【あやかし草紙】まとめ　２０１２年葉月

@sktkx

「覚悟しろっ！」びしりと降り下ろされる刀を僕は軽々とかわす。「甘いね」「悪逆非道な猫又め！我が成敗してくれると言うに！」悔しがって地団駄を踏むそれは、僕の膝の高さにも満たない三頭身の侍だ。それは顔を真っ赤にして叫んだ。「我のおやつ返せ！ばかーっ！」 #twnovel #妖草紙

神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

@sousakuTL ｢お前…俺が怖くねぇのか？｣｢怖い？なんで？｣｢だって俺、人狼…なんだぞ…｣人狼の噂は聞いたことはある。けど目の前にいる人狼は…。｢全然、怖くねーよ。ってかスゲー綺麗だ｣｢…｣満月の夜。白銀の人狼と出会った日。　#twnovel #妖草紙

神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

人狼と一緒に住み始めて数ヶ月。夜空には大きな満月が浮かんでいた。｢綺麗だな｣｢あぁ｣人狼は嬉しそうに尻尾をふる。｢なぁ…｣｢ん？｣｢…また一緒に満月を見に行こうな｣俺はうなずき約束を交わした。人狼の満面な笑みに思わず目を細める。　#妖草紙 #twnovel

神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

乾いた唇は涙の味がした。｢…あいつが何をしたっていうんだ？｣俺とあいつは平穏に暮らしていただけなのに…。｢…！｣必死に俺の名前を叫ぶ声。俺は人狼を取り戻そうとして…、返り討ちにあった。…許さない。怒りが体中に駆け巡る。　｢必ず、助け出すからな…｣　#書き出し #妖草紙

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「誰でぇ、奉行所に狛犬なんざ運び込んだ奴ぁ」南町奉行の大塚左京がべらんめえな口調で問うと、同心の吉野日向が頭をかいた。「申し訳ありません。夜毎暴れるとかで近隣の住民に泣きつかれまして」「これがか」左京は日本刀をすらりと抜くとぴたりと狛犬に当てた。 #twnovel #妖草紙

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「一応、これでも免許皆伝の腕前だ。石でもばっさりいくぜ？さあ、正体を現しねぇ」殺気すらまとわせた左京の声に、狛犬がごとりと震えた。石の表面が次第に色づき、たてがみや尻尾が柔らかくうねり出す。そして目だけで左京を見上げた。「おっかねえ奉行さんだねえ」 #twnovel #妖草紙

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「ほ、ほんとにしゃべった！？」「日向、ガタガタ言うんじゃねぇよ」ニヤリと笑って左京が刃を収めると、狛犬はほっとしたように伸びをして行儀よく前足を揃えて座った。尻尾が左右に揺れている。「で、なんだって夜中に暴れているんでぇ」「別に暴れちゃおりやせんよ」 #twnovel #妖草紙

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「じゃあ、なんだって出歩いているのだ」若さゆえか驚きよりも好奇心が勝ったらしい日向の問いに、狛犬はため息をついた。「旦那方、考えてもみなせえ。一年中じっとしているのがどんなに退屈かわかりますかえ？たまには駆け回ってもバチは当たらねえと思うんですがね」 #twnovel #妖草紙

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「お主は神社にじっとしておるのが仕事であろうが」「いやあ、実は神の使いで出歩くこともあるんでさあ。しかしまあ、月夜に浮かれ出ちまったのはやりすぎでしたね。お陰で近所の大工に見つかっちまいやして。面目ない」「あのなあ」「日向、まあいいじゃねぇか」 #twnovel #妖草紙

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「大塚様？」「月に浮かれるなんざ風流だ。今回は大目にみてやれ」「話のわかる奉行さんだねえ」尻尾を振る狛犬に左京は刃のような笑みを浮かべた。「今度俺達の仕事を増やしやがったらわかってるだろうな？」途端にしょげた尻尾がおかしくて、日向が声をあげて笑った。 #twnovel #妖草紙

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落とした釣瓶を引き上げると、冷たい水を桶に移す。脇にはこの時期には珍しい笹百合の白い花が三本、そっと置かれている。懐紙を取り出して百合の花粉を外すと、花を桶に入れた。「少々見映えが」眉をひそめる主の脇で、山に咲き残っていた百合を取ってきた式神が笑う。 #twnovel #妖草紙

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「奥方は気にしないと思うぜ？」「まあな」桶を持ち上げて主も笑った。今、臥せっている奥方を元気付けるために好きな百合の花を一目見せたいと、主従でない知恵を絞ったのだ。水をこぼさないように注意して運ぶ主のために、式神が奥方の部屋のふすまを開ける。 #twnovel #妖草紙

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「気分はどうだ？」「まあ」奥方は驚いて目を見開くと体を起こした。「この時期に百合を見られるなんて」少し強い匂いに式神が小窓を開けると、吹き抜ける風が匂いを散らして優しく一同を包み込んだ。「ありがとうございます」頭を下げて、その後奥方はくすっと笑う。 #twnovel #妖草紙

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「ただの風邪で、ほんの数日寝込んだだけですのよ？明日には起きられますのに」「夏風邪を軽く見ちゃいかん」「そうだぜ。人は弱いんだから気を付けねえと！」反論する男性陣に奥方は優しく微笑んだ。それが風邪ではなく懐妊だとわかったのは、数日後のことである。 #twnovel #妖草紙

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浮かれ踊るは誰もが同じ　人も獣もあやかしも #natsumatsuri48 #都々逸 #妖草紙

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花が燃えている。朽ちるでなく、萎れもせず、炎の花弁が狂い咲いている。燃え盛る花を鬼の娘が摘んでいる。手折られた花は、たおやかな指で花冠に編まれ、娘はそれを持って里へ行く。人であった時の記憶の中のいる、愛しい男を探してそれを被せるために。 #書き出し #twnovel #妖草紙

神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

蝶のように着物を翻して君は舞う。その着物の柄はクロユリ…。呪い。怒りというより悲しみ…。｢ねぇ、君の恋人の最後の言葉、知りたくない？｣君はぴくっと反応する。ボクは構わず口に出す。｢"…約束、守れなくて…すまない…"｣｢…｣君は涙を流すと光りに包まれ消えた。　 #書き出し #妖草紙

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とがった耳と細く長い尻尾が生えた子供を拾った。正確には、うちの庭で寝ていたんだが。門は閉じているし、うちはひとけもあまりない町外れにあって子供が入り込んだらわかりそうなものだが、全く気づかなかった。耳と尻尾は黒くて手触りは猫のようだが、さて、何者だ？ #妖草紙 #twnovel

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しかし、放っておくわけにもいかないと脇に手を入れて抱き上げるとぱちりと目を開けた。おや、この子はオッドアイだ。金と銀の色違いの瞳が臆せず俺を見つめる。切れた光彩は縦長で、やはり猫のようだ。「どこから迷いこんだんだい？」俺の問いに子供は上を指差した。 #twnovel #妖草紙

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「空？」「うん」そう言うと、子供はぽわんと猫に戻った。黒い子猫は俺の手からすり抜けて落ちるかと思ったが、俺の目の高さに居続けている。「ああ、道理で」俺の声に子猫は自慢げに宙返り。子猫の背には一対の翼が生えていたのだ。翼猫。本物を見たのは初めてだった。 #twnovel #妖草紙

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「空から庭見たん。お花と木が呼んだん。ボク、ここに住む」そう言ってふわふわと飛び回っている。どうやら翼猫君はうちの庭がお気に召したらしい。追い出すほど野暮でもないつもりだ。「一緒に朝ごはんをどうだい？」「にゃ！」こうしてうちは少し賑やかになった。 #twnovel #妖草紙

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「ねえねえ」座敷童が袖を引く。「どうした？」「ハグってなに？」指差す方を見れば、テレビで８月９日はハグの日！なんて騒いでいる。「抱き締めること」「ああ！」嬉しそうに頷いて、座敷童は俺の首に飛び付くとぎゅーっと抱きついた。締まる！首、締まる！ #twnovel #妖草紙 #ハグの日

チーズトースト @_urt

さぁ、早く命令を。貴方が命ずれば私、鷹にでも豹にでもなれる。なのに、ただこうして貴方の影の中に潜んでいるだけとは、なんと退屈な事か！ #妖草紙 「じゃあ、ちょっと黒豹で。あぁ、うん。やっぱ良い毛並み」 なっ！ #ハグの日 なんて！ハグの日なんて！ @junju_usako #歌話

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「この人形は夜な夜な涙を流すのです」執事は重々しくそう説明した。人形は美しい金髪の少女で、まるで生きているかのよう。僕は引き寄せられるようにその頬に触れた。「人形は優しさを喰います。情けは身を滅ぼしますぞ」警告は遅かった。僕は彼女に恋をしてしまった。 #twnovel #妖草紙

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私は千年の眠りから今生に目覚めた｡目覚めたはいいが今生の文化がわからぬ。早速今の世を生きるあやかしを呼んで勉強する。「なに？昨今はおのこが腑抜けておるとな」「草食系男子にございます」なるほど。待つだけの姫ではらちがあかぬ故、目覚めたのか。 #書き出し #twnovel #妖草紙