小山薫堂・人を幸せにする企画術 第3回「出会いを仕事につなげる方法」 書き起こし・ほぼ完全版 #nhk

NHK・Eテレの「仕事学のすすめ」で放送されたものを文字起こししています。 トランスレーター:野田稔(明治大学大学院教授)
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とし @toshihiro36

<ナレーション> 一流シェフが料理の腕を競い合う番組「料理の鉄人」を企画して一世を風靡した小山さん。食への関心は高く、エッセイの執筆や雑誌の連載などを続けてきました。2年前には東京・六本木の一等地に自らプロデュースするカフェを作りました。

2012-07-21 11:30:03
とし @toshihiro36

<ナレーション> 緑に囲まれたおしゃれな雰囲気の店に、小山さんはあえてカレーやカツサンドといったB級グルメを取り揃えました。実はこのお店、ある特定の人物を驚かせるために作ったというのです。アメリカ人の友人、ランディ・カッツさん。二人の出会いがまた独特のものでした。

2012-07-21 11:34:07
とし @toshihiro36

小山:本当に偶然としか言いようがないんですが、お寿司屋さんに行きまして。僕が左のコーナーに座り、ランディさんが左のコーナーに座っていた。食べる時にすごくマニアックな注文をしているわけですよ。クチコとかアワビのきもとか。でも日本語話せないんですよ。

2012-07-21 11:41:56
とし @toshihiro36

小山:僕が頼んだものを気にしているわけですね。それで食べて「美味いなぁ」と思うと視線を感じるわけです。美味しそうだなぁと見ていて、「自分もあれと同じもの」と頼むわけです。で、なんとなく仲良くなるじゃないですか。それで名刺交換をしたんですね。

2012-07-21 11:46:20
とし @toshihiro36

小山:それから数日後にメールが来まして、「この間は、美味しかった」みたいな。「また自分は東京に行くので、どこか美味しいお店を紹介してくれないか」というメールが来まして。それでなんか食が本当に好きな人なんだろうなと相通ずるものを感じたんですね。

2012-07-21 11:50:05
とし @toshihiro36

小山:それで「じゃあ、これはどうだ。日本はすごいだろう」というのを言ってあげたいなと。喜ばせたいなと。それで焼き肉屋さんに連れて行ったんですね。月島の焼肉屋さんに連れて行きまして。そうするとやっぱり「美味い」と。

2012-07-21 11:53:43
とし @toshihiro36

小山:定期的に連絡が来るようになりまして、「来月はいつ行く」と。月に一回くらいのペースで来ていたんですね。

2012-07-21 11:55:48
とし @toshihiro36

野田:それグルメガイドになってますね(笑)。

2012-07-21 11:56:19
とし @toshihiro36

小山:そうなんですよ。それで、だいたいいつも僕が奢るわけなんですよね。

2012-07-21 11:58:37
とし @toshihiro36

野田:あっ、そうなんですか。そういう時にお財布を出さない人は、ムチャクチャ貧乏かムチャクチャ金持ちっていうんですけれども…ランディさんはどっち?

2012-07-21 12:00:48
とし @toshihiro36

小山:ムチャクチャ金持ちです。ランディがいつも「もしアメリカに来ることがあったら僕がお返しするから、来て」と言われていたんで、アメリカに行ったんですね。

2012-07-21 12:02:52
とし @toshihiro36

<ナレーション>小山さんがロサンゼルスのランディさんの家を訪ねたのは、映画「おくりびと」がアカデミー賞にノミネートされた時でした。行ってびっくり、テレビ番組を海外販売するビジネスで成功したランディさんの家はビバリーヒルズの大豪邸。小山さんはここで授賞式のテレビ番組を見守りました。

2012-07-21 13:27:33
とし @toshihiro36

<ナレーション> その場はそのままアカデミー賞の授賞パーティーの会場となったのです。

2012-07-21 13:28:31
とし @toshihiro36

小山:映画の賞の時に彼が自宅でパーティーをやってくれまして。そのパーティーが本当に盛大なパーティーで、ケータリングシェフを呼んだりとか…今まで僕が奢ってきた焼肉であるとかお好み焼きであるとか、僕の中で貸しとしてストックしていたんですね。

2012-07-21 13:32:42
とし @toshihiro36

小山:今日は8000円とか、これで20000円突破したなとか思ってたのに、乾杯に開けてくれたシャンパンだけでそれが全部チャラになるような。社員を連れて行ってたので、何十人分かのケータリングでガーンとひっくり返っちゃったんですね。それはちょっと悔しいなと。

2012-07-21 13:37:42
とし @toshihiro36

小山:これだけやられたら、向こうをちょっとギャフンと言わせたいなということで、店を作ろうと。

2012-07-21 13:39:03
とし @toshihiro36

<ナレーション> このころ小山さんのもとに、六本木での飲食店プロデュースの話が持ち込まれました。小山さんはこの店のコンセプトを「ランディを驚かせるためのカフェ」にしてしまったのです。店のオープンから2ヶ月後、ついにランディさんを案内する日がやってきました。

2012-07-21 13:42:12
とし @toshihiro36

<ナレーション> 自分の名前を冠したカフェ…すべてが自分好みに作られた店に、ご本人も目を丸くしています。看板メニューは海老カツを挟んだランディカツサンド。もちろんランディ・カッツにちなんだネーミングです。特定の一人を喜ばせるために店づくりをするとは一体どういうことなのでしょうか。

2012-07-21 13:47:55
とし @toshihiro36

野田:大変失礼なんですけど、それって小山さんお一人の大変パーソナルな問題なんですよね。そのパーソナルな問題で作ってしまったお店の従業員って、違和感を感じないですかね?

2012-07-21 13:50:47
とし @toshihiro36

小山:僕はまったく逆で、例えば「こんど作る店のコンセプトを早くください」って言われた時に、「じゃあ都会の20代後半の女性がターゲットで、テラスで本をするのが好きな人のために作りたい」と言っても、あそこにもあるしここにもあるしなんか漠然としている。

2012-07-21 13:56:03
とし @toshihiro36

小山:それよりも本当に一人のこの人なんだ。顔はこの人。この人はこんなものが好きなんだよと。しかもこの人には言わない。「この人が驚く顔が、みんな見たくない?」って言ったら、「すごい見たいです」。

2012-07-21 14:00:15
とし @toshihiro36

野田:あっ、なるほど。たしかに燃えるかもしれない。

2012-07-21 14:01:27
とし @toshihiro36

小山:それで働く時の、どこに向かって働くかがものすごく明確になって。それでスタッフの結束がギュッとなった。

2012-07-21 14:03:35