ANIME研究者・久美薫氏による、『坂の上の雲』とアニメ史における手塚史観

久美薫 - 公式ブログ - http://kumikaoru.otaden.jp/
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It happens sometimes @ElementaryGard

昨日NHKアーカイブで拝見せり『坂の上の雲』。明治のふりをした戦後昭和の物語。実際の明治はこんなに日差し溢れる時代ではなかった、と思う。晩年の黒澤明が「『坂雲』にあるように明治は明るかったんだよ」と語っていたのを思い出します。

2012-05-03 09:25:12
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かくあってほしかった近代日本の物語とは?よーするに日本の力でアジアの国々を友邦として啓蒙し近代化を後押しし、互いの独立を認め合い(つまり植民地支配を行わず)経済・軍事共同体として欧米列強に対抗する… 明治日本にそんな余力もお手本もありませぬ。

2012-05-03 09:29:26
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戦後左翼それに日本を加害者とみるアジア諸国のインテリ(その史観自体は間違いではないけど)の主張に結局うなづけなかった理由もそれ。「そんな英雄国家を貧乏近代国に期待すな!結局は他力本願やないか!日本が暴れてへんでも自力近代化はしょせんできんかったのを本当は気が付いてるくせに!」

2012-05-03 09:38:13
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植民地を作るか、植民地になるか。分かりやすいリアリティ。

2012-05-03 09:44:12
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そのどっちでもない道をもし大日本帝国が世界に提示できていたら…気持ちは分かるけど司馬さん、そんなのできっこないない。

2012-05-03 09:45:41
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なぜ『坂雲』について論じたくなるのかというと、アニメ史における手塚史観と重なるからです。ごめんねまたこの話題なの。

2012-05-03 09:47:31
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2007年刊行の『アニメ作家としての手塚治虫』によって「手塚がとんでもない安値でテレビアニメを始めたために日本のアニメ業界はずっと貧乏を強いられている」という従来の説が覆された――ように思われた。

2012-05-03 09:49:24
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同じ年に出た『アニメビジネスがわかる』は、日本のアニメ産業の規模を具体的数字で概算してみせた画期的な本でした。これもまた「手塚はやはり画期的だった」説に立脚した論です。ちなみにこの二冊、出版社、担当さんとも同じってところに皆さん留意してね。

2012-05-03 09:52:02
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2009年に出た実録小説『小説手塚学校』も『アニメ作家としての手塚』史観に基づいていました。テレビアニメ黎明期を『坂雲』風に綴ろうという野心作でした。

2012-05-03 09:55:52
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これらの本の著者は意識していなかったでしょうが、実はこうした手塚再評価の流れは小泉純一郎が生み出したのです、結果として。

2012-05-03 09:58:23
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2002年2月に小泉総理(当時)が施政方針演説で「知財立国宣言」をぶちあげました。

2012-05-03 10:01:41
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「わが国は、既に、特許権など世界有数の知的財産を有しています。研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、わが国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします。このため、知的財産戦略会議を立ち上げ、必要な政策を強力に推進します。」

2012-05-03 10:01:51
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翌2003年1月31日の施政方針演説。「アニメ映画「千と千尋の神隠し」は、芸術性が世界で高く評価され、ベルリン国際映画祭の最優秀作品賞や、ニュー・ヨーク映画批評家協会のアニメ部門最優秀作品賞を受賞しています。」

2012-05-03 10:08:24
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「日本は高く評価されています。 科学技術、バイオテクノロジー、知的財産、IT、都市再生、構造改革特区など日本再生の鍵を握る分野について、政府を挙げて取り組み、政策の方向を示してきました。様々な分野での挑戦をしっかりと後押ししてまいります。」

2012-05-03 10:08:40
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同年9月。「日本が優れている分野は、「ものづくり」だけではありません。映画やアニメなど日本文化も世界で高く評価され、経済のみならず様々な面で波及効果を生み出しています。文化・芸術をいかした豊かな国づくりを目指します。 」

2012-05-03 10:09:48
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なぜ小泉総理がアニメに何度も言及したのかというとですね、彼が総理になる前つまり20世紀の末頃に「特許をもっと取りやすくして他にもいろいろ保護したらへんとアジア諸国にもアメさんにも負けてまうなあ」という危機感が特許庁を中心に大きくなっていたのが背景にあります。

2012-05-03 10:13:46
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安い人件費で良品をどんどん作って世界に売るやり方はもはやアジア諸国にもっていかれた。ならばアメさんにならって根幹の特許をしっかり守って稼ごうやないか、というわけです。

2012-05-03 10:15:02
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これが「知財立国」なるスローガンとして小泉政権のときに花火となってどどーんと炸裂。

2012-05-03 10:16:20
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アニメは特許ではなく著作物ですが「知的財産」ってことで「日本のアニメみてみぃ世界で人気やでー宮崎監督はアカデミー賞までとってもうたやん皆も後に続くんやー」とぶちあげたわけです。

2012-05-03 10:20:14
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ところが当の監督は「日本のアニメーションを一産業にしようとする動きが東京都であったり、杉並区なんかが色々やっているんですが、僕自身は日本のアニメーションはどん詰まりまで来ていると思っています」(2002年2月)と、いつものごとく憎まれ口を叩いたわけです。

2012-05-03 10:23:58
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「どれだけ売れるかっているのはつまらないことで、ほとんど売れません。」

2012-05-03 10:25:40
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「沢山の作品が出ているようですが、ほとんどの場合、どうしてあんなに暴力やセクシャルなんだろって思ったら、裏のほうを見たらビデオばっかりが多くて、東京都の人が支援するっていうのもそういうのを見て言ってるのか疑問を感じているんですよね。」

2012-05-03 10:26:07
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「そういうジャパニメーションっていうのはくだらなさを十分もっているので、これはウハウハと日本のアニメーションが世界に広がっていったら恥をかくだけだと思っている。」http://t.co/SroQ5P0A

2012-05-03 10:26:31
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一部の18禁作品を叩いているのではありません、ふつーにテレビで放映されているのも含めて「恥をかくだけの道具」と喝破したのです。

2012-05-03 10:28:31
It happens sometimes @ElementaryGard

この発言、実は手塚否定でもあります。なぜなら彼は手塚こそが日本のアニメを堕落させた張本人であると公言しているからです。つまり日本のアニメの否定=手塚の否定になるのです。

2012-05-03 10:30:52