ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/06

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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ゆりしま @yurishima

照明の落ちた街の空、月だけが輝く。青く白く。目に痛いほど強く。昨日がこれくらい晴れていたなら、月蝕が見えたのに。心なしか空気も冷たくて。夜の闇と月の光がつめたくて。身がすくむ。ひとりで見る月が、こんなに、こわいなんて。あなたといるときは思ったこともなかった。#twnovel

2012-06-06 00:07:14
layback @laybacks

ぼくは死んだ。これで思う存分寝られる。そう思った。ところがどっこい。飼い主はぼくを剥製にしてしまった。おかげで四六時中立ちっぱなし。ガラスの目玉を入れられて、瞬きをすることもできない。ねぇこれを読んでいる君。どうかぼくを殺してくれないか。とにかくぼくは眠いんだ。 #twnovel

2012-06-06 01:32:05
辛島 @karashimab

#twnovel 彼の視線がどうして来たのと言っていた。感情は読み取れない。慈しみか非難か、ただの疑問かも分からない。スーツ姿も相まってまるで知らない人のようだ。さっきまでの気持ちが風船の空気が抜けるみたいにしぼんでいく。本当に、どうして私は、彼に会いに来てしまったんだろう。

2012-06-06 02:46:25
ゼニクエ @zeniqui

#twnovel 「トメィトー」「トゥメィトー」トマト職人の朝は早い。挨拶をしたら、食事の前に玄関を出てその日の湿度を肌で知る。赤色の染料を作るのに湿度は重要な条件だ。食事を終えたら染料を練る。赤クレヨンとケチャップを少々。黒く見えるが「塗ったらちゃんとトメィトーに見える」そうだ

2012-06-06 07:32:13
おこげ @okoge_ver2

満員電車で溺れてる。まるで空気を求める様に、他人と視線が絡まない場所を探して視線を泳がせる。満員電車で怯えてる。これだけ体を密着させながら、見られ無い様に、触れられない様に、話かけられない様に、緊張の殻に閉じ籠る。満員電車で叫んでる。どうか私を降ろさないでと。 #twnovel

2012-06-06 08:04:10
@tofuhamburg

かつてそこには私の生家があった。今は更地になっている。そして新たな家は私の子供たちの生家となるだろう。そんな事を考えていると「もうすぐ出来るからな」と、たまの日曜大工に汗で顔を光らせたご主人が言った。私は一抹の寂しさを振り払うように尻尾を振って「わん」と答えた。 #twnovel

2012-06-06 09:41:18
すなお @Svnao

#twnovel ダメ人間検定を受ける事にした。受かれば認定ダメ人間として胸を張れる。ただ、ネットで受験を申し込むまでは良かったが、思いの外受験料が高い。休日に会場に赴くのも面倒だ。キャンセルするか迷っている内に過ぎた試験日の翌日、封筒が届いた。『合格。貴方は立派なダメ人間です』

2012-06-06 10:31:21
@vonbaum

極めて深刻な状態です。問診を終えカルテに視線を落とした医者は無表情にそう言った。 極度の緊張、それに伴う異常発汗、繰り返す高揚と不安感、赤面症状、慢性的な微熱感に動悸。いずれもこの病気に顕著な症状です。 眼鏡の奥で医者の瞳が鋭く光る。 あなた、恋、してますね。#twnovel

2012-06-06 15:10:26
N.T.Works/凪司工房@短編集『千文字小説百物騙』連日更新中 @nagi_tter

#twnovel 今日子さんは砂時計をひっくり返す。砂が落ち始めると僕の膝にそっと頭を載せて膝枕。「砂が落ちるまでだから、いいでしょ?」たかが三分。彼女の為に我慢しよう。一分。二分。もう直ぐだ。と、彼女の手が砂時計に伸びてそれを反対に。「あなたの時間は私のものなの」と彼女は微笑。

2012-06-06 16:29:47
nohironogi on earth @nohironogi

#twnovel 指名手配犯が逮捕された。手配写真とは別人のように変貌していた。通報者に懸賞金を提供する団体をあずかる私としては、複雑な心境だ。いや、通報者はいたのだ。懸賞金も支払った。通報者は老婦人で、一種の有名人だった。毎日、別な人物を、別な手配犯である、と通報してくるのだ。

2012-06-06 16:33:17
@tofuhamburg

古い手紙を見つけた。渡せなかったラブレター。懐かしむ私に、何かあったのかと夫。「昔の手紙を見つけて」「手紙といえばお前の字、綺麗だったな」実はあれ代筆だったの。本物がこれ。君の字が好きと言うから、結局言えなかった。少女の秘密と共に、手紙を再び引出の奥にしまった。 #twnovel

2012-06-06 17:21:44
wacpre @wacpre

鏡で自分の顔を見る。そろそろこの顔にも飽きてきたので、次の顔に変えるとしよう。雑誌をめくり、最新のパーツを探す。全部まとめて変えるとお得だが、それでも良いパーツは高い。よし、決めた。さっそくビヨーシツの予約をいれる。祖父母によると、この名前だけは昔のままらしい。 #twnovel

2012-06-06 20:42:33
すわぞ @suwazo

#twnovel 天使は地上に降りて人間の青年に姿を変えた。働き先を見つけ野良猫のタロとアパートで同居を始めた。天使の輪っかはタロの首に、羽は羽毛布団の中に。毎日、元天使と元野良猫はその羽毛布団で寄り添って眠る。タロは、いつか彼が空に帰る日が来たら、絶対について行くつもりである。

2012-06-06 20:57:55
高山 環(たかやま かん) @Takuya11

#twnovel また落選した。自分では夢のような作品を書いたつもりなのに評価されない。「あなたの小説、私は好きよ。だけど、まだ人の領域なのよ」彼女が僕に言う。「どういう事?」「評価されるのは人を超越した夢のような小説なのよ。人の夢は儚いわ」

2012-06-06 21:54:58
黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel 無言のまま時間だけが流れた。ドヤ顔戦隊ドヤレンジャーレッドは感じていた。相手がただ者ではないということを。ドロン・ドロンと名乗るその男は、どこかつかみどころがなく、まるで今にも消えてしまいそうだった。レッドがドヤ顔を決めた瞬間、白い煙を巻き上げ、男は姿を消した。

2012-06-06 22:02:57
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel このコ、笑うんだよ。ソファの黒猫を彼女は抱きあげた。「私、死のうとした事があるの。でもこのコが笑うから、やめたんだ」初耳だった。声もない僕に彼女は微笑んだ。お茶いれるね、と黒猫を僕に抱かせる。笑うどころか猫は不機嫌に唸った。キッチンに立つ背が幸せそうだから許す。

2012-06-06 22:19:16
ふじの @fujino0

「好きだったのは左手の薬指の爪の形だった。それに連なる腕や胴体や頭なんかはただの付録で、それでも最初は我慢した。余分な物があっても尊い美しさは変わらないから。だけど左手に包帯を巻いてきた時に、駄目なんだと気付いた。価値の解らない人間に預けてはおけなかった」 #twnovel

2012-06-06 22:27:40
藍 真史 @shin1960

#twnovel 今でこそ言葉はそこいらに安価でふわふわと浮かんでいるが、誰でもいつでも手に入れることができるが、昔は自分で時間をかけて切り出して、慎重に慎重に運んだものだ。ただそれはとても危険な行為で、特に愛してるの言葉を運ぼうとしていくつの命が失われたことか。遠い昔のこと。

2012-06-06 22:44:17
らむの魅威六 @kuromino_jp

「帰りたい」思えばどこでも呟いている。きっと疲れのせいだ。新しい仕事、環境、人間関係、様々な事に慣れない自分。早く休みたいからそう呟くのだ、と思い家路についた。たどり着いた我が家、ドアを開けての一声「帰りたい」私は気づいた。帰りたいのは場所ではなく過去であると。 #twnovel

2012-06-06 22:44:26
紺屋 @ysga1002

本日6/6は兄の日らしい。「というわけで敬え」長男が次男に言う。「俺のおやつの取り分多くしろ」次男は三男へ。「僕をおもちゃ扱いしないでよ」三男はベビーベッドの中で笑う四男へ切実に訴える。「で、あんたたち何がしたいわけ?」長女の冷めた一言で、兄の日は終了を迎えた。 #twnovel

2012-06-06 23:02:42
23時の夢物語 @23novel

#twnovel ごろんと寝転んで、大きな宇宙船の、大きな天窓を眺めている。今日も一日中、運転していて疲れたよ。ゆっくり動いていく星や月を見ていると、ああ、宇宙を移動しているんだなぁってしみじみ思う。地球はえらいよ。人間の作った機械と違って、完全自動操縦なんだから。

2012-06-06 23:21:01