「オウム真理教」の会話分析

「NHKスペシャル 未解決事件 file02 オウム真理教」 http://www.nhk.or.jp/mikaiketsu/file002/index.html 第1部 5/26(土)19:30-20:43 第2部 5/26(土)21:00-22:13 第3部 5/27(日)21:00-21:58 続きを読む
97
KOMIYA Tomone @frroots

NHKに取材協力したチームメンバーのうち何人かで、Wikipediaの「会話分析」の項目を執筆しました。 http://t.co/ETpHrFNT

2012-06-06 12:52:42
KOMIYA Tomone @frroots

事典の項目ですので「これで会話分析ができるようになる」というわけにはいきませんが、会話分析の手法がアドホックなものではなく、体系だった研究の歴史に支えられているものであることを感じてもらえればと思います。あとで少し補足したいと思いますが、とりあえずお知らせでした。

2012-06-06 12:53:56

Wikipediaとの関連で、番組へのミニマムな補足。

KOMIYA Tomone @frroots

Wikipediaの「会話分析」の項目( http://t.co/WQiHkSwV )のうち、先日の番組と関連があるのは、「4-2-2-3. 後続連鎖」「4-6. 行為の組み立て」「5. 制度的場面の会話分析」あたりです。

2012-06-06 22:56:40
KOMIYA Tomone @frroots

まず、あの説法の場面は、発言順番の交替についていえば、日常会話とは違い、学校という制度的場面のインタラクションと似た構造を持っています。

2012-06-06 22:57:49
KOMIYA Tomone @frroots

学校の授業では、一人の人(先生)に優先的な発言権が与えられていて、他の人(生徒)が発言順番を得るためには、指名されるなどして先生の許可を得なければなりません。

2012-06-06 22:58:07
KOMIYA Tomone @frroots

説法も、教祖の麻原に優先的な発言権があるという点では、これと似た構造を持ちます(「5. 制度的場面の会話分析」を参照)。

2012-06-06 22:58:31
KOMIYA Tomone @frroots

他方、行為の組み立て、および行為の連鎖という観点から見ると、教室での会話と同じ面だけでなく、異なった面も見えてきます。

2012-06-06 22:58:56
KOMIYA Tomone @frroots

教室における行為連鎖の基本的な構造は、「先生の質問」「生徒の答え」「先生による生徒の答えの評価」の三つの行為によって形成されます。この場合、先生の質問には「正解」があって、生徒の答えのあとで、先生はそれが正解かどうか評価するわけです。

2012-06-06 22:59:49
KOMIYA Tomone @frroots

これは、隣接ぺアに、ひとつだけ行為が付け足されるタイプの後続連鎖のバリエーションと言ってよいでしょう(「3-2-2-3. 後続連鎖」を参照)。

2012-06-06 23:00:04
KOMIYA Tomone @frroots

それと同様に、麻原が仏陀釈迦牟尼の前生譚について信徒たちに問いかける場面では、信徒たちは「正解を言う」ことにはっきりと指向しています。それは、「先生の本を読ませてあげる」「脅す」というように、言い切りの形で信徒が答えていたことからわかります。

2012-06-06 23:00:40
KOMIYA Tomone @frroots

おそれおおくも教祖である麻原に対して、信徒が敬語も使わずに答えることができるのは、その発言が「正解の候補」として提示されているからでしょう。ちょうど、「解答欄の空白を埋める」ような行為として、その発言はデザインされているわけです(「3-6. 行為の組み立て」参照)。

2012-06-06 23:01:45
KOMIYA Tomone @frroots

しかし、番組内でも解説されていたように、説法では、そうした信徒の答えに対する麻原の反応は、教室での先生のそれとは大きく異なったものでした。

2012-06-06 23:02:13
KOMIYA Tomone @frroots

教室ではふつう、生徒から正解がでれば、そこでやりとりは終わります。しかしあの説法では、「ポアさせてあげる」という答え(実質的な正解)のあと麻原は「んー」と言ったりするだけで、さらに他の信徒に意見を求めていきます。

2012-06-06 23:02:58
KOMIYA Tomone @frroots

その上で麻原は、「不正解」のあとで、単に信徒の答えを否定するのではなく、信徒の答えが十分でない原因を、「真理に対する割り切りがない」「自分の立場に対する傲慢さがある」といった信徒の心の持ちように求めていくことで、信徒と自分とを差異化していました。

2012-06-06 23:03:35
KOMIYA Tomone @frroots

つまり、教室と同じように「正解」の出た所で終わるのでもなく、単に「不正解」を否定して信徒を貶めるのでもなく、「相手の心を分析する側」に立つことで、麻原は自分のほうが宗教者として上位にあることを示していたのでした。

2012-06-06 23:03:58
KOMIYA Tomone @frroots

このように、麻原の教祖としての地位は、一方的に上から教義を押しつけるようなコミュニケーションによってではなく、番組でも紹介されたような巧みな相互行為上の営みをとおして維持されていたことが少しでも伝われば、私たちとしてはうれしく思います。

2012-06-06 23:04:34
KOMIYA Tomone @frroots

以上が、番組で取り上げられた分析に対する、私たちのミニマムな補足です。「クラスルーム・インタラクション」という表現が出てきたためか、「教室と同じ」という受け取り方をされがちだったようですが、どちらかと言えば、「教室と似ているけど違う」点がポイントになります。

2012-06-06 23:06:34
KOMIYA Tomone @frroots

これを機会に会話分析にも興味を持っていただけると、とても嬉しいです。以上です。

2012-06-06 23:07:34

チーム代表の西阪による経過説明と、報告書の一部が公開されました。

KOMIYA Tomone @frroots

先日のNHKスペシャル「オウム真理教」への会話分析による取材協力について、チーム代表の西阪による経過説明のコメントと、報告書の一部が公開されました。 http://t.co/NUSLB4v6

2012-06-10 21:39:14
KOMIYA Tomone @frroots

報告書では、麻原の説法の会話的構造が、一見教室での会話と似た特徴を持ちつつ、それとどのように異なるのか、そしてその異同が、麻原と信徒の「差異化」にいかに貢献しているかを、より詳しく知ることができるはずです。

2012-06-10 21:42:41
KOMIYA Tomone @frroots

事件の大きさに比して、こうした分析は一見あまりに細かく些末に見えるかもしれません。しかし、実際にあの教団の内部で何が起こっていたのかを丁寧に辿ることこそが、荒唐無稽にすら見えるあの教団に、多くの人が惹きつけられていった過程を解き明かすために不可欠なことだと、私たちは考えています。

2012-06-10 21:49:11

7月16日月曜の午後3時からBSプレミアムで再放送されるようです。
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2012-07-16&ch=60&eid=28716