ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/04

飴玉 @amdm_dm

#twnovel 今夜は満月の筈なのに、重たい空からは雨が降り続いていた。さっきコンビニで貰ったストローを取り出し、墨色の雲へ突き刺してみる。雨雲の欠片がぴちゃり、と落ちてきた後を覗くと、やはり満月はそこにあった。安心してストローを抜く。小さな丸い穴は直ぐに墨色に塞がれていった。

雨音 @candypeal

「食べて良いからね。」生々しい程ぞっとする誘惑が、君の最期の言葉。その身体の欠片を僕の体内に取り入れ、それが僕の血や肉や骨になる。そうしてずっと一緒なんて素敵だな。馬鹿な想像を飲み込むようにそっと、もう息をしない君の痩せた手を甘噛みする。心なしか甘い気がした。 #twnovel

七歩 @naholograph

花火があがる。照らされた君の笑顔。暗闇。花火があがる。藍の袖。隠れた君の手を握る。暗闇。震える指先。君は気づいてる。花火があがる。紅潮する頬は花火のせいじゃないよね。次の暗闇で、きっと僕らキスをする。けれど空にはスターマイン乱れうち。僕ら、空を見上げて暗闇を待つ。#twnovel

浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel 寝床でうとうとしていると、ときどき胴体の断面図が頭に浮かんだ。自分の胴ではないようだった。／何人目かの恋人と抱きあったときに、直観があった。彼女こそ自分の伴侶だと。腰に手を回し強く抱きしめる。腕に絞られて彼女の胴がしなる。今きっと記憶の中の断面図と一致している。

銭喰 @zeniqui

#twnovel 帰途、街灯のみが街を主張する田舎道でリードを引き摺る犬に出会った。「どこの子だ？」懐こく尻尾を振る姿についリードを掴むと突然、犬は走り出した。「おいおい」ぐいぐい引っ張られ、着いた先は一軒の民家。ああ、そうだ。あれは孫の飼い犬だ。お盆の帰り道を、教えてくれたのだ

@kissmint_xxx

ドラゴンとの戦いに疲れて眠り、気が付いたらふかふかの台の上にいた。ああまたか。これはよく見る夢。夢の中で、私は"カイシャイン"という奴で、鉄の馬車に乗って働きに行くのだ。見かけた女の鞄には、長年の宿敵ドラゴンが、可愛い顔をしてぶら下がっている。この女、強いな…… #twnovel

七歩 @naholograph

便所飯は寂しい。そこで生まれた「トイレの友達」は流行した。花子さんや貞子さんを召喚できるシステムだ。昼時のトイレは人で溢れた。自分の霊と昼食を楽しむ。みんな一緒に楽しめるようにと大部屋トイレも作られた。賑わうトイレ。そのためぼっちは教室で、1人優雅に食事する。 #twnovel

ナコ@文学フリマ東京Q-01 @nakotic

僕たち、もう別れよう、とぐりが言った。ぐらは無言で頷く。よく似た二人。仲良しで、いつも一緒だった。大きな卵でカステラを作ったの、おいしかったね。うん、すごく楽しかったね。ぐり、ぐら、ぐり、ぐら。ぐり、ぐり。ぐら、ぐら。さようなら、ぐり。元気でね、ぐら。　#twnovel

すなお @Svnao

#twnovel 恋の魔法は解けてしまった。いつまでも戯れ合う恋人の暮らしではいられない。付き合い始めた頃はこんな日が来ることを想像だにせず、ただ無心で好きだった。夢のように輝いていた恋の魔法は解けてしまった。左手を翳すと、きらりと控えめに光る物がある。明日から私達は夫婦になる。

木菟みるく @golddaybreak

古本屋の爺さんは頑固者。その者に相応しくないと判断した本は売ってくれない。「これ下さい～」「小僧にはまだ早い。こっちの絵本にせい」ただしお勧めのセンスは抜群。爺さんはいつだって相手にぴったりの本を乱暴に押し付け、仏頂面で「さっさと金を払え」と言うのだった。 #twnovel

木菟みるく @golddaybreak

奥に奥にとどんどん進んで行っても、まだまだ続く本棚、本棚、本棚。終わりの見えなさにゾッとして、慌てて引き返した。「お嬢ちゃん、欲しい本は見つかったかい？」レジのお兄さんがニヤリと笑う。私はぶんぶんと首を降った。「そうか残念。大きくなったら、またおいで」 #twnovel

K @kei1008

「今夜1人で森へおいで」絆創膏だらけの僕に魔女が言う。親に黙って行くのは悪いと思ったが強くなりたかった。いつもは怖い森が今日は不思議と怖くない。満月がとても明るかったから。魔女に会って笑った瞬間、僕は自分の部屋。「その勇気があればもう大丈夫」遠くで声がした。#twnovel

Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel あさがおの種を蒔いた。芽が出てつるが伸び蕾が膨らんだ翌朝、そこに尻尾が垂れ下がっていた。朝が尾は昼に胴体が現れ、満月の晩にするりと頭が抜け出た。「にゃあ」一声だけ残し、そいつは隣家の屋根に飛び移ってどこかへ行ってしまった。観察帳を前に、いま僕は途方に暮れている。

@sakutukixxx

その鏡には、月の魔力が封じられている。あやかしに向ければ正体を映し、人に向ければその内に封じるという。「その魔鏡が何でここにあるんです？」「だって、普通の鏡じゃ割れてしまうのだもの」その妖力が強すぎる主は、鏡を覗いて満足げに薬指で紅をひいた。 #twnovel #あやかし草紙

ゆう @yukiririkiriri

#twnovel 店を出ようとすると、どこからか懐かしい歌声が聞こえてきた。包み込まれるような女性の声。子守歌？見れば、箱が僅かに開いている。あ！と思った時には私は箱を開けていた 。……「どなたですか？」遠い日に失った最愛の母の記憶と引換えに私が失ったもの。隣の男が思い出せない。

日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber（HUB） @hyuugahikage

#twnovel 雨の日はパーティの合図。雨音に合わせてステップ、ターン、ダンス。強まる雨音に足さばきを速め、豪雨の中で情熱的に踊る。そしてラストダンスはしとしと降る中優雅に舞い、最後のポーズを決めた瞬間雨は止んだ。それを見ててるてる坊主は安堵すると外されるまでの眠りについた。

蒼山れい @aoimokuba

夏祭からの帰り道、彼女が突然泳ぎたいと言い出した。深夜の母校に侵入し、真っ暗なプールに辿り着く。彼女は浴衣のまま水中へ飛び込むと、慌てる僕を笑いながら引きずり落とした。乳白色の浴衣と赤い帯が解け、金魚の尾鰭のように漂う。誰にも言えない秘密ができた、最後の夏の夜。　#twnovel

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 不老不死の錠剤を手に入れ、ふたりで割って飲んだ。僕は彼女を見つめる。悠久の時を経ても、愛しい笑顔は不変だった。「今日もきれいだ」死して、なお。薬の効果は分かれてしまった。不老と不死。若く美しいまま僕に微笑み、彼女は静かに逝った。老いはてた手で慈しむ。永劫の愛を。

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 病院に人形を処方された。これを使って人と話せ、という。確かに人形に代弁させると言いたいことが言えた。そうやって彼女にプロポーズした。彼女は承諾した。「人形の交換を」教会で彼女に人形を渡した。人形は彼女と新婚旅行に旅立った。僕を残して。

茶屋 @chayakyu

「兎角とはどんな形はしているのかな」と彼はいう。「はい？」「だって四角が四角なら、三角は三角で、兎角だって兎角って形があるべきだろ？」わたしは「それは形を現す言葉ではなくて」というのだが「そうでもあっても兎角って形はあるべきなんだよ」と彼はいう。厄介な男である。　#twnovel

@kissmint_xxx

ビルの周りに人集りができていた。何事かと見ていると、屋上にいた男が、ふっと飛び降りた。ひねりを加えつつ三回転。最後は美しい流線形の姿勢をとり、アスファルトの地面へ…どぶん。周りからは拍手喝采が起こり、涙する人も見えた。この素晴らしい評価を、彼が知ることはない。 #twnovel

Shinichi Sugiyama @chez_sugi

その花から微かな唸る音が聞こえるのは、蕾の中にハチが閉じ込められているからだ。それは求愛の花。贈られた者は、直ちに火にくべるか、水をやる。水を与えると花は開き、ハチが贈り手の元に戻る。それで贈り手は望みが受け入れられたことを知る。これを虫の知らせと呼ぶ。 #twnovel

miecha @miechorz

#twnovel 壁に寄りかかる僕の傍に腕が生えて、壁の中に引きずり込まれた。そこには同様に引きずり込まれ、二次元になってしまった人が居た。二次元の人は気さくだが薄っぺらい、暖かみもない。厚みや温もりが恋しいと思ったその時、壁の向こう側に人影が。触れたくなって……手を、伸ばした。

夢名 七志 @mumei7c

ついっと、景色を捲り上げてあっちに行ってしまう人がいる。ただ通り過ぎるだけの私と何が違うんだろう。その場で地面を撫ぜても区切りも無く、腕を振り回しても僅かな風が纏わり付くだけ。誰が次に行く人なのか解らず、焦点の定まらない憧れの視線を泳がせる。軽く捲るだけなのに。 #twnovel

シンイチVR2 @shinichikudoh

政治不信の解決策として導入された「性事選挙制度」により、投票は「直接民主性交」により行われることとなった。なお有権者の性別は問わない。ベテランの高齢議員は体力的な問題から引退を余儀なくされ、代わりに増えた若手議員は夜な夜な有権者を誘惑する。清くない一票を求めて。 #twnovel