山本七平botまとめ/「アントニーの詐術①」/~「命令」でないが「命令に等しい拘束力」を持つ軍人的断言法(ミリタリー・アセヴェラティヴ・ムード)とは?~

山本七平著『ある異常体験者の偏見』/軍隊語で語る平和論/38頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①前略…ここではまず、なぜ「軍人的断言法」という言葉を造ったかを説明しておこう。 それは「戦犯容疑者収容所」で造ったのだから私にとっては新造語ではない。 外地の戦犯裁判はいろいろな問題を合むが、その一つに「言葉の問題」があった。<『ある異常体験者の偏見』

2014-05-25 13:35:34
山本七平bot @yamamoto7hei

②陸軍は「英語」にも「英語的発想」にも無関係な集団で、士官学校出はほとんどがフランス語、ロシア語、ドイツ語であった。 私は当時の水準で、またその集団の中では英語が出来る方だったわけで、そこでいろいろな相談をうけたわけである。

2014-05-25 13:36:21
山本七平bot @yamamoto7hei

③その中で一番悲惨なのは、 部下は「命令された」と証言し、上官は「命令していない」と証言して対立するケースである。 この場合、まずは必ず部下が負ける。 なぜか。

2014-05-25 13:37:22
山本七平bot @yamamoto7hei

④英語の「命令」「命令法(インペラティヴ・ムード)」「命令口調(コマンデイング・トーン)」…とは全く別な、英語的発想では絶対に命令ではないのに、またどう読んでも絶対に命今ではないのに実際には命令に等しい拘束力をもつ言い方が「軍隊語」にはあったと言う事が大きな理由の一つなのである。

2014-05-25 13:38:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤従ってその「言い方」を見つけ出し、ない知恵をしぼって、それが「命令でなくても命令に等しい」ことを誰にでも納得できるように論証することは、当時の私にとっては「新造語」の作成という言葉の遊戯ではなく、人の命に関わることであった。

2014-05-25 13:40:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥そして私が見つけ出したものが「軍人的断言法(ミリタリー・アセヴェラティヴ・ムード)」であった。 この英語が正しいかどうか知らないが、これを巧みに使えばその者は発令の責任を一切負う事なしに人を拘束でき、時には人を殺す事さえできるのである。 それだけに私にはこの言葉は恐ろしい。

2014-05-25 13:42:20