zero-one

広田修(@osamuhirota)がtwitterで呟いたテキトーなレビュー集。文学・音楽・映画・美術等。保存用です。
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alchemist @allplusnothing

リューベンスは様々な色調で作品を描いているのだが、色調と主題との絡み合いが面白い。例えば、夫婦を緑を基調に描いたり、哲学者を赤を基調に描いたり。色調と主題とが印象面でもつれあい、色調が主題の解釈にまで影響を及ぼしてくる。こうなると、色調もまた一つの主題ではないかとすら思える。

2012-03-05 07:18:04
alchemist @allplusnothing

詩の地平とは、想像や虚構や仮定が、現実と同じだけの権利を主張するために言語という媒体を借りている、そういう地平だと思う。現実存在しないものが、あたかも目の前のリンゴの実と同じだけの実体性と強度と文脈をまとい始め、目の前のリンゴの実と同等の権利を主張し始めるのが詩の地平だと思う。

2012-03-03 17:19:33
alchemist @allplusnothing

クリムトの作品を今一つ消化できないのは、私が性や死というテーマについて気分的に深入りできないからだと思う。テーマへの愛着を十分共有できないので、見つめていても視線は空転するだけだ。その点、彼の風景画は消化できる。自然というテーマへの愛撫については気分的に深入りできるからだ。

2012-03-01 16:15:53
alchemist @allplusnothing

円山応挙の写生は、過剰に豊かな現実の、その過剰さを自らの掌の上に操作可能に収める、そのくびきの様なものだったのではないか。現実が自らを溢れていかないように、自らの支配下に収まるように、こぎれいにまとめる。応挙は写生の度に安堵していたのではないか。これでまた一つ収まった、と。

2012-02-27 16:40:31
alchemist @allplusnothing

田中慎弥「蛹」。生や死や血縁の観念に支配され、それのみのために生きているかのような主人公が、生や死・生殖の彼岸にあるような「蛹」になってしまうというアイロニー。極めて寓意的なのだが、単なる寓話で終わらないだけの、つまり寓意に回収されないだけの作品世界の広がりと詳しさがある。

2012-02-26 11:47:36
alchemist @allplusnothing

曾我蕭白は、その「狂い」を定着させるために、あそこまで執拗にディテールにこだわらなければならなかった。ディテールは対象の猥雑さを際立たせるし、狂ったモチーフの実体感を強めるし、それへの執着自体が一種の狂いになる。あそこまで執拗に狂った絵を描けば、心の中は空っぽだったろうな、と。

2012-02-25 14:58:37
alchemist @allplusnothing

私が詩や小説や美術や映画などを批評するのは、作品と快適な距離を保つため。作品の呼び起こす快感に溺れたり、そこで何らかの神秘化が行われたり、そういうことがアブナイと思うわけです。そこで耽溺することを善しとする人は多いだろうが。作品の余韻が血肉化されたりすることが無いように斬り捨てる

2012-02-24 15:36:22
alchemist @allplusnothing

ルオーは、自己を表現するのでもなく、かといって対象を表現するわけでもなく、いわば、自己によって解釈・誇張・変形された対象を表現しているのだと思う。最終的に表現したいものが自己と対象との交渉そのものなのだ。彼の様式は表現のための様式であって、様式のための様式ではない。

2012-02-23 16:10:49
alchemist @allplusnothing

ボナールの描く裸婦に魅せられている。周囲に充溢する光と呼応するように肢体を反応させている。画家というもの、観賞者というもの、切り取られた世界の事物、それらにけなげに反応している女性の敏感さのようなものがかっちりと描かれている。反応という一種の屈折がとても鋭くそして優しい。

2012-02-20 17:51:20
alchemist @allplusnothing

Psysalia Psysalis Psyche『#7』良かったです。要約すれば、能動的な消極性。俺たちの生きてる世界はことごとくぶっ壊してやる、という意気込み。と同時にその世界とは異質なものの獲得にどこか野心を抱いている印象。ただ、その異質なものがまだ明瞭に見えていない感じ。

2012-02-10 15:33:18
alchemist @allplusnothing

ああ、日本の音楽は何でこんなに湿ってるんだ!君らの潤いを前にして私はむしろ渇いてくるぞ。それに食傷して例えばIL BALLETO DI BRONZO。この乾きを前にして私はむしろ潤ってくる。洋楽はその乾きによって私の際限ない湿り気を呼び出し続ける。洋楽好きの日本人はこの作用が好き

2012-02-08 15:23:23
alchemist @allplusnothing

HELIOS『CAESURA』。とても遠い音たちが、その距離いっぱいに響く。現在から記憶を介さず一気に忘却へと進んでしまう、そのくらい手の届かない音たちだ。聴く者はその聴覚を一気に遠くにまで差し伸べなければならなくなる。そこまでストレッチされた感覚が、どこまでも弛緩していく。

2012-02-03 17:39:31
alchemist @allplusnothing

YOUTHMOVIES『GLYPTOTEK』。ギターにより際限なく繰り出される分断は、その分断の強調によって分断されるものの存在を知らしめる。この分断は存在の強度を強めるための分断であり、そしてそれが繰り返されることで、理念や意志といった存在が絶え間なく湧き出ていることを確証する

2012-02-01 09:36:32
alchemist @allplusnothing

ニールセンといって、ブラームスをもうちょっと大げさにしたような作曲家がいるのだが、この人の交響曲は「感情の筋が通っている」という感じ。理論の筋は余り通っていないしあいまいなのだが、まじめさや情熱の強さに感情の一途さを感じる。漠として移ろいやすい感情に筋などなさそうだが彼にはある。

2012-01-26 17:44:19
alchemist @allplusnothing

これからの詩の流れとしては抒情性からの脱却を希望している。上手な文体に個人的な抒情を込めていくという書き方はもう限界ではないか。それよりも私が希望しているのは科学性や小説性だ。一方で詩の作り方を科学的に分析しそれに則ってあざとく詩を書き、他方で実存性・関係性・社会性を正面から書く

2012-01-24 17:15:06
alchemist @allplusnothing

レンブラントを観ていると、彼の自己や他者への執着・風景の想像力よりも、画作の恍惚のようなものに思いをはせてしまう。テーマを決めて、ほとんど機械的に筆を動かしている彼の、自我も他我もなく、それ故何もかもと薄く混じり合っている、彼の創作の余剰に思いをはせる。対象化よりも融合を目指す愛

2012-01-22 16:38:29
alchemist @allplusnothing

ストラヴィンスキー「火の鳥」。バレエ音楽は表意性が強いのが特徴だと思っている。表意性は、恣意や類似性や因果関係により設定されるが、バレエ音楽で問題になるのは、音楽とダンスとの類似性だ。ところが、これがどのように類似しているのかと問われると途端に答えに窮する。共通感覚では言い足りぬ

2012-01-16 12:19:26
alchemist @allplusnothing

音楽を聴くことで免罪されている気分になる。空虚な時間の空虚さに打たれその空虚の果てに行くことすらせず、空虚さを慰撫することすらせず、空虚な時間を甘美な安らぎに変換することすらしない、そのどっちつかずで空虚ですらない自分の態度が、音楽を聴くことで何か充填され許されるように感じる。

2012-01-12 06:26:36
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