ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/31

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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橘 颯 @so__w

壁、床、天井。場所を問わず紙片の溢れ返る其処は地図屋。忘れてしまった場所。無くなってしまった場所。何時か行って見たい場所。貴方が曾て望んだ、そして此れより望む数多の場所。其処には其れ等全ての地図が有る。貴方が手放してしまった、何時か洋筆で記した宝物の地図でさえ。 #twnovel

2012-07-31 00:02:30
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel 電気を使わずに軒先を涼しくするエコな企画の測定単位に“ネコ”が採用された。涼みに来た猫の数でカウントする。平均得点が0.7ネコのところを、優勝者のお宅は圧倒的な20ネコ。あっつい昼下がり、軒先にぐでっとのびた毛玉な連中が20匹。見てると涼しいような暑いような。

2012-07-31 07:02:27
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、家でゴロゴロせずに出掛けろと言う。嫌だよ、暑いし。エアコンが利いた部屋で過ごすのが一番。そう答えると彼は言った。「あれが壊れることを先に教えた方がいいのか?」

2012-07-31 11:08:40
あまね @gyakumei

辺境惑星に旅したところで出迎えるのは適応困難な気候と重い防護服だけ。それなら膨大な交通費をかけるよりもカウチに寝そべり精神没入装置を被った方がいい。月が三つある常夏の浜辺で機械を埋め込まれた奇怪な軟体生物となり、壁一つ挟んでカウチに寝そべる隣家の奥方と絡み合う。 #twnovel

2012-07-31 11:44:56
N.T.Works/凪司工房@介護生活中 @nagi_tter

#twnovel 今日子さんは偽名を名乗る。「だから今日子っていうのは本名じゃ無いの。私の本当の名は……」「エリザベス?」「だからベスって呼んで」「嫌です」「じゃあリズとかでも可」「今日子さんじゃ駄目ですか?」「そろそろ今日子に飽きてきたの。ねえロドリゲス」そんな名前じゃないし。

2012-07-31 16:31:47
かれきハナサカ/てごね#6971 @873k

妖精の服を作ることにかけて、わたしの右に出る者はないわ。親指サイズの寝間着に、半魚半人のビキニ。魔女からの突然の夜会衣装だって素早く。でも最近は依頼も減ってきたから、ふつーの人間の服もちくちく。夢のような服を見かけたら、わたしの針が通っている証。ぜひ、着てみてね。#twnovel

2012-07-31 17:14:15
夙夜 @syukuya

#twnovel 「今日は何を描いたの?」「月だよ。綺麗だったからね」「そう、いいわね、月。まんまるで、光ってて」ふふ、と含むように笑う彼女に僕も笑みを浮かべる。絵は手元にある。目を落としたそこには、三日月が一つ。「綺麗な満月だわ」「そうだね」彼女の瞼にはそう映っているのだろう。

2012-07-31 20:21:33
すわぞ @suwazo

#twnovel 障子紙の中に蟲が住みついた。障子のどちら側から見ても何やら黒い蟲がうごめく影があるのだが、障子のあちら側にもこちら側にも蟲はいない。あくまで障子紙の内側にいるのである。次第に蟲は増えていった。本の頁やらお札やらにまでいる。今朝はとうとう我が目蓋にも住みつかれた。

2012-07-31 20:45:29
新居でがまだせわらびっちょん @tnsu1_su1

星が話しかける。「ねぇねぇ。どうしてそんなに悲しそうなの?」月は星に向かって言った。「…僕はいつ、太陽さんみたいになれるのかなぁ」それを聞いた星達はざわめいた。「いやだ。今のきみがいい。そんなこと言わないで、ぼくたちはきみがすきだよ」 #twnovel

2012-07-31 20:51:20
@kissmint_xxx

絵本の箱をひっくり返す。純真な灰かぶり姫は糸車で指を刺し、無垢な白雪姫は声を失い海の底。馬鹿な王子はカエルに変わり、高慢な女王に茨の冠。南瓜の馬車を烏が啄み、硝子の靴にはヒビが入る。アップルパイの焼ける匂いがして、狂った魔女が叫ぶ。さあさあ美味しい林檎はいかが! #twnovel

2012-07-31 22:32:13
falsewhere @nowherenotime

#twnovel そうだな、海ではないな。山でもない。谷も違う。河なら、河岸、大地を。分水嶺なら山だ。肥沃な三角州、海峡を。──鳥はその特異な視点で世界を眺めた。そして信じた、自分の棲息する場所は、この空以外にはないのだと。鳥は生涯、羽休めのためにどこかに降り立つことを拒んだ。

2012-07-31 22:34:21
falsewhere @nowherenotime

#twnovel きみの目眩をぼくが食べよう。きみの死はぼくが看取ろう。きみのものもらい、ぼくが貰おう。きみの絶望は僕の胸に。きみの傷は破き捨てよう。きみの不眠はぼくの夢、きみの不安はぼくの憂鬱、きみの辛い毎日はぼくの日常に。きみの全てをぼくに。ただし、ぼくの孤独はきみにあげる。

2012-07-31 23:15:45
黒目ソイソース @ghostsoysauce

うだるような暑さの中、大きな水たまりを見つけた。最近雨は降っていないし、道路は渇いている。隼がそのまま進んでいくと、さっきまで水たまりのあった場所には何もなくずっと先に移動している。「ああ、逃げ水か」夏の風物詩の一つ、蜃気楼だ。ぱしゃんっときれいな魚が跳ねた。#twnovel

2012-07-31 23:49:22
橘 颯 @so__w

深川の婦の口癖は、しんねこになりたいであった。肺病病みの、線が細い婦の事である。其ればかりを口にして、じきに逝ってしまった。間も無くの事。ひゃあと咳めく聲で鳴く猫が家に居着く様になった。本当に猫にならずとも良かろうに。私の云いに、猫は又ひゃあと鳴いて爪を立てた。 #twnovel

2012-07-31 23:51:21