斎藤清二先生による「『あ!萌え』の構造」 その1

斎藤清二先生 @SaitoSeiji による連続ツイート、「『あ!萌え』の構造」のまとめ、その1です。 その2 http://togetter.com/li/318636
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斎藤清二 @SaitoSeiji

⑥こういった例を挙げることはいくらでもできる。例えば、学校には遅刻せずにきちんと通うという行動パターンを普段は確実にとっている生徒が、アイドルや声優に関する何かが発売される時には、当然のように学校を休んだり、遅刻したりする。

2012-06-06 13:26:34
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑦また、普段嘘を絶対につかないという行動パターンをとっているまじめな大学教員が、仕事を休んでコンサートへ駆けつけるためには、平気で「親が死んだ」などと嘘をつく。つまり「萌え」は、ある個人のそれまでの固定化した行動パターンから甚だしく逸脱した行動を、その個人にとらせるのである。

2012-06-06 13:29:46
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑧ところで、ある人に恒常的に認められる一定の行動パターンのことを、通常「パーソナリティ」とか「性格」とか呼ぶ。どんな人にとっても、その人のパーソナリティと呼ばれるような、一定の固定したパターンとは違った行動をとるのはとても難しい。努力してそうしようと思ってもできないことが多い。

2012-06-06 13:33:57
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑨グレゴリー・ベイトソンの学習理論によれば、これは、私達が何らかの行動を学習するときには、その行動そのものを学習している(これを「学習1」と呼ぶ)だけではなく、同時に必ず、「学習のしかたの学習」(学習2)をしているからであるという。この「学習2」は基本的に自己強化的なのである。

2012-06-06 13:37:56
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑩何かを買い物する時に私達は、100円を出せばスーパーでパック入りの総菜を買うことができるという行動そのものを学習するだけではなく、少ないお金で良い買い物をするためには、スーパーの棚の手前のものをとらず、奥の賞味期限の長いものをとったほうが良い、というようなことも同時に学習する。

2012-06-06 13:41:42
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑪こうした行動が成功(値段の割りに新鮮なものが手に入った)すると、「やっぱり、同じ値段でも賞味期限まで調べるような態度は正しかった」ということも一緒に学習される。その人の、スーパーの棚を引っかき回すような行動パターン(態度)は益々促進される。

2012-06-06 13:44:02
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑫問題はこうした行動が失敗した場合である(つまり、努力したわりには買ってきたものがすぐに傷んでしまったような経験をした場合)。おそらくその人は、「新鮮なものを探す努力が足りなかったのだ」と考えて、上記のような探索行動をやめるのではなくて、さらに熱心に行うようになるだろう。

2012-06-06 13:45:05
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑬このように、まじめな人は、なんらかの経験するたびにますますまじめになり、けちな人は益々けちになる。つまり、「まじめ」とか「けち」とか「天然」などというような、一般に性格とかパーソナリティとか呼ばれるものは、実は「学習2」の産物であり、いったん形成されると自己強化的なのである。

2012-06-06 13:48:17
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑭「性格を変えるのは難しい」ということには、多くの人が賛同するだろう。 ところが、上述のように「萌え」は、極めてやすやすと、この「性格=行動パターン=個々の行動のコンテクスト」を破壊してしまう。これは、あたりまえのように見えるが、実は極めて重大なことではないだろうか。

2012-06-06 13:51:46
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑮ベイトソンは「学習2」の自己強化傾向を変えることができるような学習があることを指摘して、それを「学習3」と呼んだ。ベイトソンによれば、「学習3」によって、我々は「学習2」(一般には性格やパーソナリティと呼ばれるもの)を変容させることができる。

2012-06-06 13:55:47
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑯「萌え」という現象」は、したがって、ベイトソンの言う、「学習3」の少なくとも一部に関わっているのではないかと、私は思っている。 ここでいったん連続ツーとを休憩します。次の話題は”「萌え」現象による苦痛軽減効果”についてです。

2012-06-06 13:58:02
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