ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/15

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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あまね @gyakumei

硬い殻に包まれた種子は、高い熱を受けて初めて発芽する。ふわふわの綿毛の花に引火して燃え上がりすぐに燃え尽きて地面に種を落とす。ひとときの花火を楽しむために、恋人たちは火打石を持って夜の森へ行く。あちらこちらで閃く炎が、幸せそうな恋人たちの顔を一瞬映しては消える。 #twnovel

2012-07-15 00:10:02
ろばたにスエノ🦀 @robatani

月に叢雲、月とすっぽん。ごっちゃになって「月にスッポン」という新たな言い回しを誕生させてしまった。どのような意味か分からんのであれやこれやイメージを組み合わせたりかき混ぜたり煮込んだりした結果、「スッポンが見えそうで見えない」という答えに到達した。チラリズム万歳。#twnovel

2012-07-15 00:20:27
ハラヨシ @harayosy

#twnvday 「花火もう終わったよ」「…悪かった」汗だくになった俺に彼女はそう呟いた。仕事で遅れたとかそんな言い訳はしたくなかった。「はい、これ」線香花火。俺が差し出したのを受け取ると彼女は神社の階段で火をつけた。小さな光が俺達を包む。「来年。遅れないでね」 #twnovel

2012-07-15 02:22:23
すわぞ @suwazo

#twnovel 宇宙飛行士が宇宙空間で【それ】を拾う。こっそり持ち帰る。高く売れる。【それ】は神として祀られる。誰もが【それ】を崇める。【それ】は捧げられた贄を喰う。育つ。喰う。信者も喰う。肥る。手当たり次第に喰う。排泄はしない。ただ喰う。巨体が全てを覆う。地球はもう青くない。

2012-07-15 10:04:18
miecha @miechorz

#twnovel 子供の頃、タンポポの花びらを黒い紙に張り付けて、病弱の幼馴染に届けたことがある。花火を見たことがないと言っていたから。  大人になった僕は花火技師の道を選んだ。大輪の花を空高く打ち上げるために。高く、高く、高く、どこまでも高く、あの子にもちゃんと見えるように。

2012-07-15 11:43:20
@RosaVaio

言葉を話す猫がいた。流暢なバイリンガルだ。口喧嘩では負け知らず、甘い言葉を並べては飼い主の庇護欲を手玉にとる。猫は皆から愛された。だが、いつの日かその猫は「にゃあ」としか鳴かなくなった。腹話術をしてくれる、相方の猫が亡くなってしまったのだ。 #twnovel

2012-07-15 13:29:41
新居でがまだせわらびっちょん @tnsu1_su1

「猫は自由だなぁ」我が家の愛猫に嫉妬する。お尻を撫でれば腰を高く上げて催促し、あごの下をさすると喉を鳴らした。この暑さに板張りの上でデロンデロンに伸びたお腹にチョップすると、盛大に噛みつかれた。「あんたね、猫社会の過酷さナメんじゃないわよ」「…さーせん」 #twnovel

2012-07-15 13:53:44
すわぞ @suwazo

#twnovel 山奥の別荘で待っている。死体と一緒に待っている。私は死体と同じ顔をしている。整形したのだ。雇った大勢の私立探偵の中から、一番最初にここへたどり着いた人を連れて、私は遠い異国、懐かしの国へ旅立つだろう。死んだ女のふりをして。ひとごろしを炙り出し、退治するために。

2012-07-15 15:16:52
想像を凌駕する人 @Jose_Ichiro

結局、自分を許すことができないから、差し伸べられた大きな手が『蜘蛛の糸』のように感じられた。手を握り返したら最後、離すことができなくなった。自然と流れ出る涙は、手の存在の喜びによるものではなく、救済されたという安堵と、もう戻りたくないという哀しみのせいだった。 #twnovel

2012-07-15 17:42:17
かなりひこくま @kanarihikokuma

ぼくは手袋をとり、男の胸へ投げつけた。「決闘だ」 男も手袋をとると、ぼくに投げ返した。「決闘だ」 ぼくはさらに手袋をとり、男に投げ続けた。男も手袋とり、ぼくに投げ続けた。ぼくは負けぬ。手袋は無限にある。  #twnovel

2012-07-15 18:09:26
@mimimdr

豪華客船と共に沈んだ世界最強の腕時計は、船体が海中で朽ち、周囲の生態系が変わり、やがて周辺から生物が消え、海面が凍っても、変わらず海底に在る。時折海底が揺らいで起きた大きな波に身を任せる度、今度こそ自分と同じ境遇の仲間に会えるのではないかと期待して時を刻んでいる。#twnovel

2012-07-15 19:07:23
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 約束の日。街の広場にはもう人だかりが出来ていた。その真ん中で背中合わせに立つ二人。観衆は静まりかえっている。やがて古の作法に従い二人は三歩進み、そして二歩下がる。息を呑む観衆。二人は振り返りそして……熱い抱擁と接吻。歓声があがった。「結婚おめでとー!」

2012-07-15 19:23:58
秋山幽 @A_ki_ya_ma_Yu

#twnovel 二人の男の子へ、塗り絵とクレヨンを与える。同じ魔法使いの女の子と、同じ十二色のクレヨン。二人はさっそくクレヨンを手に取る。やがて、黒づくめの魔法使いと虹色の魔法使いが出来上がる。二人の魔法使いは紙から立ち上がって、戦い始める。私は男の子たちとともにそれを眺める。

2012-07-15 20:28:43
池田仮名 @bulldra

【婚活】つもり貯金を消費してたら「子供が生まれたつもり貯金」が尽きたので「結婚したつもり貯金」に手を付けてしまった。既に休暇のためのエア葬式で一族郎党は全滅している。私のせいで全ての親族が生まれる前に消し去られた。全ての宇宙、過去と未来の全ての親族を、この手で #twnovel

2012-07-15 20:31:26
@mimimdr

冷凍ナポリタンは胃が痛かった。冷凍庫で隣になった冷凍讃岐うどんがお喋りなのだ。「お前ナポリから来たの?すげー!ナポリってどんなとこ?」千葉出身なんて言えなかった。「そだな、皆ワイン飲むよ」うどんが先に冷凍庫を去った時はほっとした。「お疲れ」冷凍ごぼうに慰められた。#twnovel

2012-07-15 20:58:12
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 校舎の屋上から下を見つめる生徒。「こんな遺書じゃダメ。書き直し」振り向くと自殺した教師の幽霊。「虐めた相手の氏名と自殺と虐めの因果関係はハッキリ書く。あと学校に揉み消されないようにコピーもとる」生徒は、それから何度も書き直したが合格は貰えなかった。卒業するまで。

2012-07-15 21:06:06
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 空が泣きだして、本降りの雨。暗い雲をにらむと涙が洗い流される。邪魔しないで、泣いてるのは私! 怒ったら雷が落ち、私は身を縮めた。むりに笑顔をつくると雨は止み、雲間からさす光。冷たい頬をそっと風がなでる。何よ、今ごろ優しくなんかして。天のあいつに精一杯、アカンベ。

2012-07-15 21:44:24
miecha @miechorz

#twnovel 大雨で花火大会が中止になった。肩を落とした僕に、幼馴染がきょとんとした顔をする。「やってるよ、今」「なにが?」「花火。音がするでしょ」耳を澄ましても何も聞こえない。「わかんないよ」「静かにすれば聞こえるよ。ほら、今も、どーんって」あの子は何を聴いてるんだろう?

2012-07-15 21:57:14
ハラヨシ @harayosy

#twnovel バナナの皮で滑るとタイムスリップしてしまう俺。『バナナの皮で滑る』などというイベントが日常生活においてどのくらいの確立で起こるかなんて馬鹿らしくて考えられ(ツルッ)…まあ、たまには起こることかもしれない。しかし、気をつけてさえいれば、黄色い物体を見逃す(ツルッ)

2012-07-15 22:09:17
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel いつまでも子の行動に口出しする親は、結局「子離れ」ができてないんだ。つまり、人間として未完成なんだ。誰かに依存しなければ生きていけない生き方は、本当に生きているとは言えない。私は私を放任してくれた親に感謝してる。私を捨ててくれたおかげで、私は一人でも生きられる。

2012-07-15 22:53:26
23時の夢物語 @23novel

#twnovel 洗い立ての素肌に、藍色の浴衣を羽織る。白く染め抜いた朝顔が一番映えるよう調整しながら、赤いトンボの帯でキリリと止める。長い髪はゆったり結い上げて、小粋な下駄と籠のバッグで、いざ出陣。ライバルは、あの鮮やかな花火。絶対、彼の視線を奪ってやる。 #twnvday

2012-07-15 23:21:33
瀬口 @an2a_09

花火は星に恋をした。一度でいいから近付きたい。夏の夜、願いが叶って花火は空で輝いた。そのあまりの美しさに今度は星が一目惚れ。消え行く花火を追いかけて、一緒に海に落ちたのさ。 #twnovel #twnvday 老ヒトデのロマンティックなお伽噺。空を思い出し、海の花は可憐に微笑む。

2012-07-15 23:33:59
@kissmint_xxx

近頃よく見かける、ぱっつんショートのサブカル女子。実は彼女達、密かに作られた人造人間だ。常に首から下げている一眼レフで、またはブログ用だと携帯カメラで、社会のウラを暴くのが彼女達の役目。ぱっつんショートなのは、量産に適しているから。これはLvBの国家機み #twnovel

2012-07-15 23:38:27
塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 石の国を訪れた旅人は、その美しさと不可思議な佇まいに驚いた。町並みも城郭も通りに立ち尽くす人もみな琥珀色の石なのだ。石の果物を含み笑う石の子ども、石の反物を売る石の男。もしやと見上げると空もまた飴色の石であり、胸騒ぎに押さえた胸は指先ごと固結し、旅人は結晶した。

2012-07-15 23:46:40
水木ナオ @nayotaf

「奥さんに縦恋慕してしまったんです」ぎゅっと手を握って迫ると、彼女は横ではなくて?と首を傾げた。「横恋慕は他人の愛する人に横合いから思いを寄せること。僕はたったひとりの愛する人に、ずっと思いを積み重ねてしまったので」「まあ。では私もあなたに縦恋慕ね。旦那さん」 #twnovel

2012-07-15 23:46:41