茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第583回「連帯保証制度は、どうあるべきか」&「私が考える連帯保証制度の法理」

脳科学者・茂木健一郎さんの5月3日の連続ツイート。 本日は、昨日に続いて、あのこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ! ぷれいりーどっぐくん、おはよう!

2012-05-03 05:44:27
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第583回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日に続いて、あのこと。

2012-05-03 07:24:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(1)昨日、連帯保証制度についてツイートしたところ、いくつかの有益なフィードバックをいただいた。特に @hiromichimizunoさんの 冷静かつ論理的な反応に深謝。おかげで、私が問題と感じている点がよりクリアになったと思うので、そのことについてさらにツイートしたい。

2012-05-03 07:26:20
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(2)まず、「連帯保証」という概念、および制度<自体>に罪があるわけではない。夫婦で共有の家を購入する際の借金や、共同で経営する事業に関する債務については、社会的実態として連帯して債務を保証する実質的な意味があり、そのような場合には連帯保証人制度は有効である。

2012-05-03 07:28:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(3)問題は、日本社会においては、連帯保証制度が乱用されていること。たとえば、外国留学生がアパートを借りるときに、大学の先生が「連帯保証」するようなことがあると、この連帯債務には社会的な実態が伴っていない。大学の先生は学問の指導をするのであって、生計は共にしていないのである。

2012-05-03 07:29:42
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(4)入社する際に、親族が「連帯保証」の書面に署名を求められる事例がしばしばあるが、これも社会的実態を欠く。親族といえども、大の大人が入社後の日常の業務について、指導監督する責任も能力もあるわけではない。このような場合の連帯保証人契約は、明らかに形骸化している。

2012-05-03 07:32:04
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(5)借金する際に、知人や親戚が「義理」で連帯保証人の書面にサインすることがあるが、社会的実態を欠き、不当な場合が多い。たとえば、会社が借金する際に、その会社の経営にかかわっていない人が連帯保証することは、そもそもstake holderではないのだから、妥当性がない。

2012-05-03 07:33:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(6)借家、借金などにおける受益者ではない者、あるいは経営への関与がない者までもが「連帯保証」というかたちで債務者本人と同等の義務を負うことは、社会的実態、経済的合理性を欠き、法律の規定の乱用である。そして、そのような乱用が、日本の社会ではまかり通っている。

2012-05-03 07:36:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(7)問題の本質は、民法の連帯保証に関する規定が、本連続ツイートの(2)で言及したような社会的実態を伴わない事例に対してまで、個別の契約として適用されてしまうということの中にある。その結果、日本の社会全体が人的保証に頼り、より近代的なリスクへの対応の発達が妨げられている。

2012-05-03 07:39:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(8)社会的実態、経済的合理性を欠く「人的保証」に重点をおくことで、社会の流動性が失われる。外国人が家を借りる時の心理的障壁、起業する際の周囲への「迷惑」など、日本的なウェットな風土が温存され、結果として、連帯保証制度が、日本の後進性を象徴する存在となってしまっている。

2012-05-03 07:41:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

れど(9)common lawの体系においては、以上でその一部に触れたような連帯保証に関する社会的に妥当な「法理」が「発見」されやすいのだろうが、日本では立法によって是正していくのが一番の近道。法体系は、すなわち、社会の「OS」。連帯保証の乱用をただすことが急務である。

2012-05-03 07:43:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第583回「連帯保証制度は、どうあるべきか」でした。

2012-05-03 07:44:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

続いて、連帯保証制度のあるべき「法理」について、私が思うことをまとめてツイートします。私は法律の専門家ではないので、用語等、必ずしも慣習に沿った的確なものではないかと思いますが、ご容赦。

2012-05-03 07:49:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

連帯保証の法理(1)民法の連帯保証制度は存続するとして、それが適用されるのは、次のような事例に限られるべきである(a) 連帯保証人が、その債務に関して、直接、ないしは間接的な受益者であること。ただし、「間接的」の意義は、拡大解釈されるべきではない。

2012-05-03 07:52:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

連帯保証の法理(2)(b) 連帯保証人が、債務が発生する原因となった行為(就業、経営、売買等)において、実質的な意志決定者、行為者、ないしは指導、監督をする者であること。

2012-05-03 07:53:34
茂木健一郎 @kenichiromogi

連帯保証の法理(3)(a), (b) 以外にも、特段の事情により、連帯債務が成立する場合があるかもしれない。そのようなケースについては、今後の実証的、理論的研究によって整理、記述していく。

2012-05-03 07:55:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

連帯保証の法理(4)次のようなケースについては、連帯債務を負う妥当を欠くので、当該契約は無効、ないしは、連帯保証人の責任は軽減されるものとする(a) 家賃の債務において、生計をともにしない親族が連帯保証した場合。(b) 入社の際に、親族が、包括的な連帯保証を求められ、署名した場合

2012-05-03 07:57:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

連帯保証の法理(5)(c) 会社経営に伴う債務を、経営に関与する実態がない知人、親族等が連帯保証した場合 (d)その他、受益や、関与、指導監督といった実態がないにもかかわらず、「義理」や「名義貸し」で連帯保証契約を結んだ場合。

2012-05-03 07:58:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

連帯保証の法理(6)民法の連帯保証に関する条項は、どんな事例でも任意に結ぶことのできる契約のひな形を示したものではなく、受益や共同行為、指導監督などの、社会的実態が存在する際に発生する連帯債務に適用される基準を示したもの。それ以外の事例に対する適用は、厳格に制限する。

2012-05-03 08:00:53