「大学で研究することについて」

まとめてみました。
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森田 真生 @orionis23

この二年くらいでようやく、生活の心配をせずに、平日は基本的に勉強に打ち込める環境がつくれてきた。仕事は週末のみ、という原則を厳しく徹底すれば、大学にいる頃よりもやりたい勉強に当てられる時間は実際増えている。

2012-07-31 07:51:34
森田 真生 @orionis23

素直に大学院に所属していれば簡単にアクセスできるけれど、独立しているためにひと苦労をしないとアクセスできないようなリソースもいろいろある。書籍はもちろんのこと、指導教官からの直接的な指導や、同世代の研究者との議論の場も、ひとつひとつ自力で獲得していかないといけない。

2012-07-31 07:53:34
森田 真生 @orionis23

圧倒的に優秀な人にとっては、いまの大学システムを素直に利用するというのは、やっぱり賢明な選択だと思う。圧倒的に優秀であれば、いまの大学システムの中で、好きに研究して、業績を上げて、大学で食っていけるようなポジションを、無理をせずとも得られるだろう。

2012-07-31 07:56:36
森田 真生 @orionis23

僕自身は数学を心から愛していて、一生数学をしていきたいと思った。一方で、数学をはじめたのが20歳を過ぎたあとだから、圧倒的に出遅れている。自分は数学エリートではないし、大学の中での普通の競争に勝ち残っていくためには、あまりにも「無理」が多いと思った。

2012-07-31 07:58:59
森田 真生 @orionis23

僕がヒルベルトやゲーデルや、あるいはグロモフやウィッテンのような天才だったら、きっと難しいことを考えずに大学で素直に研究をしていると思う。だって、大学にいれば、庭のきれいな素敵な部屋で、給料も出て、好きなだけ研究に没頭できる環境が与えられるのだから。

2012-07-31 08:03:59
森田 真生 @orionis23

数学といっても本当に多様で、そのなかでどこに戦慄して、どこに喜びを感じるかというのは本当に百人百様です。その中で、大学で数学を学ぼうと考えると、やっぱりその時代の潮流というのがあって、流行る数学流行らない数学、評価される仕事されにくい仕事というのがあるわけです。

2012-07-31 08:08:31
森田 真生 @orionis23

大学に残って、自分はそこで時代の潮流をつくっていくんだ、という人は大学に残ることが幸せなのだと思うし、大学に残っていると時代の潮流を追いかけるだけで精一杯になってしまうという人は、大学に残る以外の選択肢を考えてみるのもひとつの手なのではないかと思います。

2012-07-31 08:11:15
森田 真生 @orionis23

僕自身はもともとグロタンディークの仕事に憧れて、代数幾何を勉強しました。学部では川又先生のもと、導来圏の勉強をさせていただいて、その中で徐々に圏論そのもの、さらには圏論とロジックとの関係、特にトポス理論に興味を持ち始めてきました。

2012-07-31 08:13:09
森田 真生 @orionis23

僕がもし天才だったら、さくっとトポス理論の要諦を掴んで、自分なりに研究をはじめられたのでしょうが、実際には、代数幾何の勉強と並行して、独学で進めていた圏論の勉強は遅々としてなかなか進みませんでした。

2012-07-31 08:14:36
森田 真生 @orionis23

「大学で生き残っていくためにしないといけない勉強」と、「純粋に数学的関心において勉強したいこと」が乖離していて、その状況は、年を経るごとに悪化していくのではないかと思えました。

2012-07-31 08:16:43
森田 真生 @orionis23

そもそも東大の数学科に毎年おおよそ40人の学部生がいて、そのうち最終的に大学で食べていけるのは1~2人くらいという話を聞いたことがありますが、

2012-07-31 08:19:07
森田 真生 @orionis23

さらにその中で「純粋に数学的関心において研究したいこと」と、「生き残るために研究していること」が合致する人は本当に幸福な人で、最初に数学を志した母集団からすれば、それはほとんど「例外的」とすら言えるのではないかと思います。

2012-07-31 08:21:04
森田 真生 @orionis23

それは、数学の世界の特殊な事情もあります。数十年前ならば、例えばトポロジーの研究がしたいと言えば、トポロジーの本を一冊読めば研究に入れる、という時代があったそうです。ただ、いまでは状況がまったく違います。

2012-07-31 08:22:38
森田 真生 @orionis23

例えば代数幾何で論文を書きたいとなれば、何十冊ものテキストを読み込む必要があります。そしてその中で、数年がかりで「誰も解いていない問題」を探し出す必要があります。ここでもまた、分野の要諦をサクっと掴んですぐ論文を書き始められるのは、ごく一部(世界で数人レベル)の天才です。

2012-07-31 08:24:50
森田 真生 @orionis23

現実には、数年がかりで何冊ものテキストを読み込み、その過程で「誰も着手していない問題」あるいはもう少し控えめに「誰かが着手しているけれど、部分的にまだ貢献できる問題」を探すわけです。

2012-07-31 08:26:06
森田 真生 @orionis23

この段階で、よほど幸福な人でなければ、研究は「労働」に似た様相を呈してきます。そもそも数年がかりで見つけた「自分が部分的に貢献できる問題」と「自分が本当に関心のある問題」が一致することそのものが、なかなか稀だからです。

2012-07-31 08:29:18
森田 真生 @orionis23

こうした状況の中で、僕が僕自身の限られた能力のなかで、なるべく純粋な好奇心にしたがって数学を続けていこうと考えた結果、大学というシステムの外に出る、というのが最も合理的な選択に思えたわけです。

2012-07-31 08:32:12
森田 真生 @orionis23

大学にパトロンになってもらって研究をするという文化がせいぜいここ百年くらいのものだとしても、いまはむかしと違ってお金のかかる研究が多いですから、大学をやめるという選択肢に躊躇する必要がなかったのは、数学という分野の特殊性がひとつにはあると思います。

2012-07-31 08:37:21
森田 真生 @orionis23

僕ははじめは工学部にいましたが、工学部にいた頃には、独立研究者という発想はありませんでした。フォースプレートひとつで数百万しますからね。モーションキャプチャーとりたいなんて言ったら大変です。

2012-07-31 08:38:52
森田 真生 @orionis23

数学者ひとりが独立するために必要なお金なんてたかがしれています。それでも、これから研究会を開いたり、海外から先生を招聘したりとなると、それなりにお金もかかりますから、クラウドファンディングでワークショップを開くということなども試みてみたいと思っています。

2012-07-31 08:40:55
森田 真生 @orionis23

先日つぶやいたThiel Fellowship(http://t.co/8RsBMPvf)などは、工学や生物学など「お金のかかる」分野における研究者の独立を後援する、とても面白い試みだと思います。

2012-07-31 08:43:38
森田 真生 @orionis23

学問が大きな樹だとして、樹の枝を伸ばすことも大切ですし、最先端で樹の成長に貢献している仕事に敬意をはらうことを忘れてはいけないと思いますが、一方で、樹を支えている大地を耕すこともまた、怠ってはいけないと思います。

2012-07-31 08:46:06
森田 真生 @orionis23

数年前ケンブリッジの吉田輝義先生とお話させていただいたときに、吉田先生が盛んに「数学の批評が必要だ」ということをおっしゃっていましたが、たとえば、膨大に膨れ上がっている現代数学の諸結果の相互関係や「意味」について語る仕事は、基本的には「業績」と見做されません。

2012-07-31 08:48:44
森田 真生 @orionis23

僕が尊敬する先輩である東工大のYさんもよく「数学は自分自身の重みに耐えられなくなってしまうのではないか」ということをおっしゃっていますが、ひたすら新たな結果を生産し続ける一方では、誰ひとり数学の全体像を見渡せず、数学者が数学そのものを支えられなくなってしまう状況になりかねません。

2012-07-31 08:51:36
森田 真生 @orionis23

数学者が研究会のプロフィールで「低次元トポロジー」「作用素環論」など専門分野を書いているなかで、アラン・コンヌが「専門:数学」なんて書いてると「すげー!」ってなるわけですが、コンヌのように「私の専門は数学です」と名乗れる人はいま世界に果たしてどれくらいいるのだろうか。

2012-07-31 08:54:10
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コメント

楽茶@rakti @rakti_puncak 2012年8月2日
大学を出てから数学をもっとやりたいなぁ、と思った自分には色々と考えさせられるまとめです。でも、いつはじめてもそのときが自分の適齢期だと思いながら、数学をいろいろと考えるのです。
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