ニコニコ生放送「図書館の今後を考える」(2012/7/23)の文字起こし その3 【武雄市図書館問題】

 このまとめは、2012年7月23日(月)の14時30分からニコニコ生放送で配信された「図書館の今後を考える」の、(01:08:24)から(01:46:45)頃までを文字起こししたものです。 http://live.nicovideo.jp/gate/lv100876286  中村伊知哉・慶應大学教授が、事案の検討に当たってはデメリットよりもメリットを重視すべきという持論を述べます。その後、デジタルアーカイブ研究所・研究会の諸氏もコメントを述べますが、ここでは、石川准・静岡県立大学教授(武雄市図書館デジタル化推進協議会副会長)のコメントのみ書き起こしました。 続きを読む
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【松原真】はい。コスト論の総論で、同じサービスでコストを下げられるのであれば大賛成という意見、あとは、図書館、今の根本先生のコストのお話だと、基本的に利用者が増えれば増えるだけコストは上がるんだから、コストを下げるために来場者、来館者を減らすというインセンティブも出ちゃうんじゃないかと、そのあたりで、大きな民間委託というときのコスト論の話、サービスを本当に維持できるのか、このあたり、いかがでしょう?

【松原聡】あのー、ちょっとここでね、先ほどの根本先生の図が出るかな。図書館貸出1人あたりの費用というのがありまして、総費用A市・B市みたいなのですね、本が300円くらいならいいけど1,000円かかってるよなんて話がありました。で、実はここのところは、今日の議論からすると、年間の総開館時間というので割らなければいけないかもしれないですね、こういうのはですね。要するに・・・9・・・・何日休みとおっしゃっていましたっけ?ええ。ですから、ただ単にこういうコストだけじゃなくて、実際に館が動いている年間の総時間でちょっと割ってみるみたいな作業も必要かもしれませんが、今の質問に関しましていかがでしょうか?あの、樋渡さん。同じサービスでコストが下がるなら賛成だなと、で、(利用者が)増えれば増えるだけコストが上がるんだからっていう・・・

【樋渡】ん?ああ、これ・・・これはもう間違いですね。あの、要は、サービスは今度上がるんですよ。だから365日開いて、朝9時から夜9時まで開くっていうことでね、同じサービスを・・・〔入力者注:ニコ生コメントを読み上げているが聞き取れず〕コストが下げられるっていう、だからそこが今まで官僚っていうかね、公務員が独占してきたからコスト高があるんであって、で、それを下げましょうと。だから具体的な数字をいうと、今まで1億4,500万だったのが1億1,000万でできますよって。じゃあ、本当にそれがオペレーションとしてできるかっていうことについては、それは毎回毎回議会のチェックは入るわ、メディアのチェックも入るから、そこはそれで担保してもらおうと思いますね。で図書館なんて利用者が増えれば増えるだけコストが上がるんだからっていう・・・あ、それで、ここをあわせて、あの、なんちゅうんですかね、CDとかDVDも入れます。あの物販・レンタルということで。ですので、図書館だけでやるっていうのは限界なんですね。ですが、今、考えてみると、本と同じに並ぶレガシーとして、価値をもつものとして、映画だって音楽だってあるじゃないですか。ですので、図書館の本にふさわしいCDとかDVDもきちんと置きましょうということと、あとカフェダイニングも入れますので、そこで収益性のある事業というのは自主事業でやってもらおうということになります。そこがまあ菊池先生のおっしゃったインセンティブになるのかなあと思いますけどね。

【根本】ちょっといいいですか?あの、2点目のところはですね、これは非常にいい指摘なんですね。実際問題、指定管理者の前に、PFIの図書館ができたんですけれども、そのインセンティブ条項が入っていなかったゆえにですね、何もしないのが一番いいというような、まあ敗者のノリみたいなものが出てきてしまったことは事実なんですね。で、インセンティブのつけ方っていうのは非常に重要なので、市長が今おっしゃったようなインセンティブのつけ方ももちろんあるし、あるいは、貸出件数とか貸出者にまあ成果目標、到達目標を置いて、で、それを到達しなければ指定管理料が下がるとか、あるいはクリアすれば上がるとかですね、そういうボーナス制度を入れるというやり方は、あの、やってるところもたぶんあると思いますし、一般的にはそういうやり方があるなあという風に思います。それで、あの、指定管理の場合はですね、これちょっと、市長のほうもこれからご注意されたほうがいいと思うんですけど、えー、「協定」、契約ではなく「協定」なので、どうしてもこう、おおざっぱに決めてしまうんですよね。で、あとから何か問題が起きたらその場で考えようというようなものが、指定管理者制度一般によく使われているんですけども、相手のTSUTAYAはですね、もう契約の世界の中で、えー、生きてきている世界なので、あとから後出しじゃんけんみたいに行政に言われることに対しては極めて抵抗があるし、そこで、えーと、両者の思惑が激突する可能性があるので、今このうちにですね、できるだけ早いうちに、将来どんなことが起きそうなのか、このインセンティブもまさにそうだと思いますけど、それは十分に調整をされて「協定」の中に具体的に盛り込んでいただいた方がいいだろうなと思います。

【樋渡】あのー、ただね、これ、今までここまで大規模にやったことがないんでね、かなり手探りな部分というのは否定しえないんでね。あの、そうは言っても、来年の4月の、CCCと図書館の開館まで時間があって、あの、9月を目処でね、その、事業計画書ならびに協定書というかたちになるんですけれども、なるべく想定しうるものはどんどんそこに入れ込みたいなあというのは思いますけどね。

石川准・静岡県立大学教授のコメント

(01:29:00)
【松原聡】はい。そこで普段の研究会のメンバーからもちょっとご意見を伺いたいと思っていまして、あの、石川准先生にはあとでまた、アクセシビリティのところでしっかりお話を伺いたいんですが、ここまでのところで何かご意見いかがでしょうか?

【石川准・静岡県立大学教授(以下石川)】はい。えーと、静岡県立大学の石川といいます。えーと、樋渡市長の構想されている図書館はたいへん、あのー魅力的で、市民の立場からするとインセンティブが高くなるなあという風に感じました。と同時にですね、私あのー、全国の点字図書館のボランティアグループで構成されていますNPO法人で、名前が長いんですけれども、全国視覚障害者情報提供施設協会という団体の理事長をしておりまして、二つちょっと経験がありまして。一つはですね、ここがですね、私が理事長になる前なんですけれども、PFI方式の刑務所の社会復帰促進事業の下請けを、最末端の下請けを17年契約で請けてしまって、あの、疲弊しているというのがあります。それから、全国の点字図書館、今、指定管理でやっているんですが、もともと社福(社会福祉法人)であったり、あるいはNPOであったり、そういう薄給で働くことを甘受して、それが当たり前だと思って働いていた人たちであるにも関わらず、さらに指定管理によって人件費が圧縮されて、まあ悲鳴を上げていると。だから、えーと、市にとっても、それから市民にとっても、コストダウンとか、それからサービス向上につながる場合もあるんだけれども、指定管理でやっている事業者って、TRCやTSUTAYAはそれはもうしっかりと算盤をはじいてやってらっしゃるんで抜かりはないと思いますけれども、非常にナイーブな社福とかボランティアグループって、これしかやってないってようなところも指定管理でやることになって、5年で、あるいは3年でもしかしたら契約を打ち切られるかもしれないってなったときに、じゃあ、もともとそういう薄給であり雇用条件が安定していない中で、なおかつ、もしかしたら指定管理が他へ持っていかれるかもしれないというような問題も抱えているので、あの、まあ何て言いますかね、えー、費用対効果が非常に悪いサービスを行っている状態から、今度は民間、民間の中でも弱い民間ですね、どちらかといえば競争セクターというよりは協力セクターの民間部門を、相当こう、何ていうか皺寄せが来ているのではないのかというようなことについて、ちょっと、あのコメントさせていただきたいと。

【松原聡】ここは根本先生、どうでしょうか?ちょっと厳しい問題かもしれませんが。要するに、NPO法人のような、人件費を非常に節約してきて(節約)しやすいところが指定管理者になっちゃって、ちょっとしんどい思いをしているような現状についてどう考えるかみたいなことですね。

【根本】はい。あの、指定管理者に限らず、民間委託もPFIも含めて同じだと思うんですけれども、公共サービスの世界に効率性を導入しようとして、効率性の原理で仕事をしていくと、どうしてもそれまで慣れていなかったところにそういう皺が寄るというのは、まあ、これは起こりうるべき、あの起こってもおかしくないことだろうと、まあ思いますね。それで、あの、一般的に言われているのは、一番多いのは、ワーキングプアの問題というのがあってですね。で、仕事はいっているんだけれどもものすごく安い、あるいはサービス残業を含めて安い労働を強いられるというのが指定管理者でも特に問題になっていて、で、一昨年、総務省の担当の部署が指針というのを出してまして、当然、労働基準法等の基準を遵守しなさいという、まあ当たり前のことなんですけどね、そういうことをちゃんと明示をして、問題を認識して、で、自治体によってはですね、条例を作ったところもあったかな?・・・えーと、確かあったと思いますけれども、そのようなことがないようにということできっちり法による制度によるガバナンスをかけているという方向で、まあ問題の所在は把握されて、解決をしようとしているところもあるということですね。ただし、じゃあ全て解決できるかというと、えー、これもなかなか難しいところがあって、で、やっぱり契約の主体としてはですね、当然、契約をしたんだからそのとおりやってくださいよ、ということにならざるをえないので、むしろ契約の世界に、ちょっとこれは反論がありそうな気がしますけれども、えーと、契約によってきっちりとお互いに約束をして、将来の算盤をはじいて約束をしてそれは守るよというルールなんだということに慣れていただくということがやっぱり必要で、それはあのー、どういう団体、あるいは中小企業なんかも含めてですけれども、そういうところがもう契約したけれどもできなければご免なさいということを認めるという方向には、ちょっと世の中行かないだろうなと思いますね。なので、私もNPOとかの団体に出向いていって、研修とかやるんですけれども、やっぱり契約というのは、指定管理者の協定もそうですけれども、約束なのでそれは守らないと誰かが困ってしまうので、で、結局それができないということになるとみんなで公立の方に戻っていくと。そうすると、税金を大量に投入しないといけないような大きな政府になってしまうので、そうじゃなくて、みんなの力でやっていこうというような世の中を目指すのであれば、それぞれがやっぱり責任を果たしていく、それには当然obligationもついていくということを了解しあわないと駄目ですよねというようなことを(・・・)〔入力者注:聞き取れず〕言っていて、たぶん方法としてはそっちなので、それによって生じるようなひずみの部分を個別に潰していくということかなあと。ちょっと長くなりましたけれども。

【松原聡】石川さん、どうですか?

【石川】(・・・)〔入力者注:聞き取れず〕。ナイーブなんですよ、でも善良なんですよ。

【松原聡】樋渡さん、どうでしょう。今の点について何かありますか?えー、あの、NPOとかの人件費が低いところが引き受けて歪みが出ないか、みたいな点について。

【樋渡】えーと、ちょっと今ね、ごめんなさい。今、僕のところにデータが無いんで正確じゃないんですけど、展示部分とか読み聞かせという部分がありますよね。本来、行政がちゃんとやるべき部分というのは、それは行政がちゃんとやろうと思っています。ですので、今回の場合は、CCCというのはあくまでも、そのー、広い意味でのオペレーションをお願いするんですけど、どうしてもコストに合わないってあるじゃないですか。で、しかも行政がやらなければいけない部分については教育委員会がちゃんとやるということで、今、整理をしていますので、うちはその問題は発生しないようにしたいなあと思っていますけど。


 石川准氏の後には、同じくデジタルアーカイブ研会員の池田敬二氏(武雄市図書館デジタル化推進協議会委員、電子出版制作・流通協議会事務局)、丸山信人氏(電子出版制作・流通協議会)のコメントが続きます。

盃次 @haiji_m

文字起こしがうまく出来なかったため、当初はその旨を示したうえで両氏の発言を省略していたのですが、内容的にカットするには惜しいとの指摘を頂きましたので、要約を掲載することにします。なお、文字起こしではありませんので、原発言の表現とは異なる場合があることにご留意ください。

2012-08-05 22:12:17
盃次 @haiji_m

【池田敬二】セルフPOSの導入によって、司書に本来の業務に取り組んでもらおうという樋渡市長の構想は興味深い。たとえばアメリカでは、司書が失業者に履歴書の書き方を指導するなど、司書の役割自体が変化してきているように思う。市長は司書の仕事にどのようなイメージを持っているのか?

2012-08-05 22:13:43
盃次 @haiji_m

【樋渡啓祐(以下樋渡) 】二十数年前、ニューヨーク公共図書館で出会った司書は非常に親切で優秀だった。東大の司書も論文の書き方を教えてくれた。自分は総務省時代にいろいろな図書館を見る機会があったが、司書が単なる貸出係になっているところが多かった。自分は司書を貸出業務から解放したい。

2012-08-05 22:14:55
盃次 @haiji_m

【丸山信人(以下丸山)】新刊について、レンタルから購入モデルへ切替えるという構想については基本的に賛成。しかし、税金で運営されている以上、図書館は社会的弱者への配慮も必要。新刊についても貸出サービスは継続しつつ、希望者は購入へと誘導するような形態を考えたほうがよいのではないか?

2012-08-05 22:15:52
盃次 @haiji_m

【樋渡】図書館に何でもかんでも求めると全てが中途半端になってしまう。できるだけ多くの人に図書館に来てもらって本に親しんでもらうのが順序として先だと思う。(丸山氏の提言については)図書館の近くにシェアハウスを作ってナレッジスペースの機能を持たせることも考えている。

2012-08-05 22:16:43
盃次 @haiji_m

【丸山】書店が減少するなかで、図書館を本に親しむ場、本との出会いの場にしたいという市長の構想には大賛成。ナレッジスペースについても前向きに考えてほしい。

2012-08-05 22:17:10

(01:43:50)
【松原聡】あのー、僕が今回、樋渡さんを呼んで議論しようと思ったのは、TSUTAYAに投げて炎上したことの面白さももちろんあるんですが〔笑〕、それ以前に、先ほどから自虐的に「御用学者」と言ってきましたけど、お仕事を一緒にしてきたのは、例えば、図書館のデジタル化を一生懸命に進めようとしていて、私もそこを協力してきたんですが、そのときのたとえば発想が、あのー、武雄市が町村合併で広域化したんですね。そのことで、全市にバランスよく分館を配置するとなるとものすごいお金がかかっちゃうと。じゃあ図書自体をデジタル化して配信できるようにしたら、よっぽどその方が図書館の開館時間も何もなくなりますのでいいんじゃないかという発想をもたれていた。それから選書ですね。本を選ぶときに、こんなの僕は当たり前だと思っていたんですけど、ほとんど全国で初めてなんですか?市民に本を選んでもらうと。市民から選書委員を公募して、僕なんかは東京ですけれども、有識者みたいな枠で選書委員になっているとか。そういう図書館自体を変えていきたいという流れの中での、えー、民間委託だったと思うので、ちょっとそのあたりの全体的なことについてお話があれば一言どうでしょう?

【樋渡】あのー、ちょっとこれ、いろんな多岐にわたる話でね、なかなか難しいんですが、あのー、やっぱり、すぐ(に)、僕ね、こういう言動なんでね、TSUTAYAに飛びついたと思われているんですけど、6年ずーっと図書館の改革というものを地道にやっていたんですね。だから松原先生にお願いをして、あと伊知哉先生にもお願いをして、どういう風にして、広く市民に本を親しんでもらおうかという話と別のルートで、じゃあ今度は図書館そのものを見直そうよという風にしたんで、まあ僕の中では割と、まあ途中で炎上プレイもありましたけれども、割と一貫しているんですよね。だけどまあ、見せ方がこうなんでね、まあちょっと、なかなか難しいところがあるんですけど、ただまあ、あのやっぱりね、4月1日付で、来年のね、CCCと図書館の新しい形態になりますので、ぜひその時にね、批判をしている人(は)見に来てほしいんですよ。で、見に来てもらって、そこでもう、どんどんまた改良していけばいいんじゃないかなあと。だから、あんまりこの部分でね、いや、今も(ニコ生の画面にコメントが)出ていますけど、事業計画(書)を出せとか、いろいろ言われているんですけど、それは基本的にナンセンスで、えー、さっきも言ったように、9月以降ちゃんと詰めていく話をね、今出せとかいうのは、全然もう、ああ、日本の悪いところがまた出たなあ、というのは思いますね、はい。