世界樹日記第１話「踊り子→冒険者」

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【世界樹日記：1-1】 第1話「踊り子→冒険者」 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-2】 働かなくては飯は食えない。そして彼ら…『劇団シュクラ』は旅の踊り子の一団であり、踊ることを生業とする者たちである。したがって辺境の街『タルシス』へと彼らがやってきたのも当然ながら踊りの仕事を探しての事である。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-3】 そんな彼らが街に到着して真っ先に『踊る孔雀亭』なる酒場を訪れたのも極めて自然な成り行きというものだろう。いささか荒っぽそうな客が多いのは気になるが店内には”いかにも”なステージまであるのだ。これは期待できそうだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-4】 店内を一通り見まわしてみるが店員と思しき人物が見当たらない。奥の調理場にいるのだろうか？客でもないのに席に着くのはいささか気が引けたので入口付近に他のメンバーを残してリーダー格のシヴァがカウンターまで進み、奥へ向かって声をかける。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-5】 ほどなくして店の奥から店主らしき女性が出てきた。「…サティさんよりデカい！」思わずそう呟いたサヴィトリは次の瞬間短い悲鳴を上げてうずくまった。両サイドから鋭い脛蹴りを食らわされたからだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-6】 鋭いキックの主はシュクラのメンバーで双子のヌリッタとアビナヤである。「「でりかしーの無い奴は死ね！」」理不尽な暴力と暴言にサヴィトリは怒声をあげて抗議しようとするが同じくシュクラのメンバーのサティになだめられ不満そうに口を閉じた。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-7】 仲間たちのコントじみたやり取りを尻目にシヴァは店主と交渉を続けていたが、しばらくすると入口の方を振り返り手招きしてメンバーを呼び寄せた。だがその表情からするとどうやら色よい返事がもらえたわけではないようだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-8】 この店は店主の女性が一人で切り盛りしており、残念ながら人を雇って給料を払うほどの余裕はないのだという。その代り…というわけでもないが長旅の労をねぎらって昼食を奢ると申し出てくれたのだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-9】 「サービスは今回だけだからね？」そう言ってイタズラっぽく笑いながら店主は次々と料理の皿を運んでくる。牛や鳥の肉がふんだんに使われていてどの料理もボリューム満点だ！シュクラの面々は店主の厚意に感謝しつつ久々の豪華な昼食に舌鼓を打った。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-10】 あらかた料理を平らげて「さて、結局仕事はどうしようか？」「そんな話は明日にして今日は気分よく休もうぜ」などと雑談をし始めたころ、サティが店の片隅に置かれた一枚のコルクボードに気が付いた。「クエストボード？」 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-11】 「あぁ、それかい？」そう言って店主は説明を始めた。街の人間が冒険者への依頼を紙に書いてそこに貼っていくのだそうで達成すればきちんと報酬も出るという。そこまで説明した後、少し考えてから店主はこう言った「そうだ！アンタ達冒険者やりなよ！」 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-12】 突然の提案に劇団シュクラの面々は戸惑いを隠せない。冒険者というと洞窟や迷宮に潜って宝物を持ち帰り、それを売りさばいて生計を立てるあの野蛮な連中の事なのだろう。サヴィトリなどは露骨に嫌そうな顔をしている。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-13】 「あはは！そんなに驚かなくてもいいじゃないかい？」と店主。しかし自分たちは単なる踊り子である。時には魔物と戦わなければならないような荒っぽい仕事が務まるとは到底思えない。店主が気分を悪くしないよう、言葉を選んで反論を試みた。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-14】 だが魔物と戦うことに関してはそれほど心配しなくてもいいのだと店主はいう。驚いたことに自分たちの踊りはそのまま戦いの技術（スキル）として転用できるというのだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-15】 店主曰く、ワルツには傷を癒す効果が、タンゴには味方の戦闘力を引き上げる効果が、そしてサンバは変幻自在の攻撃の技として利用できるらしい。ちなみにシヴァの得意な扇の舞はというと「ま、まぁちょっとぐらい攻撃を躱しやすくなったりする…かな？」 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-16】 サヴィトリは渋っているが双子はすっかり乗り気になって目を輝かせているし…それに所持金も残りわずかで仕事も無いとなればそもそも選択の余地は無いのだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-17】 店主に何度もお礼を言った後、嫌がるサヴィトリを引きずって劇団シュクラは出発した。冒険者として活動するにはまず冒険者ギルドというところで正式に登録してもらわなければならないらしい。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-18】 「劇団？…うーんウチはサーカスとかじゃないんだが」ギルド長はちょっと困ったような顔をしている。ギルドとして登録するにあたって何か新しい名前を考えようという案もあったが、愛着もあるし結局そのままで行こうという事になったのだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-19】 「いやいや、だからって『劇団』まで残さなくてもよかったんじゃねーの？」とサヴィトリは言うがシヴァの方は「あはは～そうかな～？ごめんね～」などと至ってマイペースである。いずれにせよもう申請は通ってしまったのだ。時既に遅しである。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-20】 「一応登録はしておいたが…お前ら色々大丈夫なのか？武器とかまともに使ったことあるのか？編成もダンサーだけってのはちょっと極端すぎるぞ？せめてメディックぐらいは…」ギルド長はかなり本気で心配してくれているようだ。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-21】 「まぁいい、とりあえずこれが紹介状だ。これを持って領主様に…」言いかけてギルド長は不意に思い立ったらしく何事か紹介状に書き足している。「…オホン。これを持って領主様に面会して来い。」紹介状を受け取った一行はマルク統治院へ向かった #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-22】 「なるほど。諸君が新しい冒険者かね？なかなかいい面構えだ。」いかにも高貴な身分といった風情の壮年の男、彼がこの街の領主だ。小型犬など抱いていていまいち迫力はないが何と『辺境伯』だというから相当な権力者とみていいだろう。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-23】 「さて、早速君たちの活動を許可してやりたいところだが…」「？」辺境伯はギルド長からの紹介状をこちらに手渡して読んでみるよう促してきた。 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-24】 『この若者たちは私の認めた新たな冒険者ギルド”劇団シュクラ”です。冒険者にふさわしい度胸と行動力を備えた彼らにこの地で探索活動を行う許可を与えていただきたいと存じます。』 #世界樹の迷宮IV

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【世界樹日記：1-25】 『追伸：しかしながら彼らには荒事の経験がいささか不足しているように思われます。つきましては彼らの力を試す意味も込めて小迷宮探索のミッションを与えることを提案いたします。タルシス近郊の森の廃坑などが適切かと存じます。』 #世界樹の迷宮IV