ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/05

くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 私は無価値な人間なのでこのまま死にます。男が森の中で倒れている。魔女が嘆息した。…ほら、あんたの骨を全て翡翠に変えてやったよ。魔除けの力で商売を始めるのも、骨を売って贅沢するのもあんたの自由だ。ただ翡翠泥棒に命を狙われるから気を付けな。魔女がニンマリ笑った。

雪月 @setugetufuka

別に誰かの為に咲いていたわけではなかった。でもあなたに綺麗だと言われて嬉しかった。あなたは私を手折り、家に連れ帰った。薄暗い窓辺で味気ない水を吸い上げる毎日。あなたはもう私を見ない。意識も朦朧としてくる。お願い、もう一度私を綺麗だと言って。はらりと花弁が落ちた。 #twnovel

@flskepticism

サーキュレーターに向けてため息を吐くと部屋中が切ない空気に包まれる、というような詩的な物件にわたしは住んでいないけど、そうわかっているからといって、その手の妄想から逃れられるわけではない。上を向いているのはそういったわけで、それ以外では断じてない。あと首が痛い。 #twnovel

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 女は毎晩、街角に出て、手相を見る。掌に記された宝の地図を読む。宝を発見できるかは当人次第。「何で自分の宝を探しにいかない？」と訊いた客もいた。「誰かが宝を見つけた時の嬉しそうな顔が私の宝物」女は、そう答える。真っ白な自分の掌を隠して。

すわぞ @suwazo

#twnovel 暖簾に腕押しをしてみたら手応えがあった。柔らかな粘土に手を突っ込んだようなぐにゃりとした感触、人肌程度の生あたたかさ、ねばつき。腕を戻そうとしたが引っこ抜けない。全身がガクガクと震えだす。暖簾も震える。震える暖簾の向こう側に、こちらを伺う幾つもの眼が垣間見える。

あまね @gyakumei

「僕と付き合うからには、僕の許可した本以外は読んじゃダメだ。きみにはずっと綺麗な心のままでいて欲しいんだ」「わたしのことをそんな風に思ってくれるなんて嬉しい！」以来彼女は部屋からでてきてくれない。「ダメよドアを開けちゃ！ 汚れるわ……ねえ、本持ってきてくれた？」 #twnovel

いちか( ơ ᴗ ơ )ママ @Kino_takimi

#twnovel ボタンを掛け違えたり、昼食を準備してこなかったり。僕は毎日、なんらかの「ミス」を犯すことにしている。「わたし3月には卒業しちゃうんだからね。いつまでも甘えてないの」…あと8ヶ月。僕はボタンを掛け直してもらいながら、自立という言葉を忘れようと努めた。

リオ @urufffayn

それは、満月の夜だけの挨拶。ひと仕事終わった夜、手や腕で丸を作る。指で○を空書きする人や、くるんと回る人もいる。これは特別な挨拶。不思議と疲れが和らぎ、しんしんとした光に心が落ちつく。「 おつきさま。」「おつきさま、またあした。」#twnovel

あかね @akane2003

冷たい国から流された氷の上でお母ちゃんと二人。拾った傘も役立たずで氷も溶けてきたけどお母ちゃんは「大丈夫」って笑うので、「氷がなくなったら泳げばいいよね」ってぼくも笑った。お母ちゃんはビックリした顔してから「そうだね」って抱きしめてくれた。大好きお母ちゃん。 #twnovel

ショウ @SHO_Y

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだーれ？」「それは鏡に映るあなたです」「それは私じゃなくて鏡の中の私？」「そう、あなたは鏡の中のあなたの次に美しい」鏡の中の私が口の端をつり上げる。「もう、ちゃんとやってよお姉様」「ふふっ」暇を持て余した、双子のお嬢様の遊び。 #twnovel

原 沙良葉 @harasaraha

こちらに帰ってくる君に、メールを送った。『何時にこっちに着きそう？』『午後４時』『４時か。土曜日だよね？』『そうだよ』『浴衣どこにやったかな』『浴衣？』毎年地元であるお祭りの日。これだけヒント出してあげたんだから、早く思い出して誘って下さい。　#twnovel

碧 @mimimdr

僕はエウロパで生まれた最初の子だ。新たな星の希望として両親や周囲の大人らに祝福され、大事にされて育った。朝日が昇る、エウロパの6時。隣にいる彼女の時計が12時を指した。地球は今正午なのね、と愛しげに時計に触れる。懐かしむべき故郷のある彼女の横顔に僕は何も言えない。#twnovel

アザラシは隠しキャラ @azarashidayou

「そこは昔、墓地だったそうです」そう言って私は、最後に残っていた百本目のロウソクを吹き消した。「これ」をするとどうなるのだろう？ずぅっと気になっていたのだ。しばらく待っていると幽霊が現れてこう言った―「百回も同じ話するな！」実験成功。幽霊だってイライラするのだ。 #twnovel

Toki Minami @tttxoxoxokkkiii

【女と月】潮がひいて、砂山が静かに崩れ落ちていく。フルムーンから開放される時、女は辛くも爽快感に満たされる。欠けゆく月も愛しくて、ニュームーンが待ち遠しい。満ちたり欠けたり、サイクルは淀みなく、一点の曇りもない。満ち引きは宇宙の仕業。女と月はいつもいつでも忙しい。#twnovel