ずんだチルドレン

小話まとめ
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ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

ぼくの名前は東山。ぷりっぷりのみずみずしい枝豆さ! …なんて言ってみたりしたけど、実は枝豆学校に入りたての枝豆のたまご。これから立派な枝豆になる為に努力していくんだ。立派な枝豆になってさらなるステップへ進むぞ!

2012-05-09 12:32:26
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「おれっちはもちのろん! 大豆になるじぇ~! 大豆になって節分で鬼を退治しちゃるっ」「ふん、相も変わらず戯れ言を夢として語る…片腹痛いな。伊達」「にゃにをぅ! じゃあおめーさんは何になりたいんだ利休!」ぼくの幼なじみの伊達くんと利休くん。二人もぼくと同じ、枝豆のたまごだ。

2012-05-09 12:35:46
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「俺の未来は現時点では豆腐が濃厚だ」「なんでぇ豆腐かよ偉そうにしといたクセによぉ」「ほほう? お前は豆腐を馬鹿にすると言うのか…? 愚かしい」二人とも、もう枝豆学校を卒業した後の事を考えてる…偉いなぁ…「東山ぁ~。おめーさんはどうよどうなのよぉ~」「えっ」

2012-05-09 12:38:17
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「えっ、ではない。この会話の流れからして東山の未来の話し決まっているだろう」「ぼ、ぼくは…」ぼくは一体何になりたいんだろう。そもそも立派な枝豆になれるかもわからないのに…「ぼくは…ぼくはとりあえず枝豆になってみないとわからないなぁ…」「っかー! のんきな奴だじぇっ」

2012-05-09 12:41:16
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

言われてみればそうかもしれない。枝豆になることばかりを考えてその先を考えてないのはぼくだけかもしれない。二人と別れて家に帰る最中にぽてぽてと想い耽った。ぼくの将来かぁ…想像も出来ない。「ん…?」いつも誰もいない空き地から話し声がきこえる…ぼくはこっそり近づいた。

2012-05-09 12:45:26
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「てめー枝豆族のクセにしゃしゃってんじゃねぇぞ!」「ねぇぞねぇぞ!」「…」い、いじめだ…! ぼくは息を飲んだ。複数の空豆に囲まれているのは…一粒の枝豆。その枝豆が…ぼくと同族とは思えないほどに艶やかでなめらかな曲線美を持っていて…ぼくはドキドキした。

2012-05-09 12:49:25
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

こんなに美しい枝豆がこの世に存在するなんて…思わず赤くなってしまった。枝豆なのに赤くなってしまった。「こ、こらー! なにやってんだぁ!」いつもなら伊達くんや利休くんの背中に隠れてしまうぼくが大声で空豆達に駆け寄る。「ちっ…外部者か」「退散だ」

2012-05-09 12:52:08
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

空豆はぼくをみると逃げ出していった。「き、きみっ! 大丈夫ですか!?」「…」空豆に囲まれていた枝豆は小さく頷いた。近くでみるとますます美しい…「…クラスメイト」「えっ?」「今の、クラスメイトだから」ぼくは意味がわからなかった。だって、空豆と枝豆が同じ学校だなんて…

2012-05-09 12:54:21
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「あ、あの…同じ学校って?」「……僕は…ずんだチルドレンだから…」「ずんだ…チルドレン…?」初めて聞く言葉だった。ずんだチルドレン…一体…「…じゃ」「ま、待って!」ぼくは立ち去ろうとする美しい枝豆を引き止めた。「ぼくは東山! きみは!」「…太助」名乗った太助は静かに立ち去った。

2012-05-09 12:56:34
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

その日、ぼくはなかなか寝付けなかった。きちんと睡眠をとらないと立派な枝豆にはなれないのに…太助のこと、ずんだチルドレンのこと…太助のことがもっと知りたい…ぼくは太助に夢中になっていた。こんなことは初めてだった。

2012-05-10 00:04:24
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

ぼくは今まで、立派な枝豆になりたいこと以外に欲は無く、友達と呼べる友達は伊達くんと利休くんくらいだ。そんなぼくが初めて興味を持った、太助と…ずんだチルドレン…

2012-05-10 00:05:03
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「ずんだって…何だろう」「は? どったの東山よぉ突然ずんだとかリズミカルでおれっちビビりっちだじぇ~」寝不足のまま枝豆学校に登校したぼくは、いつものように伊達くんと利休くんと休み時間につるんでいた。お調子者の伊達くんはヘラヘラとぼくの言葉に反応する。

2012-05-10 00:06:00
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

やっぱりみんなずんだなんて知らないんだ…「…東山」「えっ、何? 利休くん」「どこで知ったその言葉」「えっ」見ると、利休くんが今までにない険しいオーラを放っていた。「未来永劫…その言葉、口に出さぬことだな」「えっ…」ぼくは利休くんの迫力に押されて何も言えなかった。

2012-05-10 00:06:50
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

利休くんの一件で、余計にずんだのことが気になりだした。ずんだを知りたい。そしてもう一度、太助に会いたい。もう一度あの空き地に行けば太助に会える…ぼくは何故確信に近い予感を抱きながら一粒で空き地に向かった。「太助!」

2012-05-10 00:08:04
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「…」居た。今度は空豆達の姿もない…太助一粒。「ごめん、ぼく…どうしても太助に会いたくて…」「……僕も」「えっ」「お礼言ってなかったから」太助は無表情だけど決してきつくない雰囲気で、ぼくに一礼した。ぼくは思わず発芽してしまうような嬉しさに包まれた。

2012-05-10 00:08:41
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

それから太助と毎日少しずつ会うようになった。太助は将来ずんだになることを目指す『ずんだチルドレン』であること。「僕の故郷で…ずんだは象徴…みんなずんだで幸せになれる。僕は故郷のみんなを幸せにしたい」太助はほんの少しだけ表情を緩めた。きっと太助の故郷は素晴らしいのだと思った。

2012-05-10 00:10:41
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

今日も空き地へと向かう。いつもと同じように太助はいた。しかし…太助一粒ではなかった。太助と一緒に、知らない枝豆族がいた。太助が月のように美しい枝豆だとすると、その枝豆は美しさに可愛らしさを兼ね揃えている…イケビンだった。イケてるビーンズ…イケビンだった。

2012-05-10 00:11:25
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「キミだな! 枝豆学校の生徒だと言うのに、我々ずんだチルドレンのエースとも言えるSZCT<スーパーずんだチルドレン太助>に気安く近づいているのは! わたしの太助にただの枝豆が近づくなど愚の骨頂! 枝豆は枝豆らしくビールのつまみにでもなっていろトンマっ」

2012-05-10 00:12:30
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

一気に言われたので何一つ理解出来なかった。「あ、あの…きみは…」「わたしの名は喜助。ずんだチルドレンだ。キミのような枝豆はビールのつまみにでもなっていろトンマっ」「えっ」二度も同じことを言ってきた喜助は、ぼくを強く睨み付けた。初対面なのに嫌われているようだった…

2012-05-10 00:13:22
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「ぼ、ぼく…嫌われているのかな…?」「ビールのつまみと話すことなど何もない帰れトンマっ」「じゃ、じゃあ…ぼくがずんだチルドレンになったら…どうかな?」「何…?」ぼくの言葉に、喜助だけではなく、太助までもが驚いていた。

2012-05-10 00:14:06
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

「ぼくは立派な枝豆になることしか考えてなかった…その先のことを考えてなかった…でも、毎日太助と話してて思ったんだ。将来ずんだになるのもいいなぁって…」「冗談は大概にしておけよ東山! 片腹痛いわッ!」「えっ」

2012-05-10 00:15:11
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

背後から聞こえた声に思わず振り向く。そこにいたのは、険しい顔をした利休くんと伊達くんだった。「り、利休くん…?」「最近何やら様子がおかしいとオレの直感が訴えていたが…東山、愚かな発言を取り消せ」

2012-05-10 00:16:09
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

戸惑って会話を繋げることが出来なかったぼくの代わりに、喜助が顔を引きつらせて言葉を発する。「愚かだと…? ずんだになることが愚かであるとキミはいいたいのかね」「その通りだならず者。キサマらは枝豆のプライドがないのか」「っキミにずんだの何がわかると言うのかねスカポンタンっ」

2012-05-10 00:17:07
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

声を荒げる喜助の言葉に答えを返したのは、利休くんではない、第三者だった。再び背後から声が聞こえる。「わかりますよねぇ利休君…何といっても利休君は『ずんだチルドレン候補生』なのですから」「「善治郎様!」」太助と喜助が声を揃えた。

2012-05-10 00:17:47
ユッケ広報担当≒しゅら @k_syu

善治郎と呼ばれた枝豆は、立派な枝豆の模範とも言えるくらい立派な枝豆で、不思議な大人の色気と豆気があった。「チィッ…善治郎…全世界からずんだチルドレン候補生をかき集めでずんだチルドレンの集団の率いる諸悪の根源めが…」「えっ」

2012-05-10 00:18:40