(8)「休日にアイスクリームがとけていく」―これは(7)と比べて現実的で、かつ「ふつう」の文とは微妙に距離があります。「切れ」が浅いので、俳句とはいいにくいですが、どこか思わせぶりな効果、つまり換喩的な効果が感じられます。
2012-06-03 21:43:13このように、語の配列の自由度を(2)~(5)や(8)程度に抑えておけば、換喩的な効果のある短文ができる確率が高くなると考えられます。ただこれらは、俳句として上等とはいえず、この種の俳句を作るのはやはり難しいという印象です。
2012-06-03 21:44:58一方、(6)(7)のようなシュールなタイプは、簡単にいくらでもできそうな印象です。ただ、シュールでかつ俳句的にしようとすれば、難しくなりそうです。
2012-06-03 21:45:22(1)の文「休日にアイスクリームを食べ歩く」についても、語順を変えて「食べ歩くアイスクリームを休日に」とする方が、何となく俳句っぽさが増すような気がします。
2012-06-04 21:44:38たとえば「日が暮れて道に落ちてる宇宙船」のような句ですと、意味的な切れ目は「宇宙船」の前に、文法的な切れ目は「日が暮れて」の後にあるようです。
2012-06-04 21:45:18俳句でいう「切れ」がどちらのことをいうのか、私は知りませんが、どちらにしても、「ふつうの文」に何らかの形で「切れ」を作ることで、俳句に近い文ができると考えられます。
2012-06-04 21:45:41ただ、このようにして俳句めいた文ができたとしても、そうした文の中から、俳句として優れたものを選別するのは、今のところ、人間が行うしかないようです。
2012-06-04 21:47:19コンピュータに将棋を指させる場合などは、指される手の評価基準がはっきりしていますが、詩や俳句の場合は、評価基準がそれほど明確でないため、コンピュータに自己評価させるのは難しい面があります。
2012-06-04 21:47:42ただ長期的には、専門家が行う評価を学習できるようなシステムが開発される可能性はあります。そうなると、コンピュータによって無数に生成される短文の中から、出来のよい俳句を、コンピュータ自身が選別できるようになります。
2012-06-04 21:48:14しかしそれ以前に、現在でも、前述のような「語の配列の自由度」を数値化することぐらいはできそうにも思います。そうすれば、どういう「領域」の文を作るかをあらかじめ選ぶことぐらいはできるかもしれません。
2012-06-04 21:48:41最後に、俳句の形式について付け加えることにします。コンピュータで俳句を作らせる場合、たとえば五七五形式にどの程度こだわるかといった問題です。
2012-06-04 21:50:26俳句をたんに模倣するのが目的であれば、五七五形式に従うに越したことはありません。しかし、より広く、短文の詩的効果を探究するという目的であれば、五七五形式でないものも出力できた方がおもしろいと思います。
2012-06-04 21:50:46五七五形式は、人間の日本語話者が音声出力するのに適した形式だと思います。作者が人間で日本語話者の場合は、その形式に引っ張られやすく、その形式に沿わないようにするにも、何かしらの反発力が必要になります。
2012-06-04 21:51:13一方、作者がコンピュータの場合は、もともとそういう引力は働かないので、その形式に引っ張られることも反発することもなく、平然といろんな形式を出力できる可能性があります。
2012-06-04 21:51:33また、人間であっても、文字を読む場合には、必ずしも定型の方が読みやすいとはいえないように思います。少なくとも私の場合は、定型句がどわーっと並んでいるのは読みにくい印象があります。
2012-06-04 21:51:52そのほか、俳句では、ルールというより傾向として、最後が名詞で終わるものが多いということがあります。名詞で終わる句は、句としてのまとまりが強く、そこに現れる「切れ」がいっそう引き立つのではないかと思います。
2012-06-04 21:52:26しかし、そのようなまとまりのない、散文に近いことばであっても、それを機械が発するときには、何か変わったおもしろさが生じるような気もします。
2012-06-04 21:52:50一般に、人間がやっていることを機械にやらせる動機としては、1)人間の真似をさせたい、ということと同時に、2)人間にはできない機械ならではのことをさせたい、ということがあると思います。コンピュータに俳句を作らせる場合も、機械ならではの何かが得られることが期待されます。
2012-06-04 21:53:13