ツイッター小説 『夜中の・ラブレター』

別れて4年。彼との距離は、測れないほど離れてしまった。 自分でも何がしたいかわからない。 ただ、彼に私の居場所を知らせる必要がある。 と、自分勝手に思うのである。 続きを読む
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(S.Fujita) @highdiox

元より彼はコメントに対する返事を滅多にしなかった。それはとても彼らしいと思った。批判的なコメントを消す癖も彼にはあった。自分にとって都合がいい世界を自力で作って一人で守っている。その世界には温度が無いが、温かいと感じることもある。そんな矛盾が魅力だと感じたこともあった(続)

2010-07-06 02:25:03
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/287ty  七夕の日に雨が多いのはきっと、織姫と彦星が会えて嬉し泣きしているんだね。と彼は言った。閃如。私は会えない寂しさで、泣いている派だった。毎年七夕の日に雨が降るとそのことを思い出してちょっと嬉しい。私は今、織姫になりたい(続) #twnovel

2010-07-08 01:40:02
(S.Fujita) @highdiox

引き出しを開けると黄色い財布が出てきた。金運アップの為にと彼からもらった財布だ。はじめは確かに嬉しかったんだけど、黄色い財布は目立って恥ずかしく、財布を出す機会が減り、お金を殆ど使わなくなった。 「ずいぶんと説教臭いのね、あなたは」 (続) http://ow.ly/29ElK

2010-07-11 02:23:44
(S.Fujita) @highdiox

相変わらず彼はblogの中では饒舌だ。選挙にも法律にも喰ってかかる。それに筋道が立っていればいいのだが、感情が先行したアンチ精神での批評を、もう一人の彼が見たらどう思うだろうか。カガミの中の世界なんてない。でも、それに変わりうるものがあるとしたら、なんだろうか。 #twnovel

2010-07-15 02:00:16
(S.Fujita) @highdiox

親?友達?恋人?客観的な自分を育てられていない彼の代わりに注意する人物こそが彼には必要なんだとおもう。そう…感じてしまう自分の感情は、他に説明がつかないほどの親心で、きっとその代わりは“私”と言わんばかりの私の思考回路だ。少し気持ち悪いわ。きっと、さっき食べた酢豚の冷奴のせいね。

2010-07-15 02:05:14
(S.Fujita) @highdiox

いえいえ。食べ物のせいにしちゃダメ。自分の感情はままならない。信じなさい。変える必要が無いわ。…あぁなんて、私の中の人はこんなにも自分に甘いんだろう。カフェモカラテ級の甘さよ。私は口角についたホイップを想像しながら人差し指の腹を加えた。(続) http://ow.ly/2bkIa

2010-07-15 02:10:03
(S.Fujita) @highdiox

彼のblogからまた句読点が消えた。そして、数分後にまたその記事は消えた。これはたぶん、メッセージ。というより警告かもしれない。嫌がらせを受けた後の気まずさを感じる。暗号なんかじゃない。「お前に見せるわけに書いたわけじゃない」と言いたいのだろうか。 #twnovel

2010-07-16 04:30:24
(S.Fujita) @highdiox

思えば私がアクセスする時間帯は2時から4時。更新していないとF5キーを連打して何度も彼にblogの更新を促す。(と彼に捉えられても仕方がない)アクセス解析なんてたぶん彼にはたやすい。それが誰なのかまでは分からないにしても、彼に取っては気分が悪い。一層のこと

2010-07-16 04:35:03
(S.Fujita) @highdiox

IPアドレスを改ざんしようか。…。また悪い癖だ。彼が私に警告を発していると決まったわけではない。気にしないのが一番だ。句読点がない文章は「句読点がない文章」以上の意味はもたない。小説のような伏線なんてないんだ。人生には無駄がつきもの。無駄を無駄と感じられることも立派な人生だ。

2010-07-16 04:40:03
(S.Fujita) @highdiox

外を見ると既に明るかった。昼は歯科助士。夜は派遣。そういったサイクルで私は生きている。私の人生に果たして無駄がないと言えるだろうか。生きている。ただ、生きている。彼氏はもちろん、夢もない。それでも生きている。それじゃあダメなの?お母さん。(続)http://ow.ly/2bTog

2010-07-16 04:45:03
(S.Fujita) @highdiox

ヤマイさん。電話が鳴っているわ。同僚の子が教えてくれた。バッグから取り出して番号を見ると11桁の見慣れない番号が表示されていた。左手が少し震える。鼓動が早くなる。--場号変えたから。これであなたともタダトモよ。久しぶりに母の声を聞いた。家族なのに友達だなんて可笑しいと思った(続)

2010-07-20 01:49:17
(S.Fujita) @highdiox

あの…落としましたよ。少年が私に声をかけた。ビジネス以外で年下に話かけられたのは何年ぶりだろうか。目を合わせるのが怖い。自分が思っているよりも悪く思われるのが嫌だ。少年から栞を急いで受け取り、くるっと半回転して歩き出す。今年で32か。神様はどこで計算ミスを犯したのだろうか。(続)

2010-07-22 01:05:03
(S.Fujita) @highdiox

なるほど4時じゃねーのと彼は呟いた。だけど私は時計を見た。なるほど、確かに4時じゃないの。彼のセカイとこのケータイは確かにつながっている。離れたところで確かにつながっている。珍しい。彼は起きているのだろうか。私は彼に@するかどうか悩んだが、瞼を開けるにはコーヒーが必要だった(続)

2010-07-23 04:00:17
(S.Fujita) @highdiox

「キミ、疲れてるの?」よりによってお客様に言われた。私は笑顔を作ったがもう遅い。一言謝って反省する。最近どうも呼吸が浅い。自分でそれが分かる。帰りの山手線。私は空席を見つけたが座らなかった。年増の女性が優越感に浸りながらそこに座る。私は静かに負けた。窓の向こうで私は笑っていた(続

2010-07-27 01:35:04
(S.Fujita) @highdiox

「ネットストーカー法」。胸が苦しくなって目が覚めた。こんな夢をみるのは熱帯夜だから?意識がはっきりしないまま私は携帯でありもしない法律の事を調べる。やはり夢だった。しばらく彼のblogを忘れたほうがいいのかもしれない(続) http://ow.ly/2hbYQ  #twnovel

2010-07-28 05:50:04
(S.Fujita) @highdiox

忘れると決めれば、忘れられた。ブックマークも削除した。彼の存在は一旦なかったことになる。帰宅したらスグにお風呂に入る。その後は夜風に当たりながら冷えた缶ビールを嗜む。それが今の私の、幸せの全て。ドアの向こうの私はお金を産むだけの躰(続) http://ow.ly/2kVNg

2010-08-05 02:40:02
(S.Fujita) @highdiox

源氏名で呼ばれる方が多い。本当の名前を忘れかけている。厳密に言うと忘れたいと願っている。だからこそ、私はいまもキャバクラの派遣を続けている。32のおばさんに何をそんなに夢中になるのか。と聞いたことがある。適度に熟れている。それがそそる。すごくいい匂いがするんだ。と言う。(続)

2010-08-08 02:45:01
(S.Fujita) @highdiox

左腕にアザがある。どこかにぶつけた訳ではない。自分でつけた跡でもない。そのアザは触ると痛い。触らなければ気がつかない。だからいつの間にか治っているし、またいつの間にか傷がつく。それは模様にも見える。抽象的で、歪な形。…。よくみると♥のようだ。それか私の小さなおしり。(続)

2010-08-10 01:55:03
(S.Fujita) @highdiox

携帯のパケット放題を止めるだけで十分だった。自分をアナログ化することがこんなに簡単だとは思わなかった。この極端な行動の理由は“気分”という感情一番が相応しい。終戦記念日。戦争が終わり、何かが始まった。そういった空気が私を刺激している。(続) http://ow.ly/2pOW1

2010-08-16 01:01:30
(S.Fujita) @highdiox

嫌な予感とは、大抵それが起こってしまってから感じる。いつもつかまらない信号が赤だったり、乗った車両が混雑+受け付けない臭いで充満していたり、毛穴がずっと開いたまんまだったり。大きな地震の前の余震がずっと続くのだ。……私は彼のblogを見ずにはいられなかった。 #twnovel

2010-08-17 01:50:04
(S.Fujita) @highdiox

#twnovel 「本日を持ってすべての更新を停止しますご購読ありがとうございました」そう書かれていた。文末にはメールアドレスが不自然に足されていた。blogの日付は8月13日だった。とりあえず、私はそのメールアドレスにメールを書く事にした。無軽快な@が私の?を増幅させた→

2010-08-18 01:00:13
(S.Fujita) @highdiox

→メールアドレスをそのままblogに載せるなんて素人のやることだって彼が言ったことがある。意味がわからなかったけど、私は頷いた。そんな彼が書いた文章?私が見ているこのblogは誰が書いているの?何度も調べた。何度も。何度も。何度も。自分の部屋のドアをノックするかのように疑い深く→

2010-08-18 01:05:04
(S.Fujita) @highdiox

→ここは私の部屋?本当に?誰が証明するの?そうよ、私よ。私しかいないのよ…。とりあえず、メールね。思い切って聞いてみるわ。何が起きているの?何が起きたというの。今月末で派遣の更新が切れる。そんなこと今はどうでもよかったhttp://togetter.com/li/32031(続)

2010-08-18 01:10:06
(S.Fujita) @highdiox

#twnovel 部屋の明かりを消したまま私はキーボードをたたき続けた。それは音を奏でるように、軽やかで鮮やかに。バックスペースやデリートキーを押す必要がない完璧な演奏だった。約5分間のメロディーは彼に届くのだろうか。見えない不安が私の心をどっと絞めつける。→

2010-08-19 02:00:15
(S.Fujita) @highdiox

→冷えたビールを口につける。一気に飲み干すと今度は1ミリのタールを吸い続ける。寂しいのだ。身体に何かを入れないと、バラバラになりそうで怖い。男のそれでもいいんだけど、いささか面倒な上、そういう整理がつかない。彼から返事は来るのだろうか。電話はずっと前から繋がらない。→

2010-08-19 02:05:07