ANIME研究者・久美薫氏による、『坂の上の雲』とアニメ史における手塚史観

久美薫 - 公式ブログ - http://kumikaoru.otaden.jp/
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It happens sometimes @ElementaryGard

「手塚は悪くない、虫プロは画期的だった」説が現れたのも、こうした宮崎天皇への反動にくわえ、「日本のアニメは世界いち~」な風潮を受けての結果だったと私は見ます。

2012-05-03 10:32:09
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日露戦争は戦争英雄譚として語り継がれ、敗戦によって一度はなかったことにされました。が、司馬が『坂の上の雲』で天皇陛下万歳史観を脱臭しテクノクラートの英雄譚に仕立て直した日露戦争物語を作り上げ、つまりは高度経済成長期の日本を投影した「明治」を創造。

2012-05-03 10:38:24
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司馬は現実の政治には終生距離を置いていたそうですが、大衆読者(男子が圧倒多数)の心性にとことん沿った大衆作家ゆえに、高度経済成長期の日本の理念を色濃く反映した小説を生み出したわけです。

2012-05-03 10:41:38
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『竜馬がゆく』『国盗り物語』もそうでした。

2012-05-03 10:42:08
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大衆小説ならそれでもいいのでしょう。が、「アニメ学」を名乗るのなら同じ轍を踏んではいけません。

2012-05-03 10:45:58
It happens sometimes @ElementaryGard

『坂雲』の連載は産経新聞。高度経済成長期の働くおじさんたちに愛読されました。誰もが自分を秋山真之や山本権兵衛に重ね、話が通じない職場の同僚や上司を乃木その他に重ね、日々働く自分を輝く明治の男になぞらえて肯定したのは想像に難くない。

2012-05-03 10:50:15
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「『坂の上の雲』は面白いですよ。でも、あそこで気をつけなきゃいけないのは、みんなが読んでいて自分のことを児玉参謀だと思うんですよ。実際は学校も会社の中も、世の中ほとんどが伊地知参謀なんです。」http://t.co/WED41Md4

2012-05-03 10:54:44
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「みんなかっこ良い児玉参謀に憧れるんですけど、残念なことに違うんです。そういう人は今の日本にはいないんですよ。もしいたら、選挙もしないで総理が三人も変わる国にはならないんです。帝国の没落って感じですよね(笑)。」 以上、にこにこと憎まれ口を叩くハヤオさんでした。

2012-05-03 10:55:39
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このインタビュー、今読み返すと東映動画に入ってなぜ彼がすぐに組合活動に精を出したのかが語られていて面白いですね。

2012-05-03 11:02:27
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「集団作業を学んだのはアニメーターになってからで、しかも仕事で勉強したんじゃなかったんですよ。まず東映動画に入ると、高卒と大卒で給料が違った。定期・不定期でも給料違うんです。一緒に入った友人がいたんだけど、彼より自分の方が(給料を)もらってるわけです。」

2012-05-03 11:51:03
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「これが、きわめて不愉快なことだったんですよね。僕は戦争中、みんなが困っているときに家業が軍事産業のおかげであんまり困ってなかった。それがずいぶん自分にとって負い目になって、むしろ罪の意識の方が強くてね。」

2012-05-03 11:52:28
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「それで、東映動画には労働組合があったんですよ。小さな組合ですけどね。そこで、自分はそういうことをしなければいけないんではないかと思ったんです。」

2012-05-03 11:53:10
It happens sometimes @ElementaryGard

「「やっぱ同じ仕事で同じような生活しているんだから、同じ給料よこせ」とか、「その友人の方が良くやっているんだから、僕に少し余計に出すような査定をするな」とかね。」

2012-05-03 11:54:04
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「おっちょこちょいだから労働組合で発言しているうちに、その中に入んなきゃいけなくなって、役員をすることになって、責任だけはものすごくのし掛かってきてね。」http://t.co/WED41Md4

2012-05-03 11:54:52
It happens sometimes @ElementaryGard

当時の組合機関紙が今も東映アニメの組合に残っています。「働きながら恋がしたい子育てしたい!」と後の奥様となる方がアジってるのがいい味です。

2012-05-03 11:58:31
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演出家・西村大樹氏、アニメ業界の思い出話を語る。 http://t.co/leLHFJge

2012-05-03 12:03:55
It happens sometimes @ElementaryGard

『坂の上の雲』の歴史観は単純明快。封建主義から実力主義へ国ぐるみで向かう、近代進歩史観。旅順要塞は日本という若い国がおとなの国になるために超えなくてはいけない試練。ロシア艦隊は封建主義で動く、倒すべき最後の怪物。

2012-05-03 12:18:23
It happens sometimes @ElementaryGard

歴史は一律に進む、歩むという考え方が『坂雲』の背後にあります。その分かりやすさが、経済成長期のおじさんお兄さんたちにはリアルに感じられたのでしょう。

2012-05-03 12:20:08
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でも歴史ってそんなに単純なのかな?

2012-05-03 12:21:27
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アニメーションは時間と手間をかければかけるほどいい→「そんなことはない!」→週30分のアニメーション放映にサムライたちが挑む→「できるわけがない」「いややってみせる!」→こうして日本の「アニメ」は始まった… おお見事に司馬史観ではありませんか。

2012-05-03 12:23:48
うるおいさん @uruoisan

完全にプロジェクトX…!RT @kumi_kaoru: アニメーションは時間と手間をかければかけるほどいい→「そんなことはない!」→週30分のアニメーション放映にサムライたちが挑む→「できるわけがない」「いややってみせる!」→こうして日本の「アニメ」は始まった…

2012-05-03 12:35:24
It happens sometimes @ElementaryGard

そう、プロジェクトX史観で初期虫プロを礼賛したのが『アニメ作家としての手塚』『小説手塚学校』。小泉の知財立国宣言にのってしまった代物なのです。@uruoisan

2012-05-03 12:37:15
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小泉の大花火を自分の身元証明にすり替えて一時期うはうはだったのがゴンゾ。「よくわからんがアニメビジネスは儲かってるらしいな」「旦さんうちの作品に投資しなはれ。ほら事業計画書も作りましたで~ハリウッドでもやってるやり方ですねん」「おお金出してみるか」 でもヒット作なし。

2012-05-03 12:43:42
It happens sometimes @ElementaryGard

登るべき坂を登りきってしまったとき、あるいは谷底に落下してしまったとき、その先の物語はどう綴るのだろう。

2012-05-03 13:03:38