ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/26

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 足が八本と言えば、傘、タコ、蜘蛛、基盤、動き出したピザ。二の三乗。自然界でも産業界でも存在感のある、神秘的で機能的な数字だ。そういうわけで、男は生活のあらゆる場面で八を願掛けに用いた。八月八の日。八つの棘八枚の葉八本の薔薇。八文字の愛の言葉。八文字の別れの言葉。

2012-06-26 00:09:34
4tsubasa @4tsubasa

#twnovel オトコの人が速足で追い越してゆく。昔の君と同じ香水の匂い。あの夏、あの夜、君と並んで真夜中の道を歩いたね。ひと気ない道の街灯を頼りに。わたし、この香りの夜が一生続いけばいいな、って思ったんだ。結局、叶わなかったんだけど。君のあの夜は…どこにつながってたの?

2012-06-26 03:34:21
いらつめ @kanoiratsume

大地を蹴る。身体を伸ばす。浮き上がる。作用反作用の法則。足元にまとわりつく空気を蹴る。身体が前に動く。空を飛ぶなんて簡単なことさ。空気を蹴る。待って。空気を蹴る。手を伸ばす。空気を蹴る。わたしと同じ速度で遠ざかるあれは。空気を蹴る。待って。わたしのたましい。 #twnovel

2012-06-26 04:41:02
あまたす @amatasu

部屋を片付けた。床の上に散乱していた雑誌を片付けると、床に大きなすり鉢状の穴が開いていた。物がその中へ引きずり込まれている。怖くなって部屋を元に戻し、そのまま寝た。その夜、ふと目を覚ますと、ベッドが穴へ落ちるところだった。逃げなきゃ。次の瞬間、視界が暗くなった。 #twnovel

2012-06-26 05:18:43
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

耳掃除が好きだった。しかし現在は一人身で、対象を失い禁断症状に見舞われていた。それがピークに達したある昼下がり、壁にひとつの耳が現れる。私は怖がるどころか喜び勇んで耳垢を取り除いた。すると、次の日からは数が増えた。これは耳フェチな変態が視ている白昼夢なのだろうか。#twnovel

2012-06-26 07:49:28
明宏訊 @aliceizer

#Twnovel 溶岩流はあっという間に麓に達して、そこにある村を一飲みした。それは火の蛇が蛙を呑み込んだように見えた。それは、自然の恐怖、コントロールしえない恐怖だった。むしろ何が起こったのかわからず絶命した人は幸福だった。哀れなのはじわじわと逃げ場を失い焼かれる人たちだった。

2012-06-26 08:03:50
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

#twnovel 友人の革命家が失業した。「ビッグブラザーなんていなかったんだ」「それは良かったじゃないか」「お前の人生は少し窮屈じゃないか?」「そう感じるときもあるね」僕は認める。「僕らの敵は空気だ。その場の空気が僕らの行動を束縛する。見えない相手に革命は起こせないよ」

2012-06-26 08:44:10
カラクレ @9rim_nvl

「あの人を想う心は箱庭」彼女は歌うように言う。「綺麗な箱庭。私が望むように作られた現実のレプリカ。誰にも見せない立ち入らせない蹂躙させなどしない」「誰かが干渉して来たら?」彼女は長い睫毛を伏せて、笑った。「その前に壊して燃やして終いましょう」所詮はレプリカ。 #twnovel

2012-06-26 10:04:16
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 娘が病気に? でも薬が嫌い? なるほど。ぱん! 魔女が両手を合わせて開くと綿飴が現れた。ふわふわと宙に浮いている。ぱん! 再び両手を合わせると真珠の様な小さな玉が現れた。今のを全部父親のあんたがやりな。え? 娘に薬を飲ませたいんだろ? 魔女がニンマリと笑った。

2012-06-26 13:09:28
よしのちほ @chiho_yoshino

真似をしてアイスコーヒーを頼んでみたけど、店内が寒くて飲みきれない。グラスの外についた水滴が流れそうで流れないのを、さっきから見ている。もう何も話すことなんかないし。グラスをなぞって道を作った。涙の代わりに水滴が流れる。泣くもんか。店を出て、角を曲がるまでは。 #twnovel

2012-06-26 14:13:30
夢名 七志 @mumei7c

週刊タイムマシン創刊。速攻で定期購読を申し込んだ。毎週の部品を組むのが楽しみだった。次の週に間に合わないぐらいの手間もかかる。それでも、充実した何百週の期間は時を感じない程だった。最後の起動ボタンを組み込む。押し込んだ途端に白煙に包まれる。鏡を見ると老人が居た。 #twnovel

2012-06-26 16:24:48
@mimimdr

太郎は眠れない。ママと喧嘩して腹が立つから眠れない。羊を数える。1匹、2匹、3匹…羊を数えろと言ったのはママだった。もう数えない。太郎は目を閉じる。荒野に取り残された3匹の羊は、とりあえず刺々しい草を食べてみる。朝、太郎が起きるとママへの怒りはすっかり消えている。#twnovel

2012-06-26 18:35:10
朱瀬 稔 @ayase_type06

#twnovel すずらん、凛と咲く。垂れたこうべを人差し指でちょんとつつくと、朝露がぱちんとはじけた。可愛らしい金魚鉢のようなこうべがゆらゆら揺れる。小さな小さな金魚をこのこうべで飼ってみたい。金魚の朱色がきっと、この純白によく映えるだろうな。りりん。すずらんが可笑しげに笑う。

2012-06-26 18:58:12
すわぞ @suwazo

#twnovel 拍手が聞こえた。振り向く。誰もいない。大波のような拍手が続く。辺りを見回すがやはり誰もいない。拍手はなおも響く。鳴り止まない。僕はぴんと背中をはり、両手を広げ、ついで片手を胸にあて、優雅にお辞儀をしてみた。拍手はさらに大きくなった。誰かが「ブラボー!」と叫んだ。

2012-06-26 19:58:55
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 洗面器や流しなどの配水管を見たことあるでしょうか?S字に曲げられていますよね。そこに水が残ることで悪臭が来るのを防いでいます。だから気を付けて下さい。長いこと家を空けていると水が蒸発して無くなり下水道から『よくないモノ』が這い上がって来てるかもしれませんよ。#百

2012-06-26 20:33:01
橘 颯 @so__w

指先が透明な球を摘み、ぽかりと開いた口に落とす。婦は日の終わりに硝子玉を一つ瓶に入れるのを習慣としていた。一年が詰った瓶は屋根裏部屋に。日増しに増える重量に軋々と天井が軋む音を子守唄に眠る。何時か婦は積み重なった年に圧し潰されるだろう。眠る面は酷く穏やかだった。 #twnovel

2012-06-26 23:27:33
歌種 @PM23564

#twnovel どの国のどんな町でも必ず、目抜き通りの真ん中に店を構えている眼鏡屋がある。大きな町では大々的に、小さな町でもそれなりに『見えなくなる眼鏡』を売っている。苦悩を、絶望を、不都合を、直視しなくて済むように。様々な人間がひっきりなしに店を訪れ、今日も眼鏡はよく売れる。

2012-06-26 23:56:56
かれきハナサカ/てごね#6971 @873k

絵の具売りは虹の根元に棲んでいます。穴を掘って染み出た水から絵の具を作り、毎日せっせとチューブへ詰めて売り歩くのです。子供ぐらいの背丈なのに、不似合いに大きな肩掛けカバンをかけて。でもご存知ですか? 絵の具売りは虹の根元を探した人間の、なれの果てなんです。 #twnovel

2012-06-26 23:59:43