サツバツ・ナイト・バイ・ナイト #7

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三人は倒れ込むように武装ドアの中に飛び込んだ。他の仲間がすぐに内側からこれを閉め、大きなコケシやイカのオブジェなどを積み上げて、バリケードを再構築する。「アイエエエエ!アイエエエエエエ!」呻き声を上げるスモトリ。「誰か、お医者様!アタシより先にこの子!」血相を変えるザクロ。 42

2012-05-20 14:02:20
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「2人とも上の手術台に。その位じゃ死なないから」階段から声が聞こえた。彼女の右手には応急サイバネ処置用ハンドドリル。白いゴシックドレスを返り血で染めたセンコウとオブツダンが、彼女の臨時助手を果たす。「出張外来日じゃなくて、ラッキーね」闇医者バシダは甲高いドリル音を鳴らした。 43

2012-05-20 14:14:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

階段には応急処置済みと思しき負傷者らがあふれ、包帯やサイバネギプスを巻き、憔悴した様子で座り込んでいた。ザクロが助けた者もいる。「よし、あと一息だぜ」ノタゴは若い連中を手招きし、ザクロを臨時手術室へと運ぶ。「ちょっと!ちょっと!手術は!」ザクロの上ずった声が、上階に消えた。 44

2012-05-20 14:24:23
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一方、ニチョーム・ストリートでは。サツバツナイトのムーンサルト跳躍によって足場タタミを揺らされた翁が、粉っぽさに咳き込みながら上半身を起こす。ヘリの爆発に煽られて倒れ、そのまま気絶していたのだ。「おい、おい、いるかい」翁はヤリテ・バーバに問う。だが彼女はすでに事切れていた。 45

2012-05-20 14:33:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だい、いないのかい、しょうがねえなあ」翁は袖をまくると、「BPM」「ボリュム」と書かれたダイヤルを捻り、ストリートに流れていた電子合成テクノ音を調整した。よりファストに!ラウドに!「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」それから小太鼓を叩き、サイバーボイスで今宵のサツバツを歌った。 46

2012-05-20 14:40:36
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(((制御できている、今のところは)))「殺」「伐」のスリットから、殺戮蒸気機関めいた硫黄の煙が洩れる。サツバツナイトはストリートの左右を飛び渡りながら、畏怖を感じさせる古き声で言った。「小娘。シ・ニンジャのこわっぱ」「ハイ」ヤモトは答えた。「ジツを使え。あれは難儀な敵だ」 47

2012-05-20 14:52:14
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「でも、もうアタイは……」ヤモトは己の無力を訴えた。また悔しさで涙が溢れてきた。(((まだ時間が必要だ。あと一息で狩れるという誤った考えを……与える)))サツバツナイトは鎖を紙一重で回避し、チャカ・ガンの銃弾を右脛にかすめさせた。(((最後までやり通せるか……あるいは))) 48

2012-05-20 15:04:16
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(((黒い炎を使えば……正体は見破られる)))サツバツナイトは「病院」と書かれたカニカンバンの脚を蹴った。直後、ギロチン・チャブが飛来し、大爪を切断する。「ともかくジツで何とかせよ、小娘。奴は怯えておる、サクラの死のジツに」「カタナが……」「オリガミでよい」「効かなかった」 49

2012-05-20 15:23:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((苛立ってきている……限界が近い)))ザクロは無事に退避したと気付く。敵はザクロの逃げ込んだビルに対し攻撃指示を下そうとしている。(((上出来だ、ひとまずは……)))ひときわ大きく跳躍し、エロチック雑居ビルのカワラ屋根を蹴ると、ヤモトと背中合わせでストリートに着地した。 50

2012-05-20 15:30:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やれるか、シ・ニンジャ」サツバツナイトの瞳が次第に黒へと戻る。「やってみる」ヤモトは言った。華奢な拳を握り、ぎこちないジュー・ジツを構える。カラテは失われたままだが、毒気が抜け、その目には微かに……淡く透き通った桜色の燐光が宿り始める。アマクダリ勢が彼らに向き直る。 51

2012-05-20 15:37:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

迫るヤクザ軍団!「イヤーッ!」サツバツナイトは腕を横薙ぎに振る!5枚のスリケンが放射状に投げ放たれた!「「「アババーッ!」」」「百発のスリケンで倒せぬ相手だからといって、一発の力に頼ってはならぬ。一千発のスリケンを投げよ……あのユーレイを殺すべし」。ヤモトは頷き、跳躍した。 52

2012-05-20 15:42:14
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「シ・ニンジャ……!」ヤモトは再びその名を呼んだ。ある日突然、自分のもとに降ってきて命をくれた、ニンジャソウルの名を。(((……頭をクリアに……体を動かす……)))。目の前に迫ってきたアサルトヤクザの胸板に向かってトビゲリを決め、そのまま流麗なムーンサルトで斜め後方に飛ぶ。 53

2012-05-20 15:52:03
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風が心地良い。翁の声。まだ歌ってる。ヤモトは身体を捻り別のヤクザの頭に着地すると、ハードル競技の姿勢で、飛び石めいて頭から頭を渡ってゆく。体は、どう動けばいいか初めから知っていた。死と紙一重の躍動の喜び。あの時のようだ。初めてニンジャの力を開放し、アサリを暴漢達から救った。 54

2012-05-20 15:58:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

鎖とギロチン・チャブは、サツバツナイトが引き付けている。背後から追ってくるのはスペクター。その腕は長い。(((もっと引き離す)))ウバステを発見する。勢い良く前方回転しながらそれを拾い、サクラ・エンハンスの淡い光を灯す。死者を送るボンボリの灯火めいた光を。そして駆け続ける。 55

2012-05-20 16:05:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ヤモトは走り抜けざまに、チャカを構えるヤクザの手首を切り飛ばそうと試みた。SLAAASH!甘い太刀筋!やはりカギから授かったカラテは、失われたままだ。返り血がひとすじ顔を撫でる。「……シ・ニンジャ……!」ヤモトの心を怒りが包む。そしてなお速く駆ける。絵馴染へ。 56

2012-05-20 16:12:49
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絵馴染が近い。亡霊との距離は十分に離れた。なお駆ける。(((亡霊からカラテを奪い返すことは?シ・ニンジャなら、できるはず)))「……シ・ニンジャ!」ヤモトは鬼気迫る表情で呼びかけた。桜色のマフラーメンポが金属めいて硬質化する。少しずつ、自分が人間から剥離してゆくのを感じる。 57

2012-05-20 16:21:37
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ヤモトは2階の自室へと跳躍するために上を見上げ、足のバネで一気にジャンプしようとした。その時、絵馴染のバーカウンターから、何十個ものガラスが割れる音と、乱暴な男の怒声と、いくつもの悲鳴が聞こえた。ナムアミダブツ!その中には、聴き紛うはずのない、アサリの悲鳴が混じっている! 58

2012-05-20 16:29:12
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何故アサリがここに?絵馴染で一体何が?ゲイマイコたちは無事なのか?まさかアサルトヤクザが中に?ニューロンの中に無数の文字が浮かび上がる。二階へと跳躍するか、否か。判断猶予はあと、タタミ3枚、2枚、1枚!「イヤーッ!」ヤモトはハードル競技めいた姿勢で、絵馴染の窓を突き破った! 59

2012-05-20 16:32:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

絵馴染のカウンターの上では、アサリを人質に取った無軌道大学生男子が、バタフライナイフを持ってゲイマイコらを威圧していた。彼はトイレでアサリからナイフを奪ったが、悲鳴をゲイマイコに聞かれて外側からこじ開けられ、理性を失ったのだ。なお他の大学生らは、隣のトイレ室で前後していた。 60

2012-05-20 16:39:19
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「オッ、オイ!抵抗するなよ!ゲイマイコども!そっちの席に座れ!」無軌道大学生はマッポに突き出されることを恐れていたが、今の所は、TV番組から着想を得た人質作戦が功を奏していた。(((チャメシ・インシデントだろ!このまま安全な退廃ホテルに逃げ込んで、本格的に前後したい!))) 61

2012-05-20 16:48:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!」アサリは酷い有様だ。ソフトサイバーゴス衣装は引き裂かれ、嘔吐物にまみれている。頭が割れるように痛い。「ゴボボボーッ!」またも激しく嘔吐!目元がサイバーサングラスに隠れていなければ、羞恥心のあまり彼女はセプクしていただろう!「……助けて……ヤモト=サン!」 62

2012-05-20 16:57:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブッダに救いを求めるかのごとく、アサリが親友の名を呼んだその時!KRAAAAAAASH!絵馴染のフロント窓上部が蹴破られ、オニめいた形相をマフラーメンポで隠すヤモトが突入してきた!ナムアミダブツ!そのまま無軌道大学生の横顔に鋭いトビゲリを入れる!「イヤーッ!」「グワーッ!」 63

2012-05-20 17:02:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトは空中に浮いたハードル競技姿勢のまま……突き出した右足の、磨り減ったスニーカーの靴底が、無軌道大学生の顔面にめりこむのを感じながら……下を見た。放たれた矢のように彼女が頭上を跳び越していくのを見上げ、アサリもそれに気付く。視線を交わす。「ユウジョウ!」「ユウジョウ!」 64

2012-05-20 17:19:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエエ!」オウガキリング、シャドウタイガー、ナカムラ……様々な日本酒瓶やワイングラスを割りつつ、カウンターから転げ落ちる無軌道大学生!「今よーッ!」ゲイマイコの年長者が華奢な腕で警棒を掲げて、仲間たちを率い襲い掛かる!ヤモトは着地からターンし、アサリに向き直る! 65

2012-05-20 17:24:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトの顔半分を覆い隠すマフラーメンポは、いつしか硬質化が解け、一瞬だけ彼女の顔に屈託の無い笑みが戻った。高校時代に、ほんの一瞬だけ笑った、あの笑いが。だが一方のアサリは、困惑を覚えながらも、視線を逸らした。ヤモトを恐れたからではない。自分の有様に羞恥心を覚えたのだ。 66 

2012-05-20 17:28:57