ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/27

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 塔が自重で崩れない理由は単純だ。言語で建造された塔は、常に崩壊している。しかし、同時に再生もしている。外壁から一つの言語が剥がれ落ちるとき、すでにそこには新しい言語が生まれている。そういうわけだ。ちなみに、落下する言語は大気に溶け、神話となって地表に降りそそぐ。

2012-06-27 00:00:40
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 大人になった風船は自力で膨らむことができる。その体内に空気を溜め込むために、もはや人間の呼気を、あるいは人工の圧縮ガスを、必要としないのである。しかし、言うまでもなく、そんな風船に会ったことはない。すべての風船は大人になる前に、子どものまま、破裂するからだろう。

2012-06-27 00:00:54
layback @laybacks

黒い虫が奔流となって私の足元を駆けてゆく。蟻かと思った。目を凝らしてよく見ると文字だった。踏みつけないように歩くのが大変だった。図書館に入ると殆どの本が既に抜け殻になっていた。中身が残っているものも頁を開いた途端に文字が零れ落ちてゆく。まるで砂時計の砂のように。 #twnovel

2012-06-27 01:07:35
birdboiled @birdboiled

#twnovel 電車を降りるといつの間にか雨が降っていた。こんなところに売店があったっけ?そう思いながら改札を出る。知らない景色、降り間違えてしまったようだ。と、「パパ」女の子が傘を持って走ってくる。「迎えにきたよ」娘をもった記憶はないが、悪くない。傘を開き、娘と家路についた。

2012-06-27 01:17:38
七歩 @naholograph

あの葡萄はきっと酸っぱい。葡萄に背を向け狐は丘を駆け下りた。そして再び仲間を連れて、丘を一気に駆け上る。狐の上に狐。狐の上に狐。月明かりに照らされた狐の塔。やがて葡萄に手が届く。#twnovel 数ヶ月後。「酸いも甘いもよい葡萄」狐印ワインは本日解禁。美味しいワインを召し上がれ。

2012-06-27 08:02:11
道尾秀介 @michioshusuke

口に入れようとした蛍烏賊からずるりと抜け出た女は十本の脚で卓上へ飛び跳ね、次の跳躍で排水口の奥に消えた。濡れた黒髪を回して最後に振り返り、小さく嗤った気がした。以来、同じ包装の蛍烏賊を購入して食べ続けているが、女は一向現れてくれない。咽喉の奥の違和感が消えない。戸棚の包丁がない。

2012-06-27 10:15:42
しぃとろん @seatoron

外で干したふかふかの布団が好き。だって、太陽のにおいがするから。これは水素のにおい。これはヘリウムのにおい。そして、いつもわからないにおいが残っている。僕はこの微量な成分を絶対に解明したいんだ…「お母さん、ポチが布団の上でにおいをかいでいるよ」「遊んでいるのね」 #twnovel

2012-06-27 11:13:58
birdboiled @birdboiled

#twnovel 彼女や奥さんの気分圧が一目でわかる!女性気分圧計が発売されました。「急にやってくる八つ当たりを予測したい」「ころころ変わる言葉の裏付けをとりたい」など男性のニーズに答えたものでしたが、「気分圧変化は自分でも感知しづらいので、助かります」女性にも好評のもようです。

2012-06-27 12:08:51
birdboiled @birdboiled

#twnovel 野良猫に仕事のぐちをこぼした。猫は珍しく黙りこみ、低い声でこう言った。「なあ…俺とお前とで、どこか遠くの街へ逃げねえか。なあに、猫カフェでちょいと働きゃ、お前の飯ぐらいは稼げるぜ」わたしは声を詰まらせて、ありがとうと猫を抱きしめた。猫はしっぽをぱたりと動かした。

2012-06-27 12:16:06
塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 彼は苦痛からもっとも離れた顔で踊りまわる狂人の群れを指した。人は人の身と人の時間を超えられない。人がさわる魔法もまた人に足りる願いしか叶えない。過ぎた望みは人の丈に縮小され、頼んでもいないのに発現する。それがあの幸せな夢であり、軽すぎる幻にももちろん代償はある。

2012-06-27 19:40:29
すわぞ @suwazo

#twnovel 王が、王妃に殺される。誰もが女王の即位を予測する。だが王妃は玉座を求めない。むしろ、我こそが我自身が玉座であると宣言する。その腹には子が宿っている。王妃の腹は日々ふくらんでゆく。しかし、いつまでたっても王は生まれない。王妃は、玉座は、小さな王を愛し包みつづける。

2012-06-27 19:56:58
@sakutukixxx

人類とガリガリ君の全面かくれんぼに突入してから、どれだけの歳月が過ぎただろうか。この地球温暖化を乗り切る切り札としてガリガリ君の捕獲は急務である。しかし奴らは数と種類を悟られぬ狡猾さをもって人類を翻弄する。「莓味だと?おのれ、奴らはどこまで進化するというのだ」 #twnovel

2012-06-27 20:03:24
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel やめておきます。俺が書類を出す手を彼は遮った。運動会があった、という。「走る息子を応援するうち、どうでもよくなりました」苦笑いで頭をかく。「何年かして、また頼んじゃうかも知れませんけどね」こんな話もたまにはいい。笑顔で彼を送り、俺は親子鑑定の紙切れを破り捨てた。

2012-06-27 20:52:49
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 氷の円柱の中に閉じこめられていたのは、美しい少女だった。ただ、その腕は六本ある。私が見とれていると、その少女の目が開き、金色に輝いた。…気付いた時には、円柱はもうなくなり、少女の姿も消えていた。「何だったのか…?」そう思ってへたりこむと、後ろから抱きしめられた。

2012-06-27 21:01:35
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

#twnovel 迷わないように病院の廊下には様々な色の線が引かれている。線は各治療室に繋がっている。先へ進むと足元の線が減ってゆく。最後の赤い線が治療室で途切れる。切り離した補助ロケットが宇宙の暗黒に消えて行く寂しさ。僕の前の廊下には何の指標もない。この先にあるのは霊安室だ。

2012-06-27 21:33:28
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 天道虫は餌に不自由していなかった。ある日、外から別の天道虫が飛んできた。「君、飛べるの!?」「逆に何で飛ばないの?」「必要ないから」蔑むような顔で彼は飛んでいった。雌達が憧れの目で見送っていた。腹が立って羽ばたいてみた。もう少し空腹にならないと飛べないみたい。

2012-06-27 22:25:05
日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber(HUB) @hyuugahikage

#twnovel 初夏のさわやかな風が頬に触れる。私は海へいくと灼熱の太陽を浴びながら海水浴を楽しむ。シャワーを浴びる私の肩に桜の花びらが一枚乗った。帰り道は秋らしい涼しい風を受けながら初雪を車越しに愛でる。あらゆる季節の美点を手に入れた日々は楽しくも味気ない。

2012-06-27 22:41:25
篤。 @ishia2011

トイレットペーパーは反撃に出るべきだと思った。いつもこの身をちぎられ尻を拭かされ水洗で流される、この境遇をどうにか改善しなくては。勢いよく立ち上がる円柱の英雄、棚から身を躍らせ床上をころころ転がり、いよいよ反撃開始。やがてトイレから絶叫が響き渡る。「紙がない!」 #twnovel

2012-06-27 22:52:12
雪月 @setugetufuka

買ってきたパックの卵の中に、ひとつだけ鍵穴のついているものがあった。覗いてみると、中でたくさんの魚が泳いでいる。鍵はないし、割るのはもったいなくてそのまま置いておいたら、鍵穴の向こうが濁ってきた。腐ったのかもしれない。捨てようと思って割ったら、中は空っぽだった。 #twnovel

2012-06-27 23:28:01