「辞書はイメージもいいし、景気にも左右されにくい商品だってのに。志を高く保ち、未来を見据えようって気概はないのか」ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:42:48「営業部では、やるべきことは決まっていたし、基本的には一人で書店を回ればよかった。到達すべき目標が明確で、自分が努力すればいいだけですから、気楽といえば気楽でした。しかし、辞書を作るとなると、そうはいかない。全員で考え、工夫し、作業を分担する必要がある」ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:45:38よっぽどはっきりわかっているもの以外、辞書では語源に踏み込むのは避けた方がいい。言葉は使う人の間で、いつからとも誰からともしれず生まれてくるものだからだ。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:47:04「言葉は知っていても、実際に三角関係に陥らなければ、その苦しみも悩みも十全に自分のものとはなりません。自分のものになっていない言葉を、正しく解釈はできない。辞書作りに取り組むものにとって大切なのは、実践と思考の飽くなき繰り返しです」ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:48:59作るのに莫大な金がかかるのは確かだが、辞書は出版社の誇りであり財産だ。人々に信頼され、愛される辞書をきちんと作れば、会社の屋台骨は20年は揺るがないといわれている。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:50:37時として無神経にも見える西岡が、実は人を傷つけるような振る舞いを決してしないことに、馬締はとうに気づいていた。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:52:25辞書は綺麗事だけでできているのではない。商品であるからには、品質を保証するネームバリューは絶対に必要だ。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:55:35ちょっと力を抜けや、まじめ。じゃないと、おまえの周りの人はみんな、いつか息を詰まらせる。大きすぎる期待や要求は毒だ。お前自身だって、求めただけの反応を得られず、やがて疲れてしまうだろう。疲れて、諦めて、誰にも頼れず一人になってしまう。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 18:57:36「ここでいう正字とは、誤字の反対語ではありません。活字として正当な字体ということです。辞書で使う漢字は、正字を持って旨とします」ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:00:03「これこそが、辞書に使用される紙が目指すべき境地です。辞書は、ただでさえ分厚い書物です。ページをめくる人に無用なストレスを与えるようではいけません」ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:01:15言葉にまつわる不安と希望を実感するからこそ、言葉がいっぱい詰まった辞書を、まじめさんは熱心に作ろうとしているんじゃないだろうか。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:03:30たくさんの言葉を、可能な限り正確に集めることは、歪みのない鏡を手に入れることだ。歪みが少なければ少ないほど、そこに心を映して相手に差し出したとき、気持ちや考えが深くはっきりと伝わる。一緒に鏡を覗き込んで、笑ったり泣いたり怒ったりできる。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:05:37言葉の持つ力。傷つけるためではなく、誰かを守り、誰かに伝え、誰かと繋がり合うための力に自覚的になってから、自分の心を探り、周囲の人の気持ちや考えを注意深く汲み取ろうとするようになった。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:08:10「おいしい料理を食べたとき、いかに味を言語化して記憶しておけるか。板前にとって大事な能力とは、そういうことなのだと、辞書作りに没頭する馬締を見て気づかされました」ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:10:14「言葉とは、言葉を扱う辞書とは、個人と権力、内的自由と公的支配の狭間という、常に危うい場所に存在するのですね」ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:12:15裁断前の大きな一枚紙は、ほのかな熱を宿していた。印刷機を通ってきたためだと理性ではわかったいたが、馬締はそれを荒木や松本先生の、岸辺や佐々木や自分の、『大渡海』に関わった多くの学者や学生アルバイトの、製紙会社や印刷所の人々の、情熱が凝縮した熱だと信じた。ー 三浦しをん「舟を編む」
2012-04-30 19:14:41