茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第608回「すぐれた指導者が、自分たちの話を聞いていてくれたという事実」

脳科学者・茂木健一郎さんの5月28日の連続ツイート。 本日は、至高の体験について。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ! ぷれいりーどっぐくん、おはよう!

2012-05-28 06:43:00
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第608回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日の至高の体験について。

2012-05-28 06:59:17
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(1)マイケル・サンデルさんにお目にかかるのは二度目である。NHKのスタジオに入って待っていると、サンデルさんが入ってきて、いきなりレクチャーが始まった。ハーバードの授業もそうだが、サンデルさんには、そのような劇場的能力がある。役者であることも、一つの素養なのだろう。

2012-05-28 07:00:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(2)レクチャーの内容については、6月8日(金)23時からのBS1の番組を見ていただくことにして、スタジオの中で感じたことについて書きたい。サンデルさんが、私たちスタジオのゲスト、回線でつながっている東京、上海、ボストンの学生とやりとりしながら、話を進めていった。

2012-05-28 07:01:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(3)周知の通り、サンデルさんの方法は、ソクラテスの問答法。一方的にある事実を伝えていくのではなく、学生たちに話しかける。しかし、その設問の仕方や、学生の発言を受けてのコメント、場合によっては途中で遮るなどのファシリテーションを通して、議論が進んでいく。

2012-05-28 07:03:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(4)ソクラテスの方法の本質はどこにあるのだろう。情報を一方的に受け取る方法は、一見効率の良いやり方のように思われる。しかし、人は自ら何かを発する際に、多くを学ぶのである。そこで起こっていることを一言で表すとすれば、ある種の「危うさ」なのであろう。

2012-05-28 07:05:12
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(5)議論の流れを受けて、自らが何かを発言する際には、まるで綱渡りをしているかのような危ういバランスが生じる。失敗するかもしれない、外すかもしれない。サンデルさんがどのように受け取るかわからない。そんなぎりぎりの心の動き自体に、大きな教育効果がある。

2012-05-28 07:06:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(6)サンデルさんのJusticeの第一回で、サンデルさんが最後に言う非常に印象的な言葉がある。講義の目的は、restlessness of reason(理性の落ち着きのなさ)を受講者の中に引き起こすことであると。前提にしていることを揺るがす。そのプロセスに価値がある。

2012-05-28 07:08:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(7)その、Justiceの第一回の授業で、サンデルさんは学生たちに散々議論をさせた後で、突然、格調の高い英語で魂を震撼させるようなことを言い出すのだった。最後にrestlessness of reasonという言葉が出てくる。議論した後でそのようなコーダで締める。

2012-05-28 07:09:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(8)ソクラテスの方法は、参加者が議論するという意味で、指導者の役割が小さいようにも見える。しかし、そうではない。その気になれば、あれほどまでに高度で、緻密で、感動的な「演説」ができる指導者が、ただ聞き役に徹しているという事実の中に、凄みがあるのだ。

2012-05-28 07:10:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

すじ(9)昨日のNHKの収録の際にも、サンデルさんは私たちを震撼させた。議論してきたテーマについて、あまりにも見事な「演説」を行ったのである。すぐれた指導者が、自分たちの話を聞いていてくれたという事実。ハーバードの教え子は、理性の落ち着きのなさの中に、成長していくのだろう。

2012-05-28 07:12:31
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第608回「すぐれた指導者が、自分たちの話を聞いていてくれたという事実」でした。

2012-05-28 07:13:47