アートシーン(2012年下半期)

2012年7月からの、展覧会その他美術に関するツイストを集約。
0
sjo k. @sjo_k

東京都写真美術館の「光の造形」、川内倫子展、世界報道写真展2012と、国立新美術館の「具体」展へ。報道写真展では「持ち切れず、持っていく先も分からず、仕方ないので飲み下したら、薄められつつ体中に回ってじわじわ堪えつづける感情」に襲われる羽目に。毎年恒例と言えばそうなのだが。

2012-07-07 17:30:09
sjo k. @sjo_k

川内倫子展。沁み入るように心動かされた。作家は、多くの人が見過ごしてしまう、日常に満ちる光(それはとりもなおさず、その光が我々に知覚させる色、そして、その光が及ばぬ部分である影)の「かけがえのなさ」を見出し、それをそっと掬い上げて提示することにかけて第一級の人だ、と感じた。

2012-07-07 17:30:23
sjo k. @sjo_k

「光の造形」展。ジェリー・ユルズマンのフォトモンタージュによる表現に惹かれる。同じようなものが絵に描かれていたら「退屈なシュルレアリスム」で片付けてしまいそうな作品。写真表現の「必実在性」に起因する「現実性」の力が「超「現実性」」を活かし、私を引き付けたのではないか。

2012-07-07 17:30:37
sjo k. @sjo_k

一方、同展に複数出されていたいわゆるコラージュの作品にはまったく惹かれない。これは、「切り貼り」という行為が写真の「現実性」を殺し、結果、作品を「退屈なシュルレアリスム」にとどめてしまっていたからだろう。そんなコラージュの作品群中でも、後藤敬一郎「最後の審判図」だけは鮮烈だった。

2012-07-07 17:30:52
sjo k. @sjo_k

国立新美術館の「具体」展。最初の方に、「この上を歩いて下さい」という箱型の作品があったのだが、その紹介プレートの横に「お手をふれないでください」と書いてあり、思わず噴き出した。よっぽど、作品の上を平然と歩き、見張りに注意されたら「いや、手は触れてませんよ」と言おうかと思った(笑

2012-07-07 17:32:20
sjo k. @sjo_k

「この上を歩いて下さい」は、初出時にはちゃんと歩けたようだ。こういう「前衛」的な作品を、厳めしい雰囲気で「護る」のは、なんというか、滑稽である。展覧会は結局、白髪一雄(大型3枚。絶句した)と田中敦子(先の東京都現代の個展に未出の作品も)の素晴らしさを再確認するためのものとなった。

2012-07-07 17:32:45
sjo k. @sjo_k

世田谷美術館の「村山知義の宇宙」へ。村山は、たぶん、めちゃくちゃ面白い人なのだが、その魅力がほとんど伝わってこなかった。それはきっと、この人が<非/超美術館的作家>だったからなのだ、と思った。「アート」に対する「美術館」という制度/しくみの包容力は、意外と弱々しいものなのだ。

2012-07-16 15:56:41
sjo k. @sjo_k

千葉県立美術館の「光のアート」へ。とにかく「楽しい」展覧会だった。深く考えさせられるとか、何かを問われるとか、そういうのはまったくなくって、ひたすら楽しい。一人で行くのもいいけど、(少し)羽目を外せる、大切な人(「童心」を持っていればいるほどよい)と一緒に行くのがよいと思います。

2012-07-21 19:46:01
sjo k. @sjo_k

息子が気に入ったのは、プラプラックス「イシムシの標本」、アトリエオモヤ「光であそぶ」、浅野耕平 「Garden」、森脇裕之「Lake Awareness」。<子供大人>の私が気に入ったのは、クワクボリョウタ「十番目の感傷(点・線・面)」、そがあやの「Sound Round」。

2012-07-21 19:55:46
sjo k. @sjo_k

息子と岡本太郎記念館へ。幸いにも人が少なく、壁のこいのぼりを見て「うちにもある!」と叫び、岡本作のカーペットの上を「めいろみたいだねー」と歩き回り、これも岡本作の立方体のイスを整列させるなど、わりと<やりたい放題>。そして「もういく!」とあっさり退館。まあ、こんなものでしょう。

2012-07-22 20:07:45
sjo k. @sjo_k

記念館二階の展示は「岡本太郎・布と遊ぶ」。上述のカーペットやこいのぼりのほか、ネクタイ、着物、帯などなど、「あまりにも岡本的」で、愉快な作品が見られる、小ぶりながら好企画。いちおう平均的な人よりは岡本に興味を持ち続けてきたと思う私も未見の作品が多く、その意味でも楽しめた。

2012-07-22 20:09:27
sjo k. @sjo_k

森美術館の「アラブ・エクスプレス」へ。出展作は「オーソドックスな現代美術」ばかりで、目の覚めるような斬新さはない。だが、息をつかせず様々な表現が次々に耳目に飛び込んでくるので、決して退屈ではない。(たとえば、同じ森で去年やった「フレンチウィンドウ」よりは、よほど面白かった)

2012-07-27 17:27:18
sjo k. @sjo_k

一番印象的だったのは、マハ・ムスタファ「ブラック・ファウンテン」。タイトルの通り、黒い水の噴水。去年、金沢21世紀で見た田中信行を想起した。動的で不安定な黒の噴水と、静的で安定した田中の漆の立体は一見正反対なのだが、直感的に捕らわれ、長時間見詰めた果てに「美」を見いだす点で共通。

2012-07-27 17:33:02
sjo k. @sjo_k

サーディク・クワイシュ・アル・フラージー「私の父が建てた家(昔むかし)」も印象的だった。作家の幼少時代を断想的に表現する、描かれては消され、消されては描かれる儚いモノトーンのアニメーション。弦とピアノのシンプルで美しいBGMが、視覚的イメージを増幅させる。これもまた端的な「美」。

2012-07-27 17:39:23
sjo k. @sjo_k

ハラーイル・サルキシアン「処刑広場」。シリアの3都市の明け方を撮った写真群。タイトルの通り、写るのはかつてそこで公開処刑が行われた広場。しかし私は、その主題とは離れ、遠い街に建つ建物のたくさんの窓(の向こうに予感される、見知らぬ人々の生)を前にした「抱え切れなさ」に立ち竦んだ。

2012-07-27 17:47:11
sjo k. @sjo_k

横浜美術館の奈良美智展へも。奈良美智というのは、これまで自分の中でうまく位置づけられない作家だったのだが、今日、彼の多量の作品に巻き込まれながら、なんとなく<分かった>。私にとって彼は、「アルバムが出ればまあ買うくらいには好きなポップスター」、だ。それ以上でもそれ以下でもない。

2012-07-27 17:51:18
sjo k. @sjo_k

なんだかひねくれた物言いになってしまったが、私はやはり奈良の描く絵が好きだ。好きか嫌いかと言われたら間違いなく好きだ。←また話を面倒にする それにしても館内の女子率の高さ。特に、喜んで見る小学生くらいの女の子が多いのが印象的だった。奈良がアートへの入口になるのなら、素敵なことだ。

2012-07-27 17:55:48
sjo k. @sjo_k

横浜の常設展では、まず河野道勢の自画像に強く引き付けられる。こういう「昔ながらの洋画」になぜ?…と思って見ているうちに、気付いた。自分に似ていて、その薄気味悪さに惹かれたのだ。その他、石原友明の絵と、秋山庄太郎の加賀まりこ(金髪!)を写した1965年の写真が印象的だった。

2012-07-27 18:00:53
sjo k. @sjo_k

多摩美大美術館の「コドモノクニへようこそ」へ。基本的に雑誌『コドモノクニ』がずらっと並ぶだけの展示だが、なかなか楽しめた。小学生のころ、月刊『たくさんのふしぎ』を定期購読させてもらっていたのを思い出す。息子がもう少し大きくなったら、何か雑誌をとってやりたいが、何がいいだろうか。

2012-07-28 17:45:47
sjo k. @sjo_k

練馬区立美術館の船田玉樹展へ。国立近代の「日本画の前衛」でも宣材に使われた「花の夕」は、作家26歳の作品と知る。この頃、船田は積極的にアヴァンギャルドたろうとしていたようだ。だが歳を重ねるにつれ、彼は保守的になっていったように見えた。「花の夕」と、70代で書いた梅の彩度の落差。

2012-08-03 19:51:28
sjo k. @sjo_k

船田は、広島に帰郷してアヴァンギャルドたることを放棄した後、鮮烈な色彩を打ち出すことを基本的にやめてしまう。しかし、彼が持っていたに違いない、色彩に対する強い感受性が、時折、小型の作品に噴出する。それが何とも言えず印象深かった。(以上、展覧会から得られた限りの情報を元に書いた)

2012-08-03 19:52:10
sjo k. @sjo_k

息子とサントリー美術館の「おもしろびじゅつワンダーランド」へ。息子はあまり面白がらなかった。対象年齢がやや高いこともあるかもしれないが、正直なところ、「子供だまし」感がちょっとあったかもしれない。各美術館が夏季に取り組む<子供向け企画>だが、これこそ難しいんだろうな、と思った。

2012-08-12 17:47:39
sjo k. @sjo_k

NTT ICCの「ひかり・くうかん じっけんしつ」と「オープンスペース2012」へ。オープンスペースでは、白い壁面に投射される自分の影と、同じ壁面にプログラムで現れる影(波、窓、鳥など)が相互作用する、シルパ・グプタ「無題(シャドウ#2)」が面白かった。

2012-08-25 13:58:54
sjo k. @sjo_k

「ひかり・くうかん」は、千葉県立の「光のアート」にも出品していたクワクボリョウタのユニット、パーフェクトロンによる展覧会。千葉でも展示されていた「10番目の感傷」をベースにした<光と影の汽車>の装置に、なんと自分たちで物を置いて遊べる、という趣向の部屋があって、息子も親も大喜び。

2012-08-25 13:59:25
sjo k. @sjo_k

水戸芸術館の「水戸岡鋭治の鉄道デザイン展」へ。水戸岡ファンなら間違いなく大満足の内容。なんというか、個々の具体的な作品や展示品を見る/体験することで楽しむ、というよりも、水戸岡の手がけたものだけが集められた「空間」全体(の居心地の良さ)に心満たされる、という感覚だった。

2012-08-26 22:42:46
1 ・・ 4 次へ