宗教について

甲野善紀(@shouseikan)先生あての田口さんによる宗教についての小論
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甲野善紀 @shouseikan

それでも、以前メールマガジンに紹介した京都大学の大学院生、田口君から長文の宗教に関するメールを頂き、これを次回のメールマガジン「風向問答特別編」に載せたいと思うと、万難を排して机に向かおうという意欲が湧いてくる。

2011-10-15 16:12:23
甲野善紀 @shouseikan

とにかくメールを読んでいて、現代の若者でこれほど真摯に宗教と科学について思いを込めて深く考えている人物がいる事に感動せざるを得ない。

2011-10-15 16:13:41
甲野善紀 @shouseikan

本を出したりテレビに出たりすると面倒な事も多いが、こういう人物に出会える機会が得られるというメリットがある事を思うと、まあマスメディアに出る意味もあったような気がする。

2011-10-15 16:14:55
甲野善紀 @shouseikan

あまりに感激したので、これから、このツイッターにその一部を紹介させて頂くことにしたい。

2011-10-15 16:16:08
甲野善紀 @shouseikan

-『科学を宗教に「引き寄せる」ことへの違和感』- 甲野先生は「虎落笛」(メールマガジン『風の先、風の跡』のなかの連載)のなかで、以下の文章を書かれています。

2011-10-15 16:16:40
甲野善紀 @shouseikan

また、佐橋氏は「禅に体制批判の姿勢はない」と指摘し、自らはそのことに眼を向けられているような事を書かれているが、

2011-10-15 16:17:23
甲野善紀 @shouseikan

この佐橋氏を始め、多くの禅関係者が半ば無意識のうちにハマっている現代という時代の体制に迎合しているのは「科学的立場」「科学的視点」というものに寄り添おうとしている事である。

2011-10-15 16:17:38
甲野善紀 @shouseikan

私は、禅の関係者が、しばしば「禅は科学的で、安易に何か迷信的なことを信じる新興宗教のようなものとは、まったく違うのだ」というような意味の事を言っているのを聞いたことがある…

2011-10-15 16:18:58
甲野善紀 @shouseikan

しかし、そうした禅の、いわば宗教らしからぬ、何と言うかある種の伝統文化的立場で自らを主張するというのは、何とも卑怯な感が否めない。というのは、一昔前、曹洞宗の長老の間では良く知られていた油井真砂尼の存在などを思い出してしまうからである。

2011-10-15 16:19:37
甲野善紀 @shouseikan

私が反応したのは、この「半ば無意識のうちにハマっている現代という時代の体制に迎合しているのは、『科学的立場』『科学的視点』というものに寄り添おうとしている事である」という部分です。

2011-10-15 16:20:20
甲野善紀 @shouseikan

これは、私が以前洗礼を受けてクリスチャンになろうか否か、本当にのた打ち回るくらいに考えていた時期に感じ、考えていた問題点と重なるのです。甲野先生の「禅への批判」でのそれとは文脈がずれてしまいますが、それを承知で、今回の私の気づきを書かせていただこうと思います。

2011-10-15 16:21:10
甲野善紀 @shouseikan

その当時、私は「物理学者は神を信じることが出来るのか」といった本や、クリスチャンの方が書かれた「イエスの復活を『科学的に』証明する」といった本をたくさん読み漁りました。しかし、そうした本を読んでいるとき、私は拭いようのない違和感を感じ続けていました。

2011-10-15 16:21:54
甲野善紀 @shouseikan

それは、一見「科学と宗教」を「公平に」扱っているように見えながら、最初から「宗教」の方に軸足を置いて、そこに(いわば)都合の良いように科学を「引き付けて」書かれた内容のものばかりだったからです。

2011-10-15 16:22:48
甲野善紀 @shouseikan

まだ20代前半の私が読んだ段階での結論ですので、読みが浅い部分もあったかとは思いますが、私はどうしてもそうした内容に心の底から共感することはできませんでした。

2011-10-15 16:24:45
甲野善紀 @shouseikan

私は以前から、科学と宗教を「両方同時に、同じだけの深さ、エネルギーを持って追求し、それでも両者は両立するのか」ということに関心を寄せてきました。

2011-10-15 16:26:24
甲野善紀 @shouseikan

そして、それを人生をかけて行おうとした人物の一人が、批判もありますが「宮沢賢治」だったのではないかと思うのです。であるからこそ、彼は今一番、私が関心を持つ人物の一人なのです。

2011-10-15 16:27:06
甲野善紀 @shouseikan

「宗教は疲れて近代科学に置換され然も科学は冷く暗い」 (宮沢賢治『農民芸術概論綱要』)

2011-10-15 16:28:37
甲野善紀 @shouseikan

「今日の歴史や地史の資料からのみ論ずるならばわれらの祖先乃至はわれらに至るまで すべての信仰や特性はたゞ誤解から生じたとさへ見えしかも科学はいまだに暗くわれらに自殺と自棄のみをしか保証せぬ

2011-10-15 16:30:01
甲野善紀 @shouseikan

誰が誰よりどうだとか誰の仕事がどうしたとかそんなことを云ってゐるひまがあるのか さあわれわれは一つになって[以下空白]」(宮沢賢治『生徒諸君に寄せる』)

2011-10-15 16:30:22
甲野善紀 @shouseikan

彼の「仕事」が成功しているか否かはともかく、少なくとも、彼の目指していた境地は、「我々の信仰は『科学的に』考えても矛盾するものではありません」という態度とは一線を画すものであると思うのです。

2011-10-15 16:30:50
甲野善紀 @shouseikan

前者が「片方(いわば自らの信仰)に軸足を置いて、それに(都合の良い部分を)『引き寄せる』」態度であるのに対して、

2011-10-15 16:31:36
甲野善紀 @shouseikan

宮沢賢治は(少なくとも彼の理想は)「どちらにも軸足を置かず、もしくは両方に平等に軸足を置いて、ある種正反対の方向のベクトルを持つ両者を『同じだけのエネルギー』を注いで追求し、

2011-10-15 16:31:57
甲野善紀 @shouseikan

それでもその2つのあいだに補助線を引き、融合し、新しい世界観を生み出すことは可能かどうか」というものであったのではないかと思うのです。

2011-10-15 16:32:45
甲野善紀 @shouseikan

(なお、私は森田真生さんの活動も、今後ますます展開されるであろう「懐庵」での活動も、そのようなことを追求し、実現していくことが出来るものではないか…と信じています。)

2011-10-15 16:33:35
甲野善紀 @shouseikan

◆安易な「宗教多元主義」への疑問 それと関連しますが、「宗教は科学と『矛盾』しない」という立場と同様、「全ての宗教は根本的には同じことを言っている」といった、安易な「宗教多元主義」の考えにも、私はどうしても馴染むことが出来ません。

2011-10-15 16:34:09