ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/09

蒲公英 @haruka_tanpopo

デビュタントの白いドレスは、みんなお揃い。カラスウリのお嬢さんたちは真っ暗な林の中、月のライトを浴びながら、恋の夢を見る。もしも夢が叶うのならば、秋には紅いランタンになって、林を歩く人たちを照らすことができるんですって。風だけが聞く、ひそやかなおしゃべり。#twnovel

青村豆十郎　（青豆）　狂歌講師 @aomura10106

もしもし私、少年教育調査センターの者です。お宅のお子さんがイジメに関わっているようです。今ならば私どもが事が大きくなる前に処理いたします。はい、では口座に三千万振り込んでください。すべて無かったことに出来ますからね。勿論、お子さん、担任に確認などなさらないで。 #twnovel

falsewhere @nowherenotime

#twnovel 昨世紀の終わり頃だったか、偶然迷い込んで来た猫のあとをついて行ったのが始まりだった。見え隠れする猫の尻尾だけを指標にしてぼくは歩いた。世紀の断崖や時代の継ぎ目や年月の亀裂などたくさん見た。もう戻ることもできないし、おい、猫くん、連れて行ってくれよ、世界の果てへ。

かなりひこくま @kanarihikokuma

絵の中に置かれた絵の中で　白い人と黒い人が向き合い　隙間なく接しあっている　白い人と黒い人は嵌めこまれたタイルのようなもので　永遠のすれ違いが空間を埋めつくしている　その絵から徐々に　白い人と黒い人が抜け出し　丸い窪みを回り　立体の世界で握手する　という絵をみた #twnovel

池田洋介 @ikeikey

5歳の甥は私の顔を見るたびに走ってきて「えぃ、えぃ」とおっぱいを触ってくる。無垢な子供の悪戯と私も微笑ましく受け入れていた。先日遊園地で美人の受付嬢を見つけた甥が嬉々としながら彼女の方に走りだした。止める間もなく甥は彼女のおっぱいを思いきり触って言った。「しぃ」#twnovel

岩城裕明 @hiroaki_iwaki

「驚かないで聞いてくれ。私は十年後の未来から来た君なんだ」と言いながら、でも十年前に私は未来から来たと言う男に会っただろうか、と思う。というか会っていない。つまり。「さては、君は十年前の私ではないな」私がそう叫ぶと、白衣の彼は薬をくれた。#twnovel

七歩 @naholograph

娘が困った顔をして眠っているものだから、夢にお邪魔することにした。笑顔の旦那と私と娘、3人で絵を描いたり散歩をしたり。素敵な一家団欒風景の中、娘だけが困り顔。「パパとママはねこんなにこにこしてないよ。どこやったのかえしてよっ」私は娘に駆けより抱きしめた。ごめんね。#twnovel

miecha @miechorz

#twnovel 『はじめまして』『メールありがと』携帯に変なメールが毎日届く。相手は知らない、迷惑メールだろう。『じゃ明日の十時に駅で』八通目、具体的な話が出たので軽い気持ちで駅に行ったら、美女が近づくじゃないか。驚いた僕の胸元から携帯が脱走して、美女とどっかに行ってしまった。

すわぞ @suwazo

#twnovel 私は吟遊詩人なのだが、なぜか左官職人に雇われた。職人は壁を塗りながら、仏頂面で私の歌を聞く。一体何が楽しいのか。夕刻、乾いた壁に耳をあててみろと言われてそうした。微かに私の歌が聞こえた。歌が染み込んでいるのだ。明日も頼む、と職人が言う。その耳たぶがほんのり赤い。

layback @laybacks

読みかけの文庫本を開くと紙魚が泳いでいた。気持ちよさそうにすいすいと行間をすり抜けてはルビを食べてゆく。べつにルビなど無くとも困ることはない。そのまま放っておいた。紙魚はくるりと反転してこちらを向く。口からぷくぷくと泡ならぬルビを吐き出した。コノホンツマラナイ。 #twnovel

birdboiled @birdboiled

#twnovel 「また会ったな」「貴様は！…ええと、誰だっけ」「わたしは怪盗デジャヴュ」「あっ、会ったことがある気がしてきた」「ふふふ、この宝石は頂くぞ」「なに！これも昔あったことのような…いつだっけ、うわー気になる」「警部しっかりしてください、宝石が盗まれているのは今です！」

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 電車の中、口を開けて寝ていたら、魂を掏られかけたらしい。「貴方のでしょ？」親切な人が取り返してくれたけど、その魂が染みだらけの傷だらけで赤面した。でも、「この染みが良い景色なんですよ。歳月が良い仕事をしている」親切な人が鑑定士の様に褒めてくれた。「大切にな」

なゆた @nayuta1072

#twnovel むかしむかし、まだおうじさまがこどもだったころ、おひめさまがうぶごえをあげたころ、まほうつかいもまじょもしゅぎょうをしてたころ、ようせいたちがうまれるまえ、すべてのものがたりがはじまるずっとずっとむかし、あいさえもなかったころのおはなしを、ねぇ、ママ、おしえて。