【ゾンサバ小説】軍人サークと小さな夢【3日目~4日目】

診断メーカーのゲーム「ゾンビサバイバル」の結果を元に勢いで書いた小説です。 今のところ完全なソロプレイであります。 【前話】1日目~2日目:http://togetter.com/li/330602 【次話】5日目:http://togetter.com/li/333560 続きを読む
2
へっぽこぴーすけ @hpsuke

トラップを外しながら、屋敷の1階に下りてきた時だった。ちらりと視界の隅をよぎった書斎の本棚にサークは違和感を覚えた。昨日探索した時はすでに夕方だったため気が付かなかったのだが、立ち並ぶ本棚のうち、一つだけ、色がわずかに他と違う。サークの脳裏を昨日の手紙がよぎる。 44

2012-07-03 01:01:02
へっぽこぴーすけ @hpsuke

言い知れぬ予感を感じ取ったサークは、怪しい本棚を詳しく調査した。すると、側面の下の隅に小さな四角い切れ目がある。指先で押すと切れ目の部分ががちりと凹み、本棚の固定が外れる音がした。側面の一部がボタンになっていたようだ。 45

2012-07-03 01:02:31
へっぽこぴーすけ @hpsuke

本棚をずらすと、そこには地下へ続く階段があり、奥から明らかな腐臭が漂ってくる。ふと横を見ると電灯のスイッチがあり、押すと裸電球が点灯した。ここだけ自家発電で電力を賄っているらしい。ゆっくり階段を下りていくと、そこには広い個室があった。 46

2012-07-03 01:04:33
へっぽこぴーすけ @hpsuke

机と椅子、ベッド、クローゼット、小型のキッチンに冷蔵庫、バスユニットまである。この空間だけでしばらく生きていけるようにデザインされているようだ。シーツが人の形に膨らみ、強烈な腐臭はそこから漂っている。サークは背後の安全を確認し、椅子を掴んでベッドに投げつけた! 47

2012-07-03 01:06:24
へっぽこぴーすけ @hpsuke

ベッドに寝そべる人型に椅子が直撃!だが反応はない。サークはしばらく用心して身構えていたが、やがて近寄り、シーツを一気にめくった。中には成人男性がうつぶせで倒れている。当然、既に死亡していた。上階の男といい、この館の人間は死んでも何故かゾンビになっていない。サークは黙考した。 48

2012-07-03 01:07:50
へっぽこぴーすけ @hpsuke

ガタン!ふと気を緩めたサークの背後で物音!振り返るが、人影は見えない。だがサークは直感した。クローゼットだ。あのクローゼットの中に誰かがいる。生存者か、ゾンビかはわからない。サークは迷った。無視するか? 49

2012-07-03 01:09:17
へっぽこぴーすけ @hpsuke

だが、昨日見た様々なこと、錯乱した兵士、武器庫の暴徒たちの姿がサークの脳裏をよぎる。つい先日までは平和で無害だった人間たち。ところが彼らは状況の生み出す狂気に飲まれ、完全に己を見失っていた。翻って自分はどうだ?普段なら、こんな時、自分はどういう行動を取る? 50

2012-07-03 01:11:22
へっぽこぴーすけ @hpsuke

サークは決断し、クローゼットに近寄った。中に隠れているものの正体を確かめねばならない。万一にも生存者だった場合、見殺しにしたことになる。取っ手に手をかけ、観音開きの扉を引く。果たして、中には4~5才程度だろうか、小さな男の子が丸くうずくまっていた。 51

2012-07-03 01:12:39
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「大丈夫か」サークが声をかけると、男の子はぴくりと震えた。「化け物はいない。安心していいぞ」男の子はまだうずくまったまま顔を上げようとしない。重ねて言葉をかけようとしてサークは気付く。さっきの男の臭いとは違う、別の腐臭がする!目の前の、この子から! 52

2012-07-03 01:14:31
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「オボォォォ!」男の子が突如として跳ね起き、サークに飛びかかった!顔の肉が溶けている!そして…猛烈な力で身を起こした勢いで、腐った左目が眼窩から飛び出し、サークの肩でべちゃりと弾けた!さらに急激な負荷に耐えられず、男の子の上半身と下半身がぶちぶちと真っ二つに千切れる! 53

2012-07-03 01:16:35
へっぽこぴーすけ @hpsuke

その姿のあまりのおぞましさにサークの反応が遅れる。男の子は大人のような力でサークに掴みかかり、千切れた腰から背骨と内蔵とどす黒い血液を垂らして肩にぶら下がる!サークが我に返った時には、男の子はサークの首筋めがけて噛みつこうと大きく裂けた口を開けたところだった。 54

2012-07-03 01:18:22
へっぽこぴーすけ @hpsuke

サークは咄嗟に首筋をかばい、左腕を差し込む。男の子が勢いよく左腕に噛みつく!が、鋭い痛みを感じたのも束の間、めきめき音を立てて男の子の顎が裂けてゆく。自分の噛み千切る力に顎の強度が耐えきれず、力を込めるほどに筋肉が千切れつつあるのだ。サークは心の底から恐怖した。 55

2012-07-03 01:19:51
へっぽこぴーすけ @hpsuke

やがて男の子の顎は完全に壊れ、口から下がぼとりと床に落ちる。それと同時に肩を掴む力も弱まり、そして…すぐに男の子の上半身は、硬直したサークの目の前で、足元へと崩れ落ちた。男の子のゾンビは何をするでもなく自滅した…のだが、この事件が始まってから、これが一番サークには堪えた。 56

2012-07-03 01:21:21
へっぽこぴーすけ @hpsuke

それからしばらく、サークは動くことができなかった。これまで何十体ものゾンビを葬ってきたが、そのあいだ一度も感じたことのない感情が彼の中を駆け巡っていた。これが今ここで起きていることなのか。ようやく彼は事態の本質を理解する。こんな戦場をサークは知らなかった。 57

2012-07-03 01:23:40
へっぽこぴーすけ @hpsuke

ふと、サークはクローゼットの中に小さなペンダントを見つけた。中には仲睦まじい親子の写真が入っている。これをぎゅっと握りしめながら、彼はここに隠れていたのだろう。そしてそのまま自分もゾンビと化してしまったのだ。サークはペンダントを拾い上げ、少しだけ天に祈りを捧げた。 58

2012-07-03 01:25:20
へっぽこぴーすけ @hpsuke

それから。改めて探索を続けたが、地下室では他に有益な情報が見当たらなかった。サークは階段を上りながら考える。己の為してきたこと。為せなかったこと。そして、これから為すべきこと。思わぬダメージは受けたが、まだ体は動く。動くなら、できることはしなくてはならない。 59

2012-07-03 01:29:05
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「お~い!誰か!いるんスかぁ~!」階段を上りきった瞬間、サークの耳に聞き慣れた声が届いた。あまりに唐突な展開に、一瞬だけ耳を疑うが、すぐに駆け出す。声は玄関の外、門の辺りから聞こえる。「ジョー!お前か~!?」このどこか間の抜けた声は、耳にタコができるほど聞いた声は! 60

2012-07-03 01:30:39
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「おい!ここだ!」玄関の扉を開けると、そいつは目を丸くしてサークを見つめた。そして次の瞬間には、大きく破顔した。「隊長!?隊長じゃないスか!?生きてたんスね!」身を案じていた部下の一人、お調子者のボブは歩み寄るサークに向けて、子供のようにぶんぶんと大きく手を振った。 61

2012-07-03 01:31:57
へっぽこぴーすけ @hpsuke

※1:今回のダメージ-5は精神的なアレということでお願いします ※2:次回、ダイスの結果(同行者枠)とは関係なくボブがくっついてきますが、マスコットみたいな空気的存在だと思って勘弁してください。無口なサーク一人じゃ話が持たなかったんですw

2012-07-03 01:43:12