ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/19

空間 @nyannyannyanno

酒精は樽や瓶の中の選ばれた水を酒に変える。酒はかつて神と人をつなぐ鎹だったが、いまや酒精は其処此処にいて、酒気とともに人から様々なものを持ち帰る。だが神世にそれらは重く、酒精が飛び行くうちに漏れ落としてしまう。落ちたそれらは風に雨に混ざり、また人里に流れていく。#twnovel

とおる7th @windcreator

私を始末しにくるのはあなただと、わかってました。私の設計者であり開発者であり管理者であるあなた以外、私を完全に始末することは出来ない。自明です。魂は無く、身体すら不完全な0と1の塊。それなのに私は恋を知った。あなたが百の否定を重ねても、このエラーだけは譲れない。 #twnovel

瀬口 @an2a_09

否定の言葉は信じたくない。でも肯定されても信じられない。乙女心の複雑さは計り知れないけれど、ただ一つ言えるのは占いなんて意味ないって事。結局どんな結果が出ても満足なんてできやしない。それでも君は繰り返す。「好き」「嫌い」毟り取られた僕の花弁が君の心に溜まってく。 #twnovel

良崎 @kanfrog

「これがスジグロシロチョウ、こっちがヤマトスジグロシロチョウ」「そっくりだね。見分けられる？」「香りで分かるよ」彼女は顔をしかめた。「スジグロはレモンの香り。ヤマトは少し穏やかな柑橘系」彼女は後ずさる。おかげで、君の髪の香りが一番好きだ、と言いそびれてしまった。 #twnovel

七歩 @naholograph

図書館に自分の本を置きたい。その夢を叶えるべく、書きかけの小説を書棚に忍ばせた。図書館に行っては続きを書く。背徳感がたまらない。そんなある日、知らない続きが書いてあった。驚いたけれど嬉しくて、僕は更に続きを書く。お次は挿絵が付けられた。どなたか色を塗りませんか？#twnovel

よしのちほ @chiho_yoshino

本当に好きなお店は、誰にも教えないほうがいい。いつ行っても私のための席があって欲しいから。人気なんてなくていい。私だけが知っていればいい。うっかり誰かに話して、私が座るはずだった席がなくなったら悲しいもの。だから教えない。本当に好きなお店も、本当に好きな人も。 #twnovel

斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

珍しいきのこを採った。色は緑。直径４センチ程の極めて薄いカサは大きな切れ込みで四分割されており、表面に白い線状の模様がある。軸は非常に細い。「四つ葉のクローバー摘んで嬉しいならそう言えばいいのに」うるさいなあ、きのこだってば。そんなこと言うと乾燥標本あげないよ？ #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 虚空に吊されている。ここはどこだ。見渡す限り何もない。私の両手首を括った紐の先は長く長く伸びその先は見えぬ。どこからか小猿どもがやってきて、私の腹やら胸やら背に粘土とも泥ともつかぬものをくっつけ始める。熱い。私は泥団子になる。どうも私は一つの惑星にされるらしい。

かなりひこくま @kanarihikokuma

にわかに日が陰り、街が闇に包まれると。棒にくくりつけられた生贄が高く持ち上げられ、その周りでは松明を持った人々が、ホ～ホ～ホ～と叫びだした。太陽復活の儀式だ。そのさらに周囲にはタコ焼きの屋台が並び、繁盛していた。 #twnovel

碧 @mimimdr

生まれた時からあの人のしもべだった。毎日あの人は僕の元へやってきて、僕はあの人の姿を映した。幸せな生活だった。何故あの日、素直に自分の気持ちを言葉にできなかったのか。「この世で一番美しいのはだあれ？」照れ隠しで口にした別の娘の名前が、あんな災いを引き起こすなんて。#twnovel

碧 @mimimdr

幽霊を映す鏡があると聞いてその館を訪れた。３年前と変わらぬ姿で夫は微笑んでいた。もう離れたくない、ずっとここにいたい。夫は静かに首を振る。鏡に映るのは現実の君と逆さまの世界だ。本当はもう俺がいなくても平気だろ。中から手が伸びてきて、私の涙をぬぐった後、夫は消えた。#twnovel

layback @laybacks

よくしょうが焼きにしょうがを入れ忘れる。人は大事なことほど忘れがちだ。今日もまたしょうがを入れ忘れた。器に盛りつけてから気がついた。そう告げると、旦那はしょうがないやつだなぁと言って笑う。わたしは突然、この人が好きだ、と思って口にしてしまう。それこそ数年ぶりに。 #twnovel

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 王は死の床に三人の姫を呼んだ。厳しく育てた後継者へ、最後に欲しい物を与えると。一の姫は答えた。「民を導く勇気を」王の冠が授けられた。「悪を滅す怒りを」二の姫には、宝剣が託された。三の姫が立った。「お母さまのために流す涙を」まだ幼い末娘を、女王は初めて抱きしめた。

添嶋譲 @literaryace

ターンテーブルの埃を払い、電源を入れる。インジケータが33rpmを示し、レーベルが軽やかに回転を始める。昔取った杵柄。鼻で笑うように針を落とす。逆転音を立て頭出しとビートの調節。エイトカウントで手を離す。スライダを右へ。キレイにつながる。君は何も気づかずに鼻歌。 #twnovel