NNNドキュメント’12 「救いなき漂流~ユッケ集団食中毒と被害者~」書き起こし・ほぼ完全版

6月3日深夜に放送されたものを文字起こししています。
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冒頭のVTR

とし @toshihiro36

<ナレーション> 一皿280円の激安ユッケ。店の人気メニューが家族の団欒を引き裂きました。被害者181人、このうち5人の命が奪われました。問われたのは生肉の安全性。店や加工業者の衛生管理と、行政の規制そのものの甘さが浮き彫りになりました。

2012-06-04 13:39:29
とし @toshihiro36

<ナレーション> 遺族の叫びに誰も応えないまま、時間だけが過ぎていきます。

2012-06-04 13:41:45

ここから本編です

とし @toshihiro36

<ナレーション> 富山県小矢部市の前田修一さん。去年4月22日、二男の誕生日祝いに、家族で焼き肉居酒屋えびす砺波店に出かけました。ユッケを食べたのは前田さんと高校生の長男、中学生の二男。異変は3日後に起きました。

2012-06-04 13:48:03
とし @toshihiro36

前田:エビが丸くなるような状態。転げ回るような状態で「痛い痛い痛い痛い」と言って、体をくねらせるような状態が続いてましたね。

2012-06-04 13:51:17
とし @toshihiro36

<ナレーション> 寄せては返す激しい腹痛。子供二人が入院しました。中学生の二男は意識を失い、自発呼吸もできなくなりました。

2012-06-04 13:54:06
とし @toshihiro36

前田:担当医の先生から「脳死(状態)ですよ」と。「なにがあっても、延命措置だけはしてくれ」とお願いしたのが…一生懸命、担当の先生やっていただいて・・・

2012-06-04 13:57:06
とし @toshihiro36

<ナレーション> 検出された腸管出血性大腸菌は、人の体に入ると毒素を出します。腎臓の機能を破壊し、脳症を引き起こすこともあり、最悪の場合死に至ります。富山県を中心に発生した、焼き肉酒家えびすの集団食中毒事件。

2012-06-04 14:02:56
とし @toshihiro36

<ナレーション> 富山・石川・福井・神奈川の6店舗で181人が被害を受け、このうち5人が命を落としました。被害者の食べた共通の料理がユッケです。生の牛肉を刻んで作るこの商品が、腸管出血性大腸菌O-111とO-157に汚染されたまま提供されたと考えられています。

2012-06-04 14:08:54
とし @toshihiro36

<ナレーション> 汚染を防ぐ方法は国が定めていました。肉の表面を削り取るトリミングが、14年前に当時の厚生省が定めたガイドラインによって、生肉を扱う業者の努力義務とされていました。しかし、えびすを経営するフーズフォーラスは・・・

2012-06-04 14:13:03
とし @toshihiro36

フーズ・フォーラス 石野マネージャー(当時):トリミングは業者さんの方でやっていただいてるんですね。店舗内ではやっていないです。

2012-06-04 14:15:56
とし @toshihiro36

<ナレーション> 一方、卸業者の大和屋商店は保健所に対して、「トリミングというのは業者の加工の中に入っていない。加熱用の肉を作っているので、生食用は作っていない」と答えた。店も卸業者もトリミングをしていなかったのです。えびすの肉は生食用ではないという疑惑に対し勘坂社長が反発。

2012-06-04 14:21:47
とし @toshihiro36

勘坂康弘社長(当時):牛肉については、国内と畜場からの生食用の(出荷)実績はありません。これはどういうことかというと…私たちは生食用の肉を使用していませんでした。ただし日本中のすべてのお店で、生食用の牛肉を使用している所は…このデータ上は流通していないので、ありません。

2012-06-04 14:27:46
とし @toshihiro36

<ナレーション> 勘坂社長が明かした事実は、消費者には信じ難いものでした。厚生労働省の統計では、国内に生食用として流通する牛肉はありません。消費者が口にしていたユッケやレバ刺しは、もともと生食用ではなかったのです。警察は業務上過失致死傷の疑いでフーズ・フォーラスの捜査を開始。

2012-06-04 14:32:15
とし @toshihiro36

<ナレーション> 被害が複数の店舗にまたがっていたことから、捜査は卸業者にも及びました。保健所などの調査で患者やえびすの従業員からは、同じO-111が検出されています。しかし患者が食べたユッケ用の肉はすでに店舗に残っておらず、因果関係は立証されていません。

2012-06-04 14:36:09
とし @toshihiro36

<ナレーション> 秋を迎えても、前田さんの二男は病院のベッドで眠り続けていました。ユッケを食べてからちょうど半年が経った10月22日、容体が急変しました。

2012-06-04 14:38:41
とし @toshihiro36

前田:私らが病院に着いた時にはもうびっくりしましたね。今度は尋常じゃないほどの出血があった。すっかりベッドが赤くなったような状態。

2012-06-04 14:41:25
とし @toshihiro36

<ナレーション> 半年間意識がなかった二男は全身をバタつかせ、最後には涙を流し息をひきとりました。

2012-06-04 14:44:14
とし @toshihiro36

前田:最後は本当に大粒の涙で…あの涙が「ありがとう」だったのかなと。「ここまで見守ってくれて、ありがとう」かなと。すぐ「ありがとう」って言う子だったんで。辛かったけど「僕、先に行くね」という思いが伝わってきましたね。

2012-06-04 14:47:46
とし @toshihiro36

<ナレーション> 通学路の桜並木。春と秋に花をつけるこの桜を、ふたたび見ることは叶いませんでした。 

2012-06-04 14:49:51
とし @toshihiro36

<ナレーション> 生肉専用の包丁の使用やトリミングなどを定めた国のガイドライン。指導する立場の富山県は、4人の死者を出したえびす砺波店の立ち入り検査を、開店以来一度もしていませんでした。担当者が店を訪ねたのは、2年間で4回。しかし訪問したのはいずれも午前中でした

2012-06-04 14:56:08
とし @toshihiro36

<ナレーション> 店が開くのは夕方のため人はおらず、検査は実施されなかったのです。事件後に国が行った緊急調査では、ユッケなどを提供する業者のおよそ半数がガイドラインを守っていませんでした。富山県内の違反施設は8割に上りました。

2012-06-04 15:00:02