ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/04/26

ゆきこ @twin1yue

#twnovel　身体が宙に浮いている。周囲の音は薄い膜の向こう側で鳴っていて、僕は静寂に切り取られている。体温がない。時計は動いているのに時間は止まっている。僕の身体は自動人形のように勝手に動いていて、僕はそれを上から眺めている。酸素が薄いんだ。どこかで映写機がまわっているよ。

layback @laybacks

雨で濡れたダンボール箱の中に小さなおっさんが捨てられていた。おっさんは子犬のように澄んだ目でわたしを見上げてくる。ぐうと音がした。お腹が空いてるの？　小さなおっさんはこくりと頷いた。禿げ散らかした頭頂部を目にした瞬間、キュンと胸が鳴った。それはたしかに恋だった。 #twnovel

オガタx世界卵 @eggofuniverse

#twnovel 異国の客人を部屋に招くと、客人が突然礼を言い出した。私の部屋の空気は私の所有物なのでそれを呼吸させてもらった以上当然だと。その客人、今度は急に怒り出した。客人の吐き出した息は彼の所有であり、それを断りもせずにすぐさま吸い込んだ私は窃盗を働いたも同然 らしい。

❄︎ @juttarainn

老人は樹の麓で一休みをするウサギを横目で見ながら森を走り抜けた．次に道理に従って亀の姿を探したが見当たらない．この場合は規定にある通り、わしの勝利じゃ．ひとまず腰を降ろす．ふと後方から足音が聞こえ森を振り返ると走り寄る鹿と目が合った．背中に亀が乗っている．鹿め! #twnovel

❄︎ @juttarainn

一体これはどういうことだ．ピクルスは訝しんだ．いつも通り、白くてなめらかなパンの寝床にキャベツやトマトを敷いて横になろうとすると、そこは見たことのない黒い輪っかのようなものに占拠されている．君と僕は同居するべきじゃないよね、オリーブは言う．味が喧嘩するからさ． #twnovel

140字物語 @shortshortshot

僕のお父さんはお酒が大好き。でもお母さんは、お父さんがお酒を飲むのがあまり好きじゃないみたい。なんでだろう。お父さんはすごく喜んでいるのに。そういえば僕も、お母さんが楽しそうに隣のおじさんと話してるのを見ると少し嫌な気分になるから、それと同じかな。きっとそうだ。 #twnovel

wacpre @wacpre

待っている。仲間がたくさんやってくるのを。ぴっちょん、ぴっちょん。仲間が増えてきた。だんだんと大きく深くなっていく。 #twnovel ながぐつをはくのがたのしいです。ばっちゃん、ばっちゃん。水たまりであそぶのはたのしいです。まいにちあめだといいのにな。

七歩 @naholograph

人間も捕食されるべきだ！世界食物連鎖協会には生物達が殺到した。怒れる生物達に神はTVを見せる。画面には、過労死する人々、恋愛出来ず子孫を残せない人々、争い殺し合う人々。「ここは実験場。こうして我が捕食しておる」#twnovel　神はTVを見る。画面には「NHK（人間捕食協会）」

鉞 @n_n1192296

#twnovel 余命わずかな少年の願いが叶い、唯一の友達であった人形と心が通じるようになった。おかげで少年は安らかな最期を迎えることができた。少年は気づかなかったのだ。他人にとってただの人形でしかない彼が、自分がいなくなった後どれほど永い時を独りで過ごさねばならないかという事に

空間 @nyannyannyanno

「ここがどこで私がここに来た経緯もわかりました。でもまだ途中だったんです。やらなくちゃいけないことが沢山…。本当にもう戻れないんですか？何か方法があるんじゃないですか？」 彼らが納得するまで延々と付き合うのが我らの仕事だ。三途の川の渡し守もラクじゃあないよ。 #twnovel

碧 @mimimdr

君のために四つ葉のクローバーを探していたらいつかの花畑に戻ってしまった。君が笑顔で駆け寄ってくる。「どこに行ってたの？ずっと探してたんだよ。やっと会えた。四つ葉のクローバーのおかげかな？」君の手に四つ葉を見つけて、僕は地球の裏側で摘んだクローバーを背中に隠した。#twnovel

Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 「彼女を作ろうと思う」「ふぅん。いい心がけだね」「まずは名前。つぎに素材。最後にテーマを設定する」「お前、何を言っているんだ？」「彼女を作ろうと思った」「もしよかったら、おれにも作るのを手伝わせてくれない？」「ああ。ちょうど助手がほしいと思っていたところなんだ」

たくわん @takuwan_takusan

干からびた砂漠の村にも、雨期はやってくる。私たちは日干しレンガの家から飛び出し、体中に雨粒をのみ込んだ。その様子を見ていた外国人のカメラマンは、カエルみたいだ、と言った。雨の日にゲロゲロと鳴くのだそうだ。雨音に負けない大合唱を響かせながら、私たちは跳ねまわった。 #twnovel