右手、そして左手。亀のように身を屈め、四つん這いになったきりたんの背中にある二門の「きりたん砲」が陽光を受けて、鈍く輝きます。弾丸は味噌、砲身はきりたんぽ。彼女の成長と共に育ってきたこの武装は、紛うことなき、彼女の身体の一部です。
2012-06-20 20:11:30きりたんは両膝をついて、両手の平をコンクリートに接地。足裏を背中側の壁にくっつけて身を支え、その巨大な砲門を、羽交い締めにされているずん子へと向けました。
2012-06-20 20:11:46ちょっ! きりたん! 私もう正気だから! もうこんなことしないから!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。 それに……そのまま撃ったら、私だけじゃなく姉さままで!
2012-06-20 20:11:59涙ながらに懇願し、身を捩るずん子でしたが――。まるで「ずんだ」をむりやり挿入された言葉たちの霊が力を貸しているかのように、イタコ姉さまは動きません。 ピッ○ロ大魔王のようなずんだ色の肌になってしまった彼女は、ずん子の肩越しに、きりたんとアイコンタクトを交わし――。
2012-06-20 20:12:12――そういえば、最近読んだマンガでは撃つのは緑色の肌の人の方だったなあ、と思い浮かべながら、きりたんは全身に力を籠めました。 「きりたん砲」が周囲の酸素を一斉に吸収し、モーターの駆動音のような低周波を打ち鳴らすと――二門の砲口から、香ばしい味噌の香りが充満してきます。
2012-06-20 20:12:44――ずんねえさま、お仕置きです……!! きりたん砲殺法!! ファイア!! http://t.co/dzgU2q3b
2012-06-20 20:14:31――それは、まるで二つの彗星のようでした。 きりたんぽの穴から打ち出された二つの味噌の塊は、特有の香ばしい香りを尾のように残しながら、一直線にずん子へと向かっていきます。
2012-06-20 20:14:45反動で、きりたんの華奢な身体は壁に叩き付けられます。彼女はまだ発展途上、コントロールがうまくできないのです。背中をしたたかに打ち付けたはずのきりたんは、なぜかをやり遂げたような、恍惚とした表情をしていましたが。 さて、その一方、味噌の弾が向かった二人の方は――。
2012-06-20 20:14:58――味噌。それは、万能調味料。 生の野菜につけても、味噌汁にしても、ラーメンのスープにしても――あらゆる食べ物の味を整えて、「あるべき味」に戻してくれます。
2012-06-20 20:15:38被弾したずん子たちも、みるみるうちにその力の支配下に置かれました。イタコ姉さまの肌は白磁のようなもち肌に戻り、「ズンダモチーフ」は「モチーフ」に戻り、「気ずんだ持ち」は「気持ち」に戻ります。 この分でしたら、大伴家ずんだ持氏の名前も、元通りに戻っていることでしょう。
2012-06-20 20:15:54そう言って、ジト目のきりたんが新聞を差し出してきます。 そこには、『道長のあの句に新解釈!? 「この世をば わが世とぞおもふ ずんだもち月の 欠けたることぞ なしと思へばにゃあ」』という見出しが、デカデカと書かれていました。
2012-06-20 20:17:21