ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/22

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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にゃおっく @_nyaok

#twnovel 小さな頃甘えん坊の私はいつも母親にまとわりついていたが、夏になると母はよく「熱いからくっつかないで」と不快そうに私を引き剥がした。だから夏は嫌いだった。自分が母親になってみるとそれも分かる。だから娘との間にタオルをはさむ。柔らかな距離。ふんわりタオル一枚の距離。

2012-07-22 00:00:13
女子高生風タチバナ @Tachibanashi

空から女の子が落ちてきた。受け止められるかと手を伸ばすが受け止められず僕も女の子も死んだ。天国で神様が「君は咄嗟に女の子を助けようとしたから、チャンスをあげよう」と言った。今度は僕が落ちてくる予定なので、どなたかよろしくお願いします。 #twnovel

2012-07-22 01:00:36
のおの @noz_on_tw

皮膚の中に見えない手がある。「あなたなら次は上手にできるよね」「はい大丈夫がんばります」これを聞くたびじわり、手は私の首を締めつける。いつかひねりちぎられたところから、新しい私が生えてくる。新しい顔した、新しい私が。 #twnovel

2012-07-22 01:02:14
km3nm3 @km3nm3

巨大カマドウマ。学名アタキネシス・ソムニオ。それが彼女の顔に張り付いた虫だ。口吻を鼻から突っ込んで脳内物質を吸い、一方で注入した麻酔によって海馬を蹂躙する。今日も病室に入ると、奴は目だけを動かして僕を見る。彼女は僕の記憶を失い、それにより僕の現実感が壊れていく。#twnovel

2012-07-22 04:28:28
七歩 @naholograph

ママがいない、と少女は泣いた。金魚水槽のこちら側。僕は少女を座らせる。ひらひら兵児帯。おじさんしらない?僕に尋ねる潤んだ眼。横に首を振ったなら、少女はじっと水面を見つめてぽつり、かえる、と呟いた。#twnovel ちゃぽん。残されたのは赤い帯。少女が消え、水槽の金魚が一匹増えた。

2012-07-22 08:27:55
すわぞ @suwazo

#twnovel 夢の中で知らない歌を聴いた。僕はそれを曲にしてネットに流した。反応は上々だった。毎日のように送られてくる感想のメールを、僕は一つ一つ読む。感動した、とかそんな言葉が欲しいのではない。僕は待っているのだ。探しているのだ。夢の中でこれを歌っていた見知らぬ少女を。

2012-07-22 09:55:46
ておまさお @teomasao

親友であるが故の決断だった。少年は友人に隠し通してきた正体を打ち明けることにした。「ボク、実は狼なんだ」「そんなこと知っていたさ」友人の反応は意外なものであった。まさかこの恐ろしい真の姿を目撃していたのか。「狼少年だろう? おまえ、嘘ばっかり付くからな」 #twnovel

2012-07-22 09:59:08
良崎 @kanfrog

「何百年も前に忘れたわい」誕生日は、と尋ねると彼女はふっと息を吐いた。それだけ長い間、祝う人も無く独りでいたのだろう。「じゃあ今日にしましょう。僕と出会った、新しいあなたの誕生日」「この儂が零歳? お主は面白いな」生まれたての彼女は生まれたての笑みを浮かべる。 #twnovel

2012-07-22 11:18:54
birdboiled @birdboiled

#twnovel 父の夜語りに、物語の挿絵に、地図の一点に、憧れ思い描いてきた塔が、眼前に聳えている。壁を埋める星の細工も、空を映す黒ガラスの窓も、夢みてきたのと同じ。内部の螺旋階段に、そっと足を乗せる。この塔の天辺からは、周りに聳える万の塔の頂も、もっと近づいて見えるだろうか。

2012-07-22 15:18:27
layback @laybacks

散歩に出る。よく晴れた夜なのに月の姿が見えない。きれいな毛並みの白ねこが足もとにまとわりついてきた。しゃがんでおでこをなでてやるとルルルルとのどを鳴らす。満足したようだ。ひとつ欠伸をした白ねこはしなやかな身のこなしで星の梯子を駆け上がり、夜の真ん中で丸くなった。 #twnovel

2012-07-22 16:49:39
wacpre @wacpre

その子は誘われるままに部屋に入り、突然の音と光に驚かされた。呆然としているのを周りは優しい笑みで見守っている。テーブルには3つのろうそくを冠した大きなケーキ。周りに導かれるままにろうそくの火を消すと、さらに盛り上がりパーティが始まった。そのケーキに書かれた名前は #twnovel

2012-07-22 16:50:44
雪月 @setugetufuka

# twnovel とかかれた扉を開けると中には綺麗な球がたくさん浮かんでいた。摘まんで覗くと小さな物語が見える。夢中になって見ていると「楽しい?」と声をかけられた。3才くらいの子だ。うんと頷くと、その子は嬉しそうに言った。「今日は私の誕生日なの。あなたの物語も浮かべてくれる?」

2012-07-22 17:14:23
はす @hasmoto

「不浄が湧いたため、この列車は運休となります」車内アナウンスが流れ、乗客は線路を歩き始めた。不浄の相手をする車掌を「さっさと祓えよ!」とヤジる男の口元にまた、真黒な不浄が湧く。その惨状を撮影する女の携帯にもべったりと。素知らぬ顔で、乗客は駅を目指して歩き続ける。 #twnovel

2012-07-22 17:30:58
@kissmint_xxx

ひしゃげたフェンスの上に座る少女。ここであった事故に巻き込まれた子だ。何してるの?と僕が訊くと、人を待ってる。と応えた。 #twnovel 「この世に何か未練があるの?」「やだなぁ、私、死んでないって」飛び降りた彼女の足元の草が、カサカサと音をたてる。「あなたはどうなの?」

2012-07-22 17:53:05
鈴々@物語る鳥 @re_rhythm

調理中に指先を切った。あーあ、と呟き手を洗っていると彼が救急箱を手に飛んできた。見せて。云うなり手を取られる。水で洗い流した血は、けれどすぐににじみ出てくる。それを彼はぱくりと口に含んだ。呆気にとられる内になぜか掌まで舐められる。おまけ。そんなおまけいらない。 #twnovel

2012-07-22 20:13:01
すず音a.k.a赤メガネ @greene_cts

見送られるのは嫌い。デートを重ねてもスタンスは変わらないし、理由を尋ねられても上手く説明できない。だから恋愛は長続きしない。今の彼は違った。「我慢したけど、もう限界。見送られるのが嫌なら、一緒のところに帰ればいいだろ?」ああ、そうか。足りなかったピースが嵌った。#twnovel

2012-07-22 20:38:36
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 雨が降る。アスファルトの路面が黒い鏡になって、現れるパラレルワールド。男の子は窓越しに見下ろしていた。傘だけを残して水溜りに消えていった通行人。その傘を拾ったのは同じ顔をした男だった。振り返ると雨の匂いをさせて帰宅した母。昨日までの母と同じ母なのか?判らない。

2012-07-22 20:45:33
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 今夜こそ君に、誕生石を贈る。宣言した彼は駆け出しで、四月生まれの石なんて買えっこないのに。私は招待された席につく。現れた彼は、渾身の一撃を放った。スタンドに消える白球。私へ腕を突きあげた彼の声は、歓声の中でもわかった。『結婚しよう』ダイヤモンド一周の贈りものと。

2012-07-22 21:40:05
お嬢ちゃんきょうのうさみみ何色? @sn1428x13

街の大通りをさ迷っていた死体たちが、こくりと姿を消した。残ったのは生者を食う事を忘れた死体達。一人は傘をさしてじっとしている、一人はレとシを押した、一人は花を持ち、誰かを探しているようだった。何か思い出しそうな、世界の終わり、最後の日。生者は窓を閉めた。 #twnovel

2012-07-22 22:07:38
塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 起きている風景は目の数だけ用意したのに、寝ている景色はまぶたの裏たった一つしかなかった。ひょっとしたらこれは不公平なんじゃないか、と神さまが気付いたのが四百万年くらい前。そんなだから夢の生産はまだ目の数に追いついていないんだ。だから心配しないでおやすみなさいな。

2012-07-22 22:18:02
淀美 佑子 @note 評論 @yodo_yo_mi

#twnovel「人は裏切るけど、音楽は裏切らない」10年前にそう言ったあの人は、まだ音楽と向き合っているでしょうか。あの時、彼を好きだったわたしは、その言葉に悲しく耳を傾けていたけれど。彼の好きだった音楽を聴いて甦る記憶は、今も綺麗なままで。あの言葉も一理あるなと、思うのです。

2012-07-22 22:22:10
ハラヨシ @harayosy

#twnovel おかあさんが怖い。だいすきなおかあさん。いつも優しいおかあさん。だけど変わってしまった。買い物にでかけて帰ってきたら、『変わっていた』顔は同じだけど、ちがう。「今日は貴方の好きなハンバーグよ」違うよ、僕はカレーが好きなんだ。誰も気がつかない。おかあさんじゃない。

2012-07-22 22:35:45