポン・パンチがヤモトの腹部に命中する!肋骨が軋み、折れる!「ンァーッ!」くの字に折れ曲がって弾き飛ばされるヤモト!ドラム缶に激突し、そのまま路地裏の暗がりへと転がってゆく! 39

2012-04-22 23:51:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ!ハァーッ!」ヤモトは激痛に耐えながら、違法投棄UNIX山の中で体を起こした。頭の裂傷部から滴る赤い血が、顔半分を真っ赤に染めていたが、この暗がりではただの黒い墨のようだ。「イヤーッ!」屋台の屋根を蹴ったニンジャスレイヤーが、ネオサイタマの死神が、再び接近する! 40

2012-04-22 23:55:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ヤモトも相手を殺す覚悟でウバステを振り回す。周囲には亀や鶴の形に折られたオリガミ・ミサイルがわずか数枚浮遊し、バリアめいて彼女を護っている。だが、あまりにも頼りない。「イヤーッ!」横薙ぎの剣撃! 41

2012-04-22 23:58:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはこれを軽々と回避し、無慈悲なるチョップをカタナの峰に叩き込む!キィィイイイイインという鋭い音と共に、ウバステが真っ二つに砕けた!「!」ヤモトが声にならぬ声を発する!「イイイイヤアアーッ!」その一瞬の隙に対し、サマーソルト・キックが放たれた! 42

2012-04-23 00:01:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンァーッ!」ヤモトの体がキックの衝撃で跳ね上がる!恐れおののいたモージョー店主は、屋台の陰に隠れながら、路地裏に描き出されるニンジャたちの影絵を見ていた。男の影が一回転して飛び、着地。折れたカタナを握った少女の影は、そのまま空中で首が千切れ……爆発四散!「……サヨナラ!」 43

2012-04-23 00:05:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……フジキド=サン、フジキド=サン……?」ヤモトの声が、フジキドの耳に届く。フジキドはニューロン内に無意識に描かれた戦闘シミュレーション光景から醒め、息を吐いた。彼は滝のような汗を流していた。戦闘は、実際のところ起こらなかった。モージョー店主が戻り、キャベツを刻み始めた。 45

2012-04-23 00:10:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「すまぬ……大丈夫だ……」フジキドはチャドー呼吸で精神統一を図ってから、トークンを屋台カウンターの上に置くと、手指を微かに震えさせながら立ち上がった。(((……ナラクよ、やり口が狡猾になったな)))フジキドはニューロンの中で独りごちる。だが、返事は無い。また、冷汗が湧いた。 46

2012-04-23 00:18:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もう、行くんですか?体調……汗が凄い。顔色も」ヤモトが案ずる。カタナ袋は椅子に預け直され、ポケットにはオリガミの1枚がはみ出している。「大丈夫だ」先程中断した会話を思い出し、サラリマンめいたぎこちない笑顔を作った「すまぬ、行けぬ訳があるのだ、今は。必ず、アマクダリを潰す」 47

2012-04-23 00:28:03