トビゲリ・ヴァーサス・アムニジア #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
2
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼が上から聞かされていたのは、ユカノが由緒あるドラゴンニンジャ・クランの血統である、という事だけ。彼女と怨敵ニンジャスレイヤーとの繋がりを、彼は未だ知らない。シャドウウィーヴにとってこのリアルニンジャは崇拝すべき対象であり、夜と死と竜と破壊と不死と支配と暗黒の象徴であった。 25

2012-06-11 00:51:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リアルニンジャが見る夜は、さぞや穢れなく暗く深く美しいものであろうと、彼は考えたのだ。むろん、ロードの神々しさや亡き師ブラックドラゴンの語った理想に疑いを抱いてはいない。だが位階を登り始めた彼は、ギルド内に存在する政治的駆け引きに気付き、無意識のうちに嫌悪を始めていたのだ。 26

2012-06-11 00:59:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「醜いものでしょう、ガイオンは……人間社会は。腐臭を放つ骸です。吐気がするほど汚くおぞましい、一度焼き払われるべき世界なのです。理想世界のために。……どうか、シツレイでなければ教えてください、貴女の眼から夜はどんな色に見えているのか。人間社会は、どれほど下劣に見えるのかを」 24

2012-06-11 21:09:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼が上から聞かされていたのは、ユカノが由緒あるドラゴンニンジャ・クランの血統である、という事だけ。彼女と怨敵ニンジャスレイヤーとの繋がりを、彼は未だ知らない。シャドウウィーヴにとってこのリアルニンジャは崇拝すべき対象であり、夜と死と竜と破壊と不死と支配と暗黒の象徴であった。 25

2012-06-11 21:10:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リアルニンジャが見る夜は、さぞや穢れなく暗く深く美しいものであろうと、彼は考えたのだ。むろん、ロードの神々しさや亡き師ブラックドラゴンの語った理想に疑いを抱いてはいない。だが位階を登り始めた彼は、ギルド内に存在する政治的駆け引きに気付き、無意識のうちに嫌悪を始めていたのだ。 26

2012-06-11 21:12:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「退屈しのぎに話してあげましょう。社会のことは詳しくありません。物心つく前から、人里離れたドージョーでカラテです。今時の歌も知りません。あなたはどうなのです」レディオを弄りつつ返した。「歌など……低俗な人間に紡がれたものなど何ひとつ、尊敬しておりません」とシャドウウィーヴ。 27

2012-06-11 21:21:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「夜は、貴女にとって夜とは何ですか」とシャドウウィーヴ。「夜はフーリンカザンのひとつ。私はザゼンし、呼吸を整えてそれと一体になり、歩み、駆け、跳躍し、殺すでしょう。……しかし寂しいものでもあります。独りで夜を歩むのは。それがもし際限なく繰り返される夜だとしたら、なおのこと」 28

2012-06-11 21:29:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それは……どういった意味を……」彼は緊張しながら問う。「……風情がありませんね」不意にユカノは、にべもなく言った。「た、大変申し訳ありません」「飽きました。もうフートンに入ります。逃げ出さないよう、そこで見張っていなさい」この青二才の前では、そう振舞うのが得策と思われた。 29

2012-06-11 21:32:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シャドウウィーヴの扱い方はおおよそ解った。気まぐれな、孤城の姫のようにでも振舞っていればいいのだ。精神的優位に立っておけば、後々何か役に立つだろう。ユカノはフートンに入り、作戦を練った。数時間前のユカノとは、明らかにニンジャ存在感が異なっていた。彼女には目的ができたからだ。 30

2012-06-11 21:49:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シャドウウィーヴの名誉のために付け加えるならば、彼はただの豊満さや話術に魅了されたわけでは、断じてない。ニンジャ存在感、アトモスフィアに呑まれたのだ。果たしてこの短時間に何があったのか?幽閉部屋の小窓に舞い降りた大鴉とは何だったのか?……いささか時間を巻き戻らねばなるまい。 31

2012-06-11 22:00:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

暗殺者か?ニンジャソウルの気配を感じ取ると、ユカノは無意識のうちにジュー・ジツを構えて臨戦態勢を取り、小さな格子窓に向き直った。しかしアンブッシュの様子は無い。代わりに、虚無僧笠を被ったその影は、難儀そうな姿勢でアイサツをした。「ドーモ、ユカノ=サン、ジャッジメントです」 33

2012-06-11 22:19:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ジャッジメント=サン。ユカノです」油断の無いアイサツが返る。直後に、虚無僧は押し殺した声でこう続けた。「ちょっと待ってくれよ、ユカノ=サン。まだ終わりじゃないぜ。早まるなよ。俺にはいくつも名前がある……ええとな、ジャッジメント、ディテクティヴ、カラスニンジャ……」 34

2012-06-11 22:31:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュンギュンギュンギュン、とレディオに異常ノイズが混じる。彼の操作する対盗聴装置用違法ジャマーが作動している証拠だ。幸いにも盗聴装置は実際存在しなかったのだが、探偵とはこうしたガジェットに拘りを持つものなのだろう。「……タカギ・ガンドー、そしてニンジャスレイヤーのお友達だ」 35

2012-06-11 22:42:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノはこの不恰好な虚無僧ニンジャの振る舞いに、小さく破顔した。そして、カラスニンジャとは……どこかで聞いた覚えがあるが、思い出せない。いや、それより重要なのは……「ニンジャスレイヤー……生きているんですね?」「ああそうだ。時間が無い。手短に話そうぜ。あんたを助け出したい」 36

2012-06-11 22:55:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今?」「気が早いな、オヒメサマ。アクション映画のようにはいかねえ。厳重すぎる。策が無い。キョート城を調べ始めたばかりでな。だがあんたの場所は解った。また近いうちに来る。だから早まらないでくれよ。あいつが哀しむだろうぜ」「あの人にこそ、早まらないように伝えてください」 37

2012-06-11 23:10:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

僅かな時間で、ユカノとディテクティヴは可能な限りの情報交換を行った。「……敵はあまりに強大です。私は大丈夫です。客人として丁重に扱われています。行動を起こす時までは従順な振りをしていましょう」ユカノはいつしか、イクサの顔になっていた。誇り高きドラゴンニンジャ・クランの顔に。 38

2012-06-11 23:21:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「行動?」ガンドーが聞く。「ザイバツ・シャドーギルドの寝首を掻きましょう」「オイオイオイ、随分物騒なオヒメサマだ。あんたは何もそこまで体を張る必要は……」「あの者どもは、ドラゴンニンジャ・クランの最後の末裔を愚弄しました。理由は十分です。私はドラゴン・ユカノです。戦います」 39

2012-06-11 23:28:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

暫くして。ガンドーと別れ、シャドウウィーヴをあしらい、再びフートンに入ったユカノの顔は、これまでになく晴れ晴れとしていた。イクサだ。城攻めだ。胸が躍った。自分が何者なのかは、徐々に取り戻せばいい。今はドラゴン・ゲンドーソーの孫娘、ドラゴン・ユカノ。それはシンプルで好ましい。 40

2012-06-11 23:42:34