本来の意味でのmathematician(数学者)とは?

数学道場「懐庵」を設立され、Independent Scholar(独立研究者)として活動されてる森田真生さんのツイートをまとめました。
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森田 真生 @orionis23

Heideggerの"Modern Science, Metaphysics, and Mathematics"を久しぶりに読み返す。

2012-06-19 16:36:30
森田 真生 @orionis23

この論文の中でハイデガーは「数学」は「数学的(the mathematical)」の中の一形式に過ぎないということを明言しています。そして、mathematicsが本質的に「数的(numerical)」なのではなく、逆に数がたまたまmathematicalなものの一例なのだと。

2012-06-19 16:46:09
森田 真生 @orionis23

mathematicsを「数学」と訳してしまった時点で、本来mathematicsという語が内包していた意味の広がりは失われて、数学が文字通り「数についての学」という、"the mathematical"の一つの具体例に過ぎなかったものに回収され、矮小化されてしまったわけです。

2012-06-19 16:52:19
森田 真生 @orionis23

the mathematicalはギリシア語の"ta mathemata"という言葉を起源にもつ。これは「手元にあるものをあらためて掴みとるというかたちで獲得されるところのもの」という意味である。

2012-06-19 23:38:15
森田 真生 @orionis23

だとすれば、本来の意味でのmathematician(数学者)とは、はじめから知っていたことを知ろうとするもの、ということになる。これでは一見すると、内田先生が『他者と死者』の中で書かれていた、西洋の「呪われた独学者」の典型のようである。

2012-06-19 23:38:42
森田 真生 @orionis23

しかし、「手元にあるものを掴みとる」というかたちで知を獲得していくmathematicianとは、見方を変えれば、知るという行為において、常に知られるものと一体化しているような行為者である、と見ることもできるかもしれない。

2012-06-19 23:39:04
森田 真生 @orionis23

既知に取り囲まれた孤独な独学者というのではなく、知るという行為において知られるものとの区別を解消していってしまう、そのような行為者のことを数学者と呼ぶのだとすれば、僕はそのような意味での数学者を志したいと思う。

2012-06-19 23:39:39
森田 真生 @orionis23

「法に精神を統一するためには、当然自分も法になっていなければならない」(岡潔)

2012-06-19 23:39:52
森田 真生 @orionis23

古代ギリシア語のta mathemataは、その他のta physica, ta poiumena, ta chremata, ta pragmataなどから区別される概念として使用されていた。

2012-06-19 23:53:50
森田 真生 @orionis23

例えばta physicaには、おのずからそうであるところのもの、という意味があり、ta poiumenaには、人の手によってつくられたところのもの、という意味がある。

2012-06-19 23:54:24
森田 真生 @orionis23

対象を自分から切り離して理解しようとすれば、その対象はただおのずからそうであるところのもの(=ta physica)となり、一方、対象と一体化して、ミメーシスにおいて対象を感得すれば、その対象はもとから手元にあったもの(=ta mathemata)ということになるのかもしれない。

2012-06-19 23:55:02
森田 真生 @orionis23

そう考えるとmathematicianとは、世界に没入し、対象と一体化しながら、ta physicaをta mathemataへと変えていく魔術師、という気がしてくる。

2012-06-19 23:55:14